21 / 43
帝都までの道中〜5〜。
しおりを挟む
リョータ達はライラック=ベルツ=マルティナット=リーマス侯爵の屋敷の前にやって来た。
門番兵にライラック卿宛てにコーネリア辺境伯の第二夫人レミリア様からの手紙を預かっていると伝えると、門番兵の一人が屋敷に走っていき、リョータ達は門前で待たされた。
すると執事らしいのがやって来て、屋敷の中に通してくれた。
「旦那様。お客様をお連れ致しました」
「入ってくれ」
応接室に入ると、ライラック卿がソファーに腰かけていた。
「やあ、君達が手紙を持って来てくれたんだね。有り難う」
「こちらが手紙です」
ライラック卿は手紙を受け取ると、裏に返して封蝋の家紋がコーネリア辺境伯家の物である事を確認してから、ペーパーナイフで封蝋を切った。
手紙を読みながらチラチラとリョータ達の事を見ている。
多分、リル達の正体が何であるのかが書いてあるのだろう。
「成る程ね。良く分かったよ。それで、今のところ困っている事はあるかな?」
「困っている事ですか。そうですねぇ…ありますねぇ」
「どんな事かな?」
ライラック卿の顔が少し引き攣った。
「ヒュドラの討伐依頼が出されている事をご存知ですか?」
「ヒュドラの?いや、初耳だな」
「そうですか。では、その討伐依頼の報酬が大金貨五枚なのは?」
ライラック卿は遠慮気味に笑った。
「ヒュドラの討伐報酬が大金貨五枚?誰だね、そんな馬鹿な依頼をしたのは?」
そんな馬鹿な事があるものかと笑っている。
ヒュドラの討伐と言えば領軍を総動員してもかなりの被害が出るような事案なので、それの討伐報酬か大金貨五枚なんて有り得ないのだ。最低でも白金貨一枚は出さないとどれだけ実力のある冒険者パーティーでも引き受けてくれないだろう。だから、有り得ないと笑ったのだ。
だが、その依頼者がまさか、
「次男のビルディーゴ様です」
と言われたので、体が固まった。
「ビ、ビルディーゴ…が…?本当に…?」
「はい」
「あ、あ、あの大馬鹿者めがっ!!」
リョータは激怒するライラック卿に追い討ちをかける。
「その討伐対象がヒュドラだったらまだ良かったんですけどねぇ」
「ん?ヒュドラじゃなかったのかい?」
「はい。ヒュドラの上位種のヒュドラードの変異種であるナインヘッド・ヒュドラードだったんですよ」
ナインヘッド・ヒュドラード。
それは最早、天災とも言うべき魔獣であり、領軍どころか国軍や近衛騎士団、宮廷魔法師団を総動員しなければならない事案である。
ライラック卿の顔からは血の気が失せて、紙のように真っ白になっていた。
「どうしますか?」
「き、君達なら…君達なら何とかできるのではないのか?報酬は言い値で構わないから討伐に向かってくれないだろうか。
頼む、頼みます!」
テーブルに両手をついて頭を下げて懇願するライラック卿を見て、怒りに燃えていた心が少しは落ち着きをみせた。
「既に討伐済みですので、頭を上げて下さい」
「な、何と!既に…そうか、そうだったのか…では、報酬の支払いを「お待ちを」なんだい?」
「報酬はライラック卿ではなく、次男のビルディーゴ様から頂戴致しますので」
「ビルディーゴに?いや、しかし、あいつに支払い能力など…まさか、他にも何かあるのかい?」
察しが良いと言うべきだろう。
「確かにナインヘッド・ヒュドラードを討伐したとは申しましたが、それが一体だけとは申しておりません」
「と言うと…複数いたと?」
「はい。親子揃った三体でした」
「–––ッ––ァ–ァ"––ァ––!!??」
もう言葉にならないくらいに怒ったのだろう。額に太い青筋を浮かべてブルブルと体を震わせている。
何かを察したのだろう。執事がそっと部屋から出ていき、数分後には小太りの少年の首根っこを掴んで引き摺って戻ってきた。
多分、その少年がビルディーゴなのだろう。
「ベルム!僕は父上の子だぞ!幾らなんでも無礼だろう!筆頭執事とは言え不敬が過ぎる!不敬罪で斬、ぶごぉっ!!」
最後まで言わせずに、ライラック卿がビルディーゴの前歯が何本か折れるくらい思いっきり殴り飛ばした。
「こんの大馬鹿者がぁっ!!貴様は自分が何をしたのか分かっているのか!!」
「ぢ、ぢぢゔえ?」
「ヒュドラ」
「ッッッ!!??」
ヒュドラと聞いてビルディーゴの体がビクッと震えた。
「ヒュドラ。ヒュドラード。ナインヘッド・ヒュドラード…貴様はギルドに嘘の依頼をだしたな」
「な、何の事を「黙れ!」ヒィッ!」
「貴様がナインヘッド・ヒュドラードをただのヒュドラと偽って討伐依頼を出した事は分かっている!それもたったの大金貨五枚などと言う有り得ないくらいに馬鹿げた報酬でな!!そんな端た金で誰が依頼を受けると思っているんだ!!それもナインヘッド・ヒュドラードなど、国が総力を挙げても討伐できるかどうかという魔獣なのだぞ!?そればかりか、それを私にも報告しないでいたとは…貴様は我が領地ばかりか帝国をも滅ぼしかけたのだぞ!分かっているのか!?」
ビルディーゴは恐怖で震えていた。
領地と帝国を滅ぼしかけたと言われて初めて自分が何をしたのかが分かったのだろう。
震える体でその場で土下座した。
何も言えない。
