レンガの家

秋臣

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三びきのこぶた

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「ごめんね、お待たせ」
「用事終わった?」
「終わったよ、部屋に戻ろうか」
「うん」
陽南はラウンジのソファーが座り心地が良くて、ちょっと寝そうだったという。
「ダメだよ、寝たら。陽南、すぐ寝ちゃうんだから」
「寝ないよ」
「嘘ばっかりwすぐ寝落ちするくせに」
「寝ないよ」

部屋の前で止まる。
「入らないの?」
「陽南、目瞑って」
「え?サプライズ?」
「陽南さん、そういうことは心の中だけにしてください」
「あ…」
「あ…じゃないよw」
「えへへ」
「笑って誤魔化さないでw
目瞑った?俺見えてない?」
「大丈夫、見ません、見えません」
「それじゃ部屋に入ろう。連れていくから手繋いでてね」
「うん」
「見えてない?」
「うん」
「何が見える?」
「壮祐くん」
「見てるじゃんw」
「あ…」
「ちゃんとして」
「はい」

陽南を部屋に誘導する。
「陽南、そこに椅子があるから座らせるね」
「うん」
陽南を座らせる。
「はい、目開けていいよ」
「いいの?」
「どうぞ」

陽南の前にはテーブルがある。
そのテーブルの上に小さな家が三つ置かれている。

「壮祐くん、これなに?」
「陽南、これ着けて」
「え?」
「陽南は狼役です」
壮祐が陽南に犬耳カチューシャを着ける。

「もしかして三びきのこぶた?」
「そうです」
「なんで?w」
「俺の茶番に付き合ってください」
「ふふっ」
陽南が笑っちゃってる。

「陽南狼はこのワラでできた家を吹き飛ばしてください。できる?」
「うわあ、細かい!本当にワラ?」
「うん」
「作ったの?」
「そうだよ」
「壮祐くんがこれ作ってるの想像すると笑っちゃう」
「陽南狼、吹き飛ばしちゃって」
「うんw」

陽南が勢いよく、ふう──っ!と息を吹きかける。
するとワラの家は脆くも崩れてしまう。
中から厚紙でできた人形が出てくる、
顔には陽南の写真が貼ってある。
陽南人形だ。

「これ、私?二役?」
「陽南の作ったワラの家は陽南狼によって壊されてしまいました」
「ちょっと待って!なんで下着姿なの!?」
「陽南なので」
「やめてよw服着させてあげて」
「陽南なので」
「もう!」
「はい、次に行きますよ」

次は木でできた家。
「はい、陽南狼、やっちゃってください」
「いくよ!」
ふう──っ!
「あれ?」
「木はワラよりは丈夫だから頑張れ」
ふう──っ!
ふう──っ!!
何度か吹きかけてやっと崩れた。
「やった!」
「狼の本能が目覚めましたねw」
「ちょっと楽しいw」

崩れた木の家の中からは深影人形が出てくる。

「お兄ちゃん?」
「深影さんです」
「待ってよ、服着てるんだけど!ずるい!私だけ恥ずかしいよ」
「仕方ないなあ」
壮祐はそう言うと深影人形からタンクトップを外して、陽南人形に着ける。
「これ着せ替えできるの?」
「はい」
「細かいw」

「さあ、葦原兄妹は家を失ってしまいました。狼が執拗に追いかけてきます。
レンガの家に助けを求めます」
「これ作ったの!?」
「はい」
「すごい…」
「これが一番大変だったよ」
「すごい!」
「葦原兄妹はレンガの家に逃げ込みます」
屋根を外して二人を中へ入れる。
「ドアからじゃないんだw」
「そこまで精巧な作りにできませんでしたw屋根を外せるようにするだけで精一杯でした。大目に見てください」
「あはは」

「さあ、陽南狼、レンガの家を吹き飛ばしちゃってください!」 
「これなら壊せそうな気がする」
「その意気です!頑張れ!」
「壊してやる!」
俄然、陽南狼がやる気になった。

大きく息を吸い、勢いよく吹きかける。
ふう──っ!!
ふう──っ!!
ふう──っ!!
びくともしない。

「全然壊れない!」
「ほら、頑張って!」
「待って!本気でやる!」
ふう──っ!!
ふう──っ!!
ふう──っ!!
ふう──っ!!
ふう──っ!!
ふうぅぅ…………

陽南狼が力尽きる。

「無理……」
「あははははは!」
「こんなの無理だよ……」
「くくくくく」
「だって尻尾ないもん」
「え?」
「狼の尻尾がないから無理なんだよ」
「そんなわけないだろww」
「手で壊していい?」
「何がなんでも壊したいんだなw」

「狼ってこのあとどうなるんだっけ?」
「狼はえんとつから家に入ろうして、ぐつぐつ煮え立った鍋の中に落ちて死んじゃう」
「そんな残酷だった?」
「こぶたたちに食べられちゃう説もある」
「うわあ…」
「レンガの家を壊せなくて諦めて逃げちゃうパターンもあるよ。どっちがいい?」
「逃げます」
「はい、逃げてくださいw」
「覚えてろよ!」
「そんなこと言うのかよw」
「悔しいもん」

陽南狼から犬耳カチューシャを外す。
「さて、レンガの家の中は無事かな?」
屋根を外す。
家の中には陽南と深影、そして壮祐人形がいる。
深影人形を取り出す。
「邪魔なので」
「酷いw」
陽南が笑う。

「陽南、家の中のものを出してくれる?」
「私が?」
「うん」
「出せばいいの?」
「そう」

言われるがまま、陽南はレンガの家にあるものを取り出す。
まず自分の人形。
続いて壮祐人形。
「あのさあ、どうして壮祐くんだけドレスアップしてるの?この扱いの差はなに?」
陽南がブツブツ文句言ってる。
そう言いながら、まだ残ってるものを取り出す。

「え……」

陽南が手にしているのは紙でできた着せ替えのウエディングドレスだ。

「それを陽南人形に着せてください」

少し震える手で陽南が陽南人形に着ける。
壮祐が自分の人形と陽南人形を並べる。

陽南を見て笑うと壮祐は言う。
「まだあるよ、全部出して?」

「うん…」
陽南の目が潤んでる。

最後に陽南が手にしたのは指輪だった。

陽南が泣き出す。

壮祐が陽南の左手を取り、その指輪を薬指にはめる。
そしてその手を取ったまま跪く。


「葦原陽南さん、俺と結婚してください」


陽南が涙でぐしゃぐしゃの顔と震える声で、
「はい…」
と返事をする。

陽南を抱きしめる。

「待たせてごめんね」
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