レンガの家

秋臣

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サプライズ

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「お兄ちゃんごめんね、遅くなっちゃった」
「いや,大丈夫だよ。なあ陽南、これわかる?」
深影がスマホの画面を陽南に見せる。
「ん?なにこれ?」
「飛行機のおもちゃ。木でできた飛行機らしい、知ってる?」
「多分、空港のおもちゃの店にあったと思うんだけどなあ」
「蓮くんが欲しがってるんだって」
「そうなの?」
「普通の模型はよくあるけど、木製のが欲しいらしい。俺、探しに行ってきてもいい?」
「私も行くよ」
「いいよ、車で休んでろよ」
「蓮くんに買うなら凛ちゃんにも何か買わないと喧嘩になるよ」
「喧嘩にはならないと思うけど、凛ちゃんにも買ってあげたいよな」
「じゃあ私が凛ちゃんの分を選ぶよ」
「そう?助かる」

「お店の予約は大丈夫?」
「ランチ終わってるからディナーでしか取れなかったんだよ、18時」
「まだまだ時間あるね。
なんのお店にしたの?」
「フレンチにしちゃったけどいいよな?」
「うん、前に連れて行ってくれたお店?赤坂だっけ?」
「違う、東京駅の近く」
「また開拓したの?」
「最近は教えてもらうことが多いかな、なかなか自分で開拓してる時間がなくて。でも今日行く店はよく行く店だよ」
「そっか、楽しみ」
「夕方の渋滞とか駐車場探しとか考慮してこっちを少し早めの16時くらいに出れば間に合うかな」
「早くない?」
「桜が開花したから花見客とかいるし、結構混むぞ、駐車場も満車でなかなか見つからないしな」
「そっか、桜咲いてるんだよね」
「じゃああと二時間あるから、凛ちゃんと蓮くんのプレゼント探すか」
「うん」

「ねえねえ、あとで運転していい?」
「いいけど大丈夫か?」
「任せて!ちゃんと車に積んであるし」
「え?なにを?」
「私のスニーカー入れてある」
「お前、なに勝手に入れてんだよ、俺の車だぞw」


「着いたーっ!」
「運転上手くなったな」
「でしょ?ちゃんと運転してるもん」
「俺、駐車場に車入れてくるから、ちょっとここで待ってろ」
「うん」
陽南を東京駅の前で降ろして、運転を交代し近くの駐車場を探す。



夕方の東京駅、桜も咲いてライトアップされてるから人が多い。
駅もいつものようにライトアップされてる。
壮祐くんの好きな駅、一緒に見ながら壮祐くんがレンガが好きな理由を話してくれた。
三びきのこぶたがきっかけと聞いた時、
小さい壮祐くんを想像してかわいくて笑っちゃった。
同時に心臓がヒュッとなった。
お兄ちゃんと同じだったから…
お兄ちゃんがどうしてあんなにも壮祐くんに惹かれるのかわかった気がした。
同じなんだ。

私、ダメかもしれないって思った。
敵わないって思った。
そんな小さい頃に感じた、今でも大事にしていることを同じくらい大事にしている人がいたら…
怖くなった。
壮祐くんがお兄ちゃんのところに行っちゃうって怖くなった。

壮祐くんが仙台に行く前、遠くに行ってしまう壮祐くんに動揺したお兄ちゃんと壮祐くんが二人で話をした。

怖くて怖くてたまらなかった。
はんちゃんと公佳さんは大丈夫と言ってくれたし、私も大丈夫だと思ってはいたけど…怖くて仕方なかった。

壮祐くんは私を家まで送ってくれた時に、お兄ちゃんとなにを話したのか全部話してくれた。
「なにも変わらない、陽南が大好き、それだけだよ」
そう言ってくれて安心したのと嬉しかったのと、なによりも離れたくなくて泣いてしまった。

「深影さんのことは嫌いになれない。
こんなに同じと思う人は初めてだったんだ。
その同じでいてくれる人が陽南のお兄さんで嬉しい、すごく嬉しい。
深影さんを嫌いになる理由がもうないんだ。陽南のお兄さんとして、レンガ仲間として大切にしたい、ダメかな?」

お兄ちゃんに対して、こんなことを言ってくれた人は初めてだった。
今まではお兄ちゃんのことを好きになって私から離れてしまう人たちに悲しくて、悔しくてお兄ちゃんまで嫌いになりそうだった。
でも、お兄ちゃんが悪いんじゃないのもちゃんとわかってた。
それくらいのことで靡いてしまう彼らがダメなんだ。

壮祐くんは違う。
全部曝け出してなにも隠さない。
全部空っぽにしてそこに私だけを入れて包んでくれる。
いつも壮祐くんのその大きさとか温かさに包まれて、その心地よさにふわふわしてしまう。
壮祐くんが好き。
その気持ちが全然変わらない。
離れても大丈夫って思える。
時々寂しくて泣いたり、わがまま言っちゃったりしたけど、壮祐くんはその度に私を包んでくれた。

住宅展示場で二人で作った3枚目の間取り図。
壮祐くんが、
「将来、陽南と俺と子どもたちがいて、そこに深影さんもいたら楽しいと思わない?もちろんレンガの家で」
そう言ってくれた。

作った後で照れくさそうに、
「俺,一人っ子でしょ?
いつか俺は一人になってしまうんだな、
ずっとそう思ってたけど、陽南と出会えて陽南と生きていけるということは、帰る場所ができるってことなんだよね。
俺はおかえりが聞きたいし、言いたいんだ。
それは深影さんにも言ってあげたい」

私との未来だけじゃなく、そこに壮祐くんと私の子どもがいる未来、そしてお兄ちゃんもいる未来を壮祐くんは思い描いてくれた。
胸がいっぱいで泣きそうだった。
本当に大きくて優しい人。

私、壮祐くんのことが大好きなんだな…
ライトアップされた東京駅のオレンジが滲む。
また二人で見たいな…
早く帰ってきてくれないかな…
会いたい…壮祐くんに会いたくなっちゃった…

お兄ちゃん、まだかな…


「陽南」

「陽南!」

お兄ちゃん?

「陽南!」

涙でぼんやり見えたのは壮祐くんだった。

なんで…
帰ってくるの3月末ギリギリだって言ってたのに…

「陽南!」

壮祐くんが両手を広げて笑ってる。

「壮祐くん!」
壮祐くんの元へ走る。
広げた両手の中に飛び込む。
その手でギュッと抱きしめてくれる。
涙が止まらないけど言わなくちゃ…

「おかえり、壮祐くん」
「ただいま、陽南」

「サプライズ成功?」
「…え?」
「深影さんに頼んだんだ、陽南をここに連れてきて欲しいって」

え…お兄ちゃんがご飯食べに行こうって言ったのはこのためだったの?


「おーい、成功したかあ?」

お兄ちゃんがこっちを見て笑ってる。
「成功です!」
壮祐くんが両手で大きな丸を作る。

「よかったな、陽南」
「お兄ちゃん…ありがとう」
「フレンチは二人で行け、それは本当に予約取ってあるから。じゃあな」
「待って、深影さん!」
「ん?なに?さすがに邪魔しねえよ」
「違います、三人です」
「なにが?」
「フレンチの予約です」
「は?二人で予約したよ」
「俺が三人で取り直してます」
「え…」

壮祐くんがとびきりの笑顔で、
「三人で行きましょう、いいよね?陽南」
「うん!」
そういうところも大好き。
お兄ちゃんは予想外の展開に、
「え?なんで?え?はあ?」
と相当戸惑っていた。
一緒に行こう、お兄ちゃん。
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