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約束
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「それじゃこれも」
二人の前にメモ用紙と俺のスマホ、
そして今返してもらったばかりの絵本を並べて置く。
「壮祐くん、これなに?」
「なによ?写真?仙台?」
二人がキョトンとしている。
「この写真の家は俺の祖父母の家です。
メモはその住所です」
「そうなの?」
「それがどうかした?」
「玄関のところにレンガを使ってます」
「ああ、前に言ってたな、これか」
「一部だけレンガにしてくれたんだよね?」
二人とも覚えていてくれた。
「そうです。俺、一部だけでもレンガを使ってくれたのが嬉しくて、この家大好きなんです」
二人とも話を聞いてくれてる。
「内定が出た頃、一度実家に戻ったんですけどその時、祖父母と両親から話があると言われました」
「うん」
「で?」
「祖父母も高齢になって免許も自主返納しました。少しだけ不便になったようですが、まだまだ元気です。
でもこれを機会に俺の両親と住むことを検討しているそうです。
両親も同じ都内に住んではいるけど、一緒に住んだ方が目が届くからそうしたいと言ってます」
「うん、それはその方が安心かもな」
「そうだね」
「で?これはなによ?」
「うん、壮祐くん、なに?」
「陽南は俺のじいちゃんとばあちゃんに会ったことあるよね?」
「うん、何度かお会いしてる。
私がGSになった時も喜んでくれて、制服の写真みたいって言ってくれたり、勤務時間が不規則だから体に気をつけてねって気遣ってくれたりしてくれたよ」
「うん、陽南のこと、かわいらしいお嬢さんねってよく言ってるよ」
「照れる…」
「気に入られてんじゃんw」
深影さんが揶揄う。
「祖父母の家を俺に譲りたいと言われたんだ」
「え?」
「そうなの?」
「はい、ここからの方が職場に近いだろうと」
「会社どこだっけ?」
深影さんに聞かれる。
「品川です」
「おじいさんの家は?」
「蒲田です」
「なるほどね、一本で行けるな」
「そうなんです」
「じゃあ壮祐くんはそこに引っ越すの?」
「じいちゃんとばあちゃんに『陽南さんの働いてる空港にも近いでしょ?』
そう言われたよ」
「え……」
「それって……」
背筋を伸ばす。
「陽南、やっと約束できる。
俺は社会人に成り立てだから、あと数年は必要になると思う。
遠くない未来に陽南と結婚したい。
結婚して、あの家を建てたいんだ」
陽南の目が潤む。
「陽南、俺と結婚して欲しい。
そのためにあと数年ください。
約束をさせて欲しい、お願いします」
陽南が泣いてしまい、言葉にならない。
「陽南、ちゃんと返事をしなさい」
深影さんが優しく声をかける。
「はい…はいっ!」
泣きながら手を挙げる陽南に笑ってしまう。
深影さんも、
「子どもかよw」
と笑ってる。
「それにしても俺の前でよくプロポーズできたな。俺のメンタル、ズタボロだぞ」
「深影さんに見届けて欲しかったんです」
「嫌がらせ?」
「トドメです」
「性格悪っ!」
ゲラゲラ笑ってる。
「笑ってないときついな…」
そう言って深影さんが立ち上がる。
「…お兄ちゃん?」
「ごめんな、雰囲気ぶち壊すみたいなことして。さすがにきついんだわ」
「お兄ちゃん…」
陽南の目がまた潤む。
「深影さん、待って」
「いや、ごめん、無理」
「お願いします、座ってもらえませんか」
「…壮祐くん、残酷だぞ」
「わかってます」
「それなら帰らせてくれ」
「お願い、座って…お願いします」
「……」
深影が俯きながら座る。
「深影さん」
「…なに」
「これ覚えてますか?」
スマホの画面を深影に見せる。
あの間取り図だ。
「…覚えてるよ」
「俺はこの家を建てたいんです」
「え…」
陽南を見る。
コクコクと目を真っ赤にしながら頷いている。
「今住んでるところの方がBothに近いと思うし、深影さんの都合もあると思います。
なので、深影さんのタイミングでこの家に来てください」
「……」
「レンガの家は深影さんとじゃないと作れない」
「そうだよ、お兄ちゃん、壮祐くんを手伝ってあげて」
「レンガの話は深影さんじゃないとディープに話せない。飽きもせずレンガの話を聞いてくれる人なんて深影さんしかいないんです」
「もしこの先深影さんが一人で生きていくなり、誰かと幸せになるなり、それはそれで尊重したいし素敵だなって思います。
その上で深影さんの帰る場所はここにありますって言いたいんです」
「深影さん、俺たちと一緒に住みませんか?」
深影さんが人目も憚らず泣いている。
陽南が笑ってる。
そして優しく言う。
「お兄ちゃん、ちゃんと返事をしなさい」
ふっ
深影さんが吹き出す。
「…はい」
深影さんが手を挙げる。
笑ってしまった。
「俺、壮祐くん、襲うかもよ」
「生まれてくるかもしれない甥や姪に軽蔑されてもいいならどうぞ」
「くそっ!本当に仙台行って性悪になったな」
「おかげさまで」
「あははは!」
陽南と深影さんが泣き笑いで互いを揶揄ってる。
良かった…成功かな?
二人の前にメモ用紙と俺のスマホ、
そして今返してもらったばかりの絵本を並べて置く。
「壮祐くん、これなに?」
「なによ?写真?仙台?」
二人がキョトンとしている。
「この写真の家は俺の祖父母の家です。
メモはその住所です」
「そうなの?」
「それがどうかした?」
「玄関のところにレンガを使ってます」
「ああ、前に言ってたな、これか」
「一部だけレンガにしてくれたんだよね?」
二人とも覚えていてくれた。
「そうです。俺、一部だけでもレンガを使ってくれたのが嬉しくて、この家大好きなんです」
二人とも話を聞いてくれてる。
「内定が出た頃、一度実家に戻ったんですけどその時、祖父母と両親から話があると言われました」
「うん」
「で?」
「祖父母も高齢になって免許も自主返納しました。少しだけ不便になったようですが、まだまだ元気です。
でもこれを機会に俺の両親と住むことを検討しているそうです。
両親も同じ都内に住んではいるけど、一緒に住んだ方が目が届くからそうしたいと言ってます」
「うん、それはその方が安心かもな」
「そうだね」
「で?これはなによ?」
「うん、壮祐くん、なに?」
「陽南は俺のじいちゃんとばあちゃんに会ったことあるよね?」
「うん、何度かお会いしてる。
私がGSになった時も喜んでくれて、制服の写真みたいって言ってくれたり、勤務時間が不規則だから体に気をつけてねって気遣ってくれたりしてくれたよ」
「うん、陽南のこと、かわいらしいお嬢さんねってよく言ってるよ」
「照れる…」
「気に入られてんじゃんw」
深影さんが揶揄う。
「祖父母の家を俺に譲りたいと言われたんだ」
「え?」
「そうなの?」
「はい、ここからの方が職場に近いだろうと」
「会社どこだっけ?」
深影さんに聞かれる。
「品川です」
「おじいさんの家は?」
「蒲田です」
「なるほどね、一本で行けるな」
「そうなんです」
「じゃあ壮祐くんはそこに引っ越すの?」
「じいちゃんとばあちゃんに『陽南さんの働いてる空港にも近いでしょ?』
そう言われたよ」
「え……」
「それって……」
背筋を伸ばす。
「陽南、やっと約束できる。
俺は社会人に成り立てだから、あと数年は必要になると思う。
遠くない未来に陽南と結婚したい。
結婚して、あの家を建てたいんだ」
陽南の目が潤む。
「陽南、俺と結婚して欲しい。
そのためにあと数年ください。
約束をさせて欲しい、お願いします」
陽南が泣いてしまい、言葉にならない。
「陽南、ちゃんと返事をしなさい」
深影さんが優しく声をかける。
「はい…はいっ!」
泣きながら手を挙げる陽南に笑ってしまう。
深影さんも、
「子どもかよw」
と笑ってる。
「それにしても俺の前でよくプロポーズできたな。俺のメンタル、ズタボロだぞ」
「深影さんに見届けて欲しかったんです」
「嫌がらせ?」
「トドメです」
「性格悪っ!」
ゲラゲラ笑ってる。
「笑ってないときついな…」
そう言って深影さんが立ち上がる。
「…お兄ちゃん?」
「ごめんな、雰囲気ぶち壊すみたいなことして。さすがにきついんだわ」
「お兄ちゃん…」
陽南の目がまた潤む。
「深影さん、待って」
「いや、ごめん、無理」
「お願いします、座ってもらえませんか」
「…壮祐くん、残酷だぞ」
「わかってます」
「それなら帰らせてくれ」
「お願い、座って…お願いします」
「……」
深影が俯きながら座る。
「深影さん」
「…なに」
「これ覚えてますか?」
スマホの画面を深影に見せる。
あの間取り図だ。
「…覚えてるよ」
「俺はこの家を建てたいんです」
「え…」
陽南を見る。
コクコクと目を真っ赤にしながら頷いている。
「今住んでるところの方がBothに近いと思うし、深影さんの都合もあると思います。
なので、深影さんのタイミングでこの家に来てください」
「……」
「レンガの家は深影さんとじゃないと作れない」
「そうだよ、お兄ちゃん、壮祐くんを手伝ってあげて」
「レンガの話は深影さんじゃないとディープに話せない。飽きもせずレンガの話を聞いてくれる人なんて深影さんしかいないんです」
「もしこの先深影さんが一人で生きていくなり、誰かと幸せになるなり、それはそれで尊重したいし素敵だなって思います。
その上で深影さんの帰る場所はここにありますって言いたいんです」
「深影さん、俺たちと一緒に住みませんか?」
深影さんが人目も憚らず泣いている。
陽南が笑ってる。
そして優しく言う。
「お兄ちゃん、ちゃんと返事をしなさい」
ふっ
深影さんが吹き出す。
「…はい」
深影さんが手を挙げる。
笑ってしまった。
「俺、壮祐くん、襲うかもよ」
「生まれてくるかもしれない甥や姪に軽蔑されてもいいならどうぞ」
「くそっ!本当に仙台行って性悪になったな」
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陽南と深影さんが泣き笑いで互いを揶揄ってる。
良かった…成功かな?
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