25 / 52
依田の兄貴
しおりを挟む
最初のSAに到着。
トイレ休憩と軽く腹に入れておく。
ここでルートの確認。
予想より空いている。
「この先どうなるかわからないけど静岡に入ったら渋滞は避けられないと思う」
と依田は言う。
「いくつかルートはあるけど、渋滞してもわかりやすい方がいいと思うんだよね」
「そうだな」
「車に慣れてないしね」
「じゃあそうしよう」
ひたすら南下するルートに決まった。
さて……
2回目のくじ引き。
「待った!」
依田が待ったをかけた。
「提案」
提案?
「ここから先、高速から有料道路に入るんだけど、そこを通過するまでしばらくは俺が運転するよ、道わかるし」
確かに不慣れな車で不慣れな高速や有料道路はハードル高い。
「そこから先を交代制にしようぜ」
「依田坊っちゃん、神っ!」
「坊っちゃんか神かどっちかにしろよ。
どっちでもないけど」
ということで3人でくじを引く。
「せーの!」
決まった。
2が俺。
3と4は曽川と京佐だ。
「おしっ!」
曽川強いな。
それじゃSAを出発!
天気は快晴、めちゃくちゃ暑い。
しかしエアコン効いてて車内は快適。
後部座席では曽川と京佐が完全にグダってる。
さてと、俺は2の役目を果たしますかね。
「依田坊っちゃんは別荘よく行くのか?」
「坊っちゃんはやめろ。連れて行かれるが正しいけど、よく行くかな」
「へえ」
「登山もそうだけど、危ないから一人では行くながうちのルールになっててさ。親父は友達と行く時もあるけど都合つかないと俺らが連れて行かれる」
「俺ら?」
「そう、俺と兄貴」
「兄貴いるんだ」
「一つ上、大学4年。この車は兄貴と共有してる車」
「初めて知ったわ」
「依田、自分の話あんましねえもん」
後ろから曽川が割って入る。
「聞かれれば答えるけど、自分から兄弟とか家族の話あんまりしないだろ?」
「まあ、そうか」
「兄貴は同じ大学?」
「違う、音大」
「マジ?」
「楽団に入るのが夢っていうか目標でチェロやってる」
「チェロってどんな楽器だっけ?」
曽川が聞く。
「バイオリンがでかくなったみたいなやつ。立てて演奏する」
「あーあれか」
本当にわかってるのか?
「楽団入れそうなのか? システムがよくわからないけど」
「俺も詳しくは知らないけど、厳しいらしいよ。音大卒業生の数人しか入れないとは聞いてる」
「みんな狙ってるもんな」
「そうだよね」
京佐もそのリアルな厳しさに驚いている。
「とにかくオーディション受けるしかないんだよね、実力で勝負するしかない」
「そっか」
「依田の家はみんな実力者ってわけか、すげえわ」
曽川が素直な感想を漏らす。
本当にそうだよな。
「まあ、兄貴はまだ楽団決まってないし、親父もその辺りの厳しさはわかってるから、卒業してしばらくは、畑違いだけど親父の事務所手伝いながらやればいいって言ってるよ」
「俺も雇ってくれねえか」
曽川がぼやく。
「就活はこれからだろ? 諦めるの早くね?」
「なんかさあ、焦ってはいるけど正直何やりたいのかわかんないんだよね」
「わかるぞ、曽川、俺もだよ」
「うん、わかる。俺もわかんない」
俺も京佐も同意する。
「だからさ、兄貴見てると厳しい道だけど目標が明確だとブレないじゃん? すげえなって思うよ」
依田がしみじみと言う。
本当それな。
依田による依田の兄貴は車を全然使わないらしい。
なんで? こんないい車、俺なら乗りまくるぞ。
「乗るには乗るけど滅多に乗らないよ」
「なんで?」
「楽器がでかいから運搬するのにはいいんだけど、事故したら自分も楽器も壊れるから嫌だってさ」
「でもそれって、車じゃなくて楽器持って公共交通機関使っても同じことだよな?
事故に遭ったら、結果はどっちも同じじゃね?」
と俺が言うと、
「そうなんだよ、兄貴はそういうところ抜けてんの」
「ウケるw」
「面白い兄貴だな」
「面白いっていうか楽器のことしか考えてないんだよね」
「それだけ好きなものがあるの羨ましいよ。依田のお兄さんの演奏聴いてみたい。どこかで聴きたりできるのかな」
と京佐が言うと、
「言えばいくらでもやってくれるよ。
人前で演奏するの大好きだから」
「マジ? 聴きたい」
「今度うち来れば?」
「行く!」
京佐より先に曽川が食いついた。
「お前、興味あるのかよ。チェロもわからないくせに」
「依田の家に行きたい」
「そっちw」
曽川の好奇心は小学生と同じだな。
トイレ休憩と軽く腹に入れておく。
ここでルートの確認。
予想より空いている。
「この先どうなるかわからないけど静岡に入ったら渋滞は避けられないと思う」
と依田は言う。
「いくつかルートはあるけど、渋滞してもわかりやすい方がいいと思うんだよね」
「そうだな」
「車に慣れてないしね」
「じゃあそうしよう」
ひたすら南下するルートに決まった。
さて……
2回目のくじ引き。
「待った!」
依田が待ったをかけた。
「提案」
提案?
「ここから先、高速から有料道路に入るんだけど、そこを通過するまでしばらくは俺が運転するよ、道わかるし」
確かに不慣れな車で不慣れな高速や有料道路はハードル高い。
「そこから先を交代制にしようぜ」
「依田坊っちゃん、神っ!」
「坊っちゃんか神かどっちかにしろよ。
どっちでもないけど」
ということで3人でくじを引く。
「せーの!」
決まった。
2が俺。
3と4は曽川と京佐だ。
「おしっ!」
曽川強いな。
それじゃSAを出発!
天気は快晴、めちゃくちゃ暑い。
しかしエアコン効いてて車内は快適。
後部座席では曽川と京佐が完全にグダってる。
さてと、俺は2の役目を果たしますかね。
「依田坊っちゃんは別荘よく行くのか?」
「坊っちゃんはやめろ。連れて行かれるが正しいけど、よく行くかな」
「へえ」
「登山もそうだけど、危ないから一人では行くながうちのルールになっててさ。親父は友達と行く時もあるけど都合つかないと俺らが連れて行かれる」
「俺ら?」
「そう、俺と兄貴」
「兄貴いるんだ」
「一つ上、大学4年。この車は兄貴と共有してる車」
「初めて知ったわ」
「依田、自分の話あんましねえもん」
後ろから曽川が割って入る。
「聞かれれば答えるけど、自分から兄弟とか家族の話あんまりしないだろ?」
「まあ、そうか」
「兄貴は同じ大学?」
「違う、音大」
「マジ?」
「楽団に入るのが夢っていうか目標でチェロやってる」
「チェロってどんな楽器だっけ?」
曽川が聞く。
「バイオリンがでかくなったみたいなやつ。立てて演奏する」
「あーあれか」
本当にわかってるのか?
「楽団入れそうなのか? システムがよくわからないけど」
「俺も詳しくは知らないけど、厳しいらしいよ。音大卒業生の数人しか入れないとは聞いてる」
「みんな狙ってるもんな」
「そうだよね」
京佐もそのリアルな厳しさに驚いている。
「とにかくオーディション受けるしかないんだよね、実力で勝負するしかない」
「そっか」
「依田の家はみんな実力者ってわけか、すげえわ」
曽川が素直な感想を漏らす。
本当にそうだよな。
「まあ、兄貴はまだ楽団決まってないし、親父もその辺りの厳しさはわかってるから、卒業してしばらくは、畑違いだけど親父の事務所手伝いながらやればいいって言ってるよ」
「俺も雇ってくれねえか」
曽川がぼやく。
「就活はこれからだろ? 諦めるの早くね?」
「なんかさあ、焦ってはいるけど正直何やりたいのかわかんないんだよね」
「わかるぞ、曽川、俺もだよ」
「うん、わかる。俺もわかんない」
俺も京佐も同意する。
「だからさ、兄貴見てると厳しい道だけど目標が明確だとブレないじゃん? すげえなって思うよ」
依田がしみじみと言う。
本当それな。
依田による依田の兄貴は車を全然使わないらしい。
なんで? こんないい車、俺なら乗りまくるぞ。
「乗るには乗るけど滅多に乗らないよ」
「なんで?」
「楽器がでかいから運搬するのにはいいんだけど、事故したら自分も楽器も壊れるから嫌だってさ」
「でもそれって、車じゃなくて楽器持って公共交通機関使っても同じことだよな?
事故に遭ったら、結果はどっちも同じじゃね?」
と俺が言うと、
「そうなんだよ、兄貴はそういうところ抜けてんの」
「ウケるw」
「面白い兄貴だな」
「面白いっていうか楽器のことしか考えてないんだよね」
「それだけ好きなものがあるの羨ましいよ。依田のお兄さんの演奏聴いてみたい。どこかで聴きたりできるのかな」
と京佐が言うと、
「言えばいくらでもやってくれるよ。
人前で演奏するの大好きだから」
「マジ? 聴きたい」
「今度うち来れば?」
「行く!」
京佐より先に曽川が食いついた。
「お前、興味あるのかよ。チェロもわからないくせに」
「依田の家に行きたい」
「そっちw」
曽川の好奇心は小学生と同じだな。
20
あなたにおすすめの小説
真剣な恋はノンケバツイチ経理課長と。
イワイケイ
BL
社会人BL。36歳×41歳なので、年齢高めです。
元遊び人と真面目なおっさんという、割とオーソドックス(?)なお話です。個人的には書いてて楽しかった記憶あり。
かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい
日向汐
BL
過保護なかわいい系美形の後輩。
たまに見せる甘い言動が受けの心を揺する♡
そんなお話。
【攻め】
雨宮千冬(あめみや・ちふゆ)
大学1年。法学部。
淡いピンク髪、甘い顔立ちの砂糖系イケメン。
裏の顔は、甘い低音ボイスとセクシーな歌声の、人気歌い手「フユ」。
【受け】
睦月伊織(むつき・いおり)
大学2年。工学部。
黒髪黒目の平凡大学生。ぶっきらぼうな口調と態度だが、情が深く人をよく見ている。
アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました
あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」
穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン
攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?
攻め:深海霧矢
受け:清水奏
前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。
ハピエンです。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
自己判断で消しますので、悪しからず。
下っ端公務員の俺は派遣のαに恋してる【完結済】
tii
BL
市役所勤めの野々宮は、どこにでもいる平凡なβ。
仕事は無難、恋愛は停滞、毎夜の癒しはゲームとストゼロだけ。
そんな日々に現れたのは、派遣職員として配属された青年――朝比奈。
背が高く、音大卒で、いっけん冷たそうに見えるが、
話せば驚くほど穏やかで優しい。
ただひとつ、彼は自己紹介のときに言った。
「僕、αなんです。迷惑をかけるかもしれませんが……」
軽く流されたその言葉が、
野々宮の中でじわりと残り続ける。
残業続きの夜、偶然居酒屋でふたりきりになり――
その指先が触れた瞬間、世界が音を立てて軋んだ。
「……野々宮さんって、本当にβなんですか?」
揺らぎ始めた日常、
“立場”と“本能”の境界が、静かに崩れていく。
☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。
【第13回BL小説大賞】にエントリーさせて頂きました!
まこxゆず の応援 ぜひよろしくお願いします!
☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。
オトナとコドモ
すずかけあおい
BL
心配性な社会人×ぼんやりした高校生
歩きスマホで転びそうになった都亜は、美形男性に助けられる。それから男性――聡樹との交流がはじまった。大人な聡樹は、都亜をいつも子ども扱いして……。
〔攻め〕鐘江 聡樹(30)
〔受け〕伴内 都亜(16)
◆性描写を含むページには*をつけています。
◆外部サイトでも同作品を投稿しています。
この変態、規格外につき。
perari
BL
俺と坂本瑞生は、犬猿の仲だ。
理由は山ほどある。
高校三年間、俺が勝ち取るはずだった“校内一のイケメン”の称号を、あいつがかっさらっていった。
身長も俺より一回り高くて、しかも――
俺が三年間片想いしていた女子に、坂本が告白しやがったんだ!
……でも、一番許せないのは大学に入ってからのことだ。
ある日、ふとした拍子に気づいてしまった。
坂本瑞生は、俺の“アレ”を使って……あんなことをしていたなんて!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる