レンガの家

秋臣

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深影さんに頼みごとをした。
「陽南を東京駅まで連れて来てほしい」と。
陽南には3月末に東京に戻ると伝えていた。
その予定より早く帰って陽南を驚かせたかった。
陽南を誘い出すために早番の日を聞いてもらったり、ご飯に誘ってもらったりした。
その連絡は輝哉さんを通してやっていたが、深影さんがブチ切れた。
俺が連絡先を教えないのと、深影さんの連絡先を知ろうとしなかったからだ。
そのせいでいちいち輝哉さんを通さなければならず、その面倒くささに深影さんがキレた。

もう協力しないと言われてさすがにまずいと思った。
輝哉さんにもちょっと酷すぎると言われて、連絡先を教えた。
深影さんの喜びようときたら…すごかった。
今のところ、悪用はされていない。
毎日おはようとおやすみのLINEはくるけど。

陽南にサプライズし、喜ばせたい。
そう伝えると深影さんは協力してくれた。
食事に行こうと誘い出し、本当にフレンチの予約を取ってくれていた。
深影さんに店の名前を聞いておいた。
「事前にどんな店か調べておくのか?」
と聞かれたから、そうですと答えたが本当は違う。
深影さんは俺と陽南のために予約を取ってくれているはず。
店に確認したらやはりそうだったので変更をお願いした。
「三名で予約をお願いします」


「なんで三人?お前ら二人で行けよ」
深影さんは嫌がった。
「俺、デリカシーなさそうであるぞ。
空気は読む方なんだ」
とずっと嫌がってる。
「三人で行くの初めてですし、いいじゃないですか」
「そうだよ、一緒に行こうよ」
陽南も背中を押してくれる。
深影さんも予約時間が近づいてること、一人でもキャンセルがあるとどれだけ店が迷惑かということもよく知っているので渋々了承してくれた。

フランスの田舎にある小さなレストランといった店だった。
深影さんが好きそうな店だなと思った。

「それじゃ、壮祐くんの卒業と東京帰還を祝して乾杯!」
ワインで祝ってくれる。
深影さんは炭酸水だ。
「コースにしちゃったけどいいよな?」
「はい、楽しみです」
フレンチは詳しくないが、前菜からシンプルなのに味の深みを感じて驚く。美味しい。
陽南が素直に、
「美味しい!」
を連発してる。
本当、陽南のいうとおり、とても美味しい。

メインの肉料理まで食べ終える。
あとはデセールと呼ばれるデザートのみだ。

美味しいフレンチを食べながらずっとお喋りな二人の話を聞いていた。
賑やかなのも久しぶり。
年は離れてるけど本当に仲の良い二人。

「そうだ、忘れてた」
深影さんはそう言ってなにか取り出す。
「ほら、大事なもんだろ?」
三びきのこぶたの絵本だ。
「持って来てくれたんですか?」
「こっちに帰って来るまで預かる約束だったからな、保管期限切れだ」
「大切にしてくれて、ありがとうございました」
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