恋人ごっこはおしまい

秋臣

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噂のゲイビ

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噂のゲイビはやばかった。

曽川の言ってたことがよくわかった。
しょっちゅう来ている京佐の部屋で、
「曽川のやつ大袈裟だよな」
「男同士でセックスとかそんなことあるわけねえわ」
「だな」
俺たちは口々に言い合い、散々曽川をバカにしながら『恋人ごっこ』というタイトルのDVDを再生した。


なんだ、これ……
男同士なんて絶対無いわと思ってたのに、
俺いけるかも……いや、ヤりてえ……と洗脳されていく。
一人で観るべきだった。
隣に京佐がいる。
これはまずい。
京佐をチラリと見ると、京佐も俺の様子を伺ってる。

……
……

「やばくね?」
「こっち見んな、やばい」
「……勃ってる?」
「……勃ってる」
京佐の股間に手を伸ばす。
「バカッ! 何触ってんだよ!」
「京佐も触ってみろよ」
「はあ? やだよ」
京佐の手を取って俺のを触らせる。
「お前……ガチガチじゃんよ」
「京佐もだろ?」

互いに服の上から握ったまま目が合う。
やばいって……これじゃ曽川たちと一緒じゃん……

どちらともなく体が動いた。
次の瞬間キスしてた。
男だとか京佐だとか関係なかった。
猛烈に昂り、止められなかった。
唇が触れ、感触に狂わされる。
舌も自然に絡む。
夢中でキスする俺たちはもっと先に進みたくて、服を脱いだ。
パンツは踏みとどまった。
京佐の程よく締まった体が艶かしくて、思わず胸に手が伸びる。
それは京佐も同じだったが、俺の指が先に京佐の乳首に触れるとピクンと反応する。
やはいって……マジでやばい……
そんな反応すんなよ……

堪らずクリッと摘むと、
「あ……」
となんとも甘い声を漏らす。
男でも感じるのか?
吸い寄せられるように乳首に吸い付くと、
「やめ……あ……あ……」
と体を震わせる京佐。
お前、やばい……

このゲイビのすごいのは、レクチャーDVDのようになっているところだ。
しかも出演している男優二人が、モデルか芸能人かというくらいのイケメン。
曽川が、
「このゲイビは女にも売れてるんだってよ」
と言っていたがよくわかる。

いちいち、これをああしてこうして……と教えるのではない。
見て学べ、これに尽きる。
ここであれこれ言われたら絶対冷める。
だからずっと説明など入らず、ただ見せてくれてるだけの方が没入できる。

煽って昂らせて、その気にさせた視聴者をどうすればいいのか、なんともいえない絶妙な時間配分で次にどうすればいいのか誘ってくれるのだ。
謂わば男同士の営みにおける教科書及び授業のようだ。


曽川に2枚組のDVDを渡された。
そして、
「2枚目に突入したら終わりだと思え」
と言っていた。
「終わりってどういうことだ?」
「新しい扉を開いたってことだよ」
鈍い京佐が聞き返す。
「新しい扉って?」
「そりゃあお前、男同士のよ」
「絶対ないから逆に安心して観られる。自信ある」
京佐がきっぱりと言い切る。
それは俺も同意だ。

「だろ? そう思うだろ?
俺と依田もそうだったんだよ。
なーのーにー! キスしちゃったもん」
「ないわー絶対ないわー」
「1枚目でやばいと思ったらやめた方がいい。2枚目は観るな。体験者の忠告」
「曽川たちは観たの?」
「1枚目でも相当やばいとは思ったんだよ。でも止められないんだよ、2枚目が観たくて堪んねえの。中毒者ってこんな感じなのかなって思ったよ。で、観ちゃったら……」
「依田とキスしてたと」
「そういうこと」
「そんなことあるか?」
俺は半信半疑だ。
「依田の理性が勝ってくれたからキスで止まったけど、あいつまで負けてたら最後までヤッてたと思う」
「ということは曽川は理性に勝てなかったのか?」
「完全敗北。抗う気なんてまっっったくなかったね」
「あはははは!」
「うははは!」
「いや、観れば俺の気持ちがわかるから」
俺と京佐は、
「絶対ならない」
と口を揃えて断言した。

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