ただただその場に平伏すしかできなかった。
門番兵にライラック卿宛てにコーネリア辺境伯の第二夫人レミリア様からの手紙を預かっていると伝えると、門番兵の一人が屋敷に走っていき、リョータ達は門前で待たされた。
すると執事らしいのがやって来て、屋敷の中に通してくれた。
「旦那様。お客様をお連れ致しました」
「入ってくれ」
応接室に入ると、ライラック卿がソファーに腰かけていた。
「やあ、君達が手紙を持って来てくれたんだね。有り難う」
「こちらが手紙です」
ライラック卿は手紙を受け取ると、裏に返して封蝋の家紋がコーネリア辺境伯家の物である事を確認してから、ペーパーナイフで封蝋を切った。
手紙を読みながらチラチラとリョータ達の事を見ている。
多分、リル達の正体が何であるのかが書いてあるのだろう。
「成る程ね。良く分かったよ。それで、今のところ困っている事はあるかな?」
「困っている事ですか。そうですねぇ…ありますねぇ」
「どんな事かな?」
ライラック卿の顔が少し引き攣った。
「ヒュドラの討伐依頼が出されている事をご存知ですか?」
「ヒュドラの?いや、初耳だな」
「そうですか。では、その討伐依頼の報酬が大金貨五枚なのは?」
ライラック卿は遠慮気味に笑った。
「ヒュドラの討伐報酬が大金貨五枚?誰だね、そんな馬鹿な依頼をしたのは?」
そんな馬鹿な事があるものかと笑っている。
ヒュドラの討伐と言えば領軍を総動員してもかなりの被害が出るような事案なので、それの討伐報酬か大金貨五枚なんて有り得ないのだ。最低でも白金貨一枚は出さないとどれだけ実力のある冒険者パーティーでも引き受けてくれないだろう。だから、有り得ないと笑ったのだ。
だが、その依頼者がまさか、
「次男のビルディーゴ様です」
と言われたので、体が固まった。
「ビ、ビルディーゴ…が…?本当に…?」
「はい」
「あ、あ、あの大馬鹿者めがっ!!」
リョータは激怒するライラック卿に追い討ちをかける。
「その討伐対象がヒュドラだったらまだ良かったんですけどねぇ」
「ん?ヒュドラじゃなかったのかい?」
「はい。ヒュドラの上位種のヒュドラードの変異種であるナインヘッド・ヒュドラードだったんですよ」
ナインヘッド・ヒュドラード。
それは最早、天災とも言うべき魔獣であり、領軍どころか国軍や近衛騎士団、宮廷魔法師団を総動員しなければならない事案である。
ライラック卿の顔からは血の気が失せて、紙のように真っ白になっていた。
「どうしますか?」
「き、君達なら…君達なら何とかできるのではないのか?報酬は言い値で構わないから討伐に向かってくれないだろうか。
頼む、頼みます!」
テーブルに両手をついて頭を下げて懇願するライラック卿を見て、怒りに燃えていた心が少しは落ち着きをみせた。
「既に討伐済みですので、頭を上げて下さい」
「な、何と!既に…そうか、そうだったのか…では、報酬の支払いを「お待ちを」なんだい?」
「報酬はライラック卿ではなく、次男のビルディーゴ様から頂戴致しますので」
「ビルディーゴに?いや、しかし、あいつに支払い能力など…まさか、他にも何かあるのかい?」
察しが良いと言うべきだろう。
「確かにナインヘッド・ヒュドラードを討伐したとは申しましたが、それが一体だけとは申しておりません」
「と言うと…複数いたと?」
「はい。親子揃った三体でした」
「–––ッ––ァ–ァ"––ァ––!!??」
もう言葉にならないくらいに怒ったのだろう。額に太い青筋を浮かべてブルブルと体を震わせている。
何かを察したのだろう。執事がそっと部屋から出ていき、数分後には小太りの少年の首根っこを掴んで引き摺って戻ってきた。
多分、その少年がビルディーゴなのだろう。
「ベルム!僕は父上の子だぞ!幾らなんでも無礼だろう!筆頭執事とは言え不敬が過ぎる!不敬罪で斬、ぶごぉっ!!」
最後まで言わせずに、ライラック卿がビルディーゴの前歯が何本か折れるくらい思いっきり殴り飛ばした。
「こんの大馬鹿者がぁっ!!貴様は自分が何をしたのか分かっているのか!!」
「ぢ、ぢぢゔえ?」
「ヒュドラ」
「ッッッ!!??」
ヒュドラと聞いてビルディーゴの体がビクッと震えた。
「ヒュドラ。ヒュドラード。ナインヘッド・ヒュドラード…貴様はギルドに嘘の依頼をだしたな」
「な、何の事を「黙れ!」ヒィッ!」
「貴様がナインヘッド・ヒュドラードをただのヒュドラと偽って討伐依頼を出した事は分かっている!それもたったの大金貨五枚などと言う有り得ないくらいに馬鹿げた報酬でな!!そんな端た金で誰が依頼を受けると思っているんだ!!それもナインヘッド・ヒュドラードなど、国が総力を挙げても討伐できるかどうかという魔獣なのだぞ!?そればかりか、それを私にも報告しないでいたとは…貴様は我が領地ばかりか帝国をも滅ぼしかけたのだぞ!分かっているのか!?」
ビルディーゴは恐怖で震えていた。
領地と帝国を滅ぼしかけたと言われて初めて自分が何をしたのかが分かったのだろう。
震える体でその場で土下座した。
何も言えない。
ただただその場に平伏すしかできなかった。
72
あなたにおすすめの小説
七億円当たったので異世界買ってみた!
コンビニ
ファンタジー
三十四歳、独身、家電量販店勤務の平凡な俺。
ある日、スポーツくじで7億円を当てた──と思ったら、突如現れた“自称・神様”に言われた。
「異世界を買ってみないか?」
そんなわけで購入した異世界は、荒れ果てて疫病まみれ、赤字経営まっしぐら。
でも天使の助けを借りて、街づくり・人材スカウト・ダンジョン建設に挑む日々が始まった。
一方、現実世界でもスローライフと東北の田舎に引っ越してみたが、近所の小学生に絡まれたり、ドタバタに巻き込まれていく。
異世界と現実を往復しながら、癒やされて、ときどき婚活。
チートはないけど、地に足つけたスローライフ(たまに労働)を始めます。
幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕だけ別な場所に飛ばされた先は異世界の不思議な無人島だった。
アノマロカリス
ファンタジー
よくある話の異世界召喚…
スマホのネット小説や漫画が好きな少年、洲河 愽(すが だん)。
いつもの様に幼馴染達と学校帰りの公園でくっちゃべっていると地面に突然魔法陣が現れて…
気付くと愽は1人だけ見渡す限り草原の中に突っ立っていた。
愽は幼馴染達を探す為に周囲を捜索してみたが、一緒に飛ばされていた筈の幼馴染達は居なかった。
生きていればいつかは幼馴染達とまた会える!
愽は希望を持って、この不思議な無人島でサバイバル生活を始めるのだった。
「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕の授かったスキルは役に立つものなのかな?」
「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は幼馴染達よりも強いジョブを手に入れて無双する!」
「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は魔王から力を授かり人類に対して牙を剥く‼︎」
幼馴染達と一緒に異世界召喚の第四弾。
愽は幼馴染達と離れた場所でサバイバル生活を送るというパラレルストーリー。
はたして愽は、無事に幼馴染達と再会を果たせるのだろうか?
ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした
夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。
しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。
彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。
一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!
魔法物語 - 倒したモンスターの魔法を習得する加護がチートすぎる件について -
花京院 光
ファンタジー
全ての生命が生まれながらにして持つ魔力。
魔力によって作られる魔法は、日常生活を潤し、モンスターの魔の手から地域を守る。
十五歳の誕生日を迎え、魔術師になる夢を叶えるために、俺は魔法都市を目指して旅に出た。
俺は旅の途中で、「討伐したモンスターの魔法を習得する」という反則的な加護を手に入れた……。
モンスターが巣食う剣と魔法の世界で、チート級の能力に慢心しない主人公が、努力を重ねて魔術師を目指す物語です。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。
みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。
勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。
辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。
だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!
学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
Sランクパーティーを追放された鑑定士の俺、実は『神の眼』を持ってました〜最神神獣と最強になったので、今さら戻ってこいと言われてももう遅い〜
夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティーで地味な【鑑定】スキルを使い、仲間を支えてきたカイン。しかしある日、リーダーの勇者から「お前はもういらない」と理不尽に追放されてしまう。
絶望の淵で流れ着いた辺境の街。そこで偶然発見した古代ダンジョンが、彼の運命を変える。絶体絶命の危機に陥ったその時、彼のスキルは万物を見通す【神の眼】へと覚醒。さらに、ダンジョンの奥で伝説のもふもふ神獣「フェン」と出会い、最強の相棒を得る。
一方、カインを失った元パーティーは鑑定ミスを連発し、崩壊の一途を辿っていた。「今さら戻ってこい」と懇願されても、もう遅い。
無能と蔑まれた鑑定士の、痛快な成り上がり冒険譚が今、始まる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる