レンガの家

秋臣

文字の大きさ
49 / 54

約束

しおりを挟む
「それじゃこれも」
二人の前にメモ用紙と俺のスマホ、
そして今返してもらったばかりの絵本を並べて置く。

「壮祐くん、これなに?」
「なによ?写真?仙台?」
二人がキョトンとしている。

「この写真の家は俺の祖父母の家です。
メモはその住所です」
「そうなの?」
「それがどうかした?」
「玄関のところにレンガを使ってます」
「ああ、前に言ってたな、これか」
「一部だけレンガにしてくれたんだよね?」
二人とも覚えていてくれた。
「そうです。俺、一部だけでもレンガを使ってくれたのが嬉しくて、この家大好きなんです」

二人とも話を聞いてくれてる。

「内定が出た頃、一度実家に戻ったんですけどその時、祖父母と両親から話があると言われました」
「うん」
「で?」

「祖父母も高齢になって免許も自主返納しました。少しだけ不便になったようですが、まだまだ元気です。
でもこれを機会に俺の両親と住むことを検討しているそうです。
両親も同じ都内に住んではいるけど、一緒に住んだ方が目が届くからそうしたいと言ってます」

「うん、それはその方が安心かもな」
「そうだね」
「で?これはなによ?」
「うん、壮祐くん、なに?」

「陽南は俺のじいちゃんとばあちゃんに会ったことあるよね?」
「うん、何度かお会いしてる。
私がGSになった時も喜んでくれて、制服の写真みたいって言ってくれたり、勤務時間が不規則だから体に気をつけてねって気遣ってくれたりしてくれたよ」
「うん、陽南のこと、かわいらしいお嬢さんねってよく言ってるよ」
「照れる…」
「気に入られてんじゃんw」
深影さんが揶揄う。

「祖父母の家を俺に譲りたいと言われたんだ」
「え?」
「そうなの?」
「はい、ここからの方が職場に近いだろうと」
「会社どこだっけ?」
深影さんに聞かれる。
「品川です」
「おじいさんの家は?」
「蒲田です」
「なるほどね、一本で行けるな」
「そうなんです」
「じゃあ壮祐くんはそこに引っ越すの?」

「じいちゃんとばあちゃんに『陽南さんの働いてる空港にも近いでしょ?』
そう言われたよ」
「え……」
「それって……」


背筋を伸ばす。

「陽南、やっと約束できる。
俺は社会人に成り立てだから、あと数年は必要になると思う。
遠くない未来に陽南と結婚したい。
結婚して、あの家を建てたいんだ」

陽南の目が潤む。

「陽南、俺と結婚して欲しい。
そのためにあと数年ください。
約束をさせて欲しい、お願いします」

陽南が泣いてしまい、言葉にならない。

「陽南、ちゃんと返事をしなさい」
深影さんが優しく声をかける。

「はい…はいっ!」

泣きながら手を挙げる陽南に笑ってしまう。
深影さんも、
「子どもかよw」
と笑ってる。

「それにしても俺の前でよくプロポーズできたな。俺のメンタル、ズタボロだぞ」
「深影さんに見届けて欲しかったんです」
「嫌がらせ?」
「トドメです」
「性格悪っ!」
ゲラゲラ笑ってる。

「笑ってないときついな…」
そう言って深影さんが立ち上がる。
「…お兄ちゃん?」
「ごめんな、雰囲気ぶち壊すみたいなことして。さすがにきついんだわ」
「お兄ちゃん…」
陽南の目がまた潤む。

「深影さん、待って」
「いや、ごめん、無理」
「お願いします、座ってもらえませんか」
「…壮祐くん、残酷だぞ」
「わかってます」
「それなら帰らせてくれ」
「お願い、座って…お願いします」
「……」
深影が俯きながら座る。

「深影さん」
「…なに」
「これ覚えてますか?」
スマホの画面を深影に見せる。
あの間取り図だ。
「…覚えてるよ」
「俺はこの家を建てたいんです」
「え…」
陽南を見る。
コクコクと目を真っ赤にしながら頷いている。

「今住んでるところの方がBothに近いと思うし、深影さんの都合もあると思います。
なので、深影さんのタイミングでこの家に来てください」
「……」
「レンガの家は深影さんとじゃないと作れない」
「そうだよ、お兄ちゃん、壮祐くんを手伝ってあげて」
「レンガの話は深影さんじゃないとディープに話せない。飽きもせずレンガの話を聞いてくれる人なんて深影さんしかいないんです」

「もしこの先深影さんが一人で生きていくなり、誰かと幸せになるなり、それはそれで尊重したいし素敵だなって思います。
その上で深影さんの帰る場所はここにありますって言いたいんです」
 
「深影さん、俺たちと一緒に住みませんか?」

深影さんが人目も憚らず泣いている。
陽南が笑ってる。
そして優しく言う。
「お兄ちゃん、ちゃんと返事をしなさい」

ふっ
深影さんが吹き出す。
「…はい」
深影さんが手を挙げる。

笑ってしまった。


「俺、壮祐くん、襲うかもよ」
「生まれてくるかもしれない甥や姪に軽蔑されてもいいならどうぞ」
「くそっ!本当に仙台行って性悪になったな」
「おかげさまで」
「あははは!」
陽南と深影さんが泣き笑いで互いを揶揄ってる。
良かった…成功かな?

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

処理中です...