恋人ごっこはおしまい

秋臣

文字の大きさ
43 / 52

昼寝と掃除とスイカ割り

しおりを挟む
別荘に戻り、リビングの大窓を開け放つ。
暑いが風が通る。
曽川が2階の寝室から掛け布団を持って来た。
「寝ようぜ」
朝早かったし、昼飯も食っていい具合に眠くなってきてる。

掛け布団を敷いて雑魚寝。
体のどこかが布団からはみ出てるし、何もかけてないけど風が心地よくて気持ちいい。

「ちゃんと昼寝なんて何年ぶりだろ?」
「寝落ちはよくするけどな」
「やばい……もう寝そう……」
京佐がほぼ落ちかけてる。
「一応15時くらいにアラームセットしとく」
依田が気を利かせる。
「そんなに寝ねえよw昼寝だぞ?」
「だよなw」

口数が減ったと思ったら全員落ちた。


ピピッピピッ……


なんか鳴ってる……
薄らぼんやり、天井のシーリングファンと目が合う。
しばらくくるくる回る羽根を見ていた。
どこかで風鈴の音がする。

ああ、そうか、ここは依田の別荘か……
やっと思い出した。
俺の足の上に乗ってるのは誰だ? 
依田だ。
暑いからどける。

ピピッピピッピピッピピッ……

うるせえな!
どこで鳴ってんだよ、音の場所を探す。
のそのそ這い出て探すが見つからない。

ピピッピピッピピッピピッ……

「うるさいっ!」
ひっくり返って寝ていた京佐が突然起きて、アラームにブチ切れる。
ソファーに転がってるスマホから鳴ってるのを確認して止める。

「うるさいなあ」
とブツブツ言いながら元の位置に戻ってまた寝る。
すやあ……

すやあ……じゃねえわ! 起きろ!

全員叩き起こす。
「おい、お前ら起きろ!」
すやすや。
「掃除すんだろ?」
すやすやすぴー

どいつもこいつもなんでこんなに寝起きが悪いんだ。
曽川まで。
まあ、曽川は毎日少し早く起きて朝食作ってくれたