レンガの家

秋臣

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葦原家

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GWには陽南の家にも挨拶に伺った。
なぜか深影さんもいた。

「初めまして、陽南さんとお付き合いさせていただいております、今永壮祐と申します」
めっちゃ緊張する。
お母さんはにこやかに穏やかに、
「陽南と付き合ってくれてるの?
この子甘えん坊だから迷惑かけてない?」
と心配してる。
「いえ、そこもかわいいです」
と言ったら、
「出たよ、惚気」
と深影さんから茶々を入れられる。

お父さんはずっと眉間に皺が寄っている。
気に入らないといった憮然とした顔だ。
嫌われてるのかな…
その様子に深影さんが気づき、
「親父、何が気に入らないんだよ、
壮祐くん、いい男だぞ」
と助け舟を出してくれる。

「話には聞いていたけど、いざ目の前にいて陽南の彼氏ですって言われるとショックと言うか…なんと言うか…
とにかくな、父さんはまだ結婚は早いと思うぞ!」

え?

「お父さん、待って!結婚なんて言ってないよ。付き合ってるからそれを認めてって言ってるだけだよ」
「何言ってんだ、親父。二人とも大学生になったばかりだぞ、今結婚は無理だろ」
「そうよ、せめて卒業してからよね?」

話が大幅にずれていく…

「そうなの?父さん、寂しいなあって…」
「私まだ家にいるよ、寂しくないよ、お父さん」
陽南はフォローが上手い。
というか甘え上手なんだな。

「俺は今、仙台にいます。
GWや夏休み、年末年始に一時的に戻っても卒業するまでこっちには戻れません。寂しい思いをさせると思います。
でも陽南さんが頑張れと言ってくれるので、向こうでちゃんと頑張ります。
頑張るために陽南さんが必要です。
陽南さんとのお付き合いを認めていただけないでしょうか」
俺は頭を下げる。

「仙台は遠いわね、陽南、寂しいでしょ?たまには遊びに行ってきたら?」
「いいの?」
「だって会いたいでしょ?」
「うん」
「今永くん、陽南をよろしくお願いします」
お母さんが深々と頭を下げる。
「こちらこそ、よろしくお願いします」

「ほら、あとは親父だけだぞ」
もごもご
「あ?なに?」
もごもごもごもご
「何だよ、はっきり言えよ」
深影さんが痺れを切らす。

「この前まで赤ちゃんだったのに…
この前まで保育園行ってたのに…
この前までランドセル背負ってたのに…
この前まで制服着てたのに…
もうどこかに行っちゃうの?」

「だから結婚じゃないってば」
陽南がお父さんを宥める。
「でもいつかは結婚しちゃうでしょ?
この家から出て行っちゃうでしょ?
寂しい…」
陽南はやれやれという顔をしつつ、
「いつかは私も結婚はしたいけど今ではないよ。やりたい仕事もあるし。
でもそのいつか結婚したい相手は壮祐くんがいいの」

陽南…

グッときてしまった。
今すぐと言えない自分がもどかしいけど、俺もいつか…いつか必ず陽南と…

「もうタイムリミットが近いってことじゃないか…」
お父さんはまだしょげている。

「要するにかわいい陽南を嫁にやりたくないってことだな」
「深影!お前なら分かってくれるよな?」
お父さん,必死だ。
「まあ、気持ちはわからなくもないよ」
「だろう!?」
妙に息が合うお父さんと深影さん。

「だってよ、壮祐くん」
「俺はどうすれば…」
「んー、親父は陽南を手放したくないみたいだし、壮祐くん、俺と結婚するか」
「は?」
「ちょっと、お兄ちゃん!」
「深影、何を言い出すのよ」

「だってこれならみんなwin winでしょ?
俺は壮祐くんと結婚できるし、陽南は義理の妹として壮祐くんのそばにはいられるわけだし、親父は陽南を取られないし、いいことしかないでしょ?」
「全然良くない!」
陽南激怒。

「おい、深影、お前,今永くんのこと好きなのか?」
「うん、大好き」

まだ呪いは解けてなかった。

「ダメだ…ダメだ!」
お父さんが吠えた。
「なんだよ」
「深影と結婚したら今永くんがかわいそうだ」
「酷い言われようだな」
「いや,仕事に対する姿勢とか考え方とか器用なところとかそういうのは、自分の息子ながら大したもんだと思ってるよ。
だがな、こと恋愛となるとお前,からっきしダメだろ?下手くそだろ?不器用というか。
なんで普段の器用さを出せないんだろうな。
今永くんも陽南が良いようだし、彼は陽南に譲れ」
お父さんは深影さんを褒めてるのか貶しているのか、よくわからないが認めてはいるようだ。

「親父が反対してるんじゃん」
「だってこの前まで赤ちゃんで…」
「それはもう聞きました」
お母さんが止める。
「陽南も深影も今永くんが好きなんだろ?二人に好かれてるなら絶対悪い男のわけない。それはわかるんだよ」
「そうだよ、壮祐くんはいい男だよ」
深影さんがフォローしてくれる。

「今永くん」
「はい」
「頼む、結婚はもう少しだけ先にしてもらえないかな」
「はいw」
笑ってしまう。
陽南もお母さんも顔を見合わせて笑ってる。
「陽南共々よろしくお願いします」
徐にお父さんが頭を下げるので、
「こちらこそよろしくお願いします」
と頭下げ合戦になった。

わかってる。
深影さんがなぜこの場に居合わせていたのかも、なぜ俺と結婚しようなんて言ったのかも、全部わかってる。
お父さんの性格を理解しきっているから、敢えて煽るようなことを言って仕掛けた。
半分本気だったような気もしなくもないけど、本当に頭の良い気遣いの人だなと感心する。
そして感謝しかない。
ありがとう、深影さん。

その深影さんは俺が心配しないようにと輝哉さんと相談して、陽南をBothでバイトさせてくれていた。
「俺たちがいれば安心するだろ?」
なんて有り難いことだ。
頭が上がらない。
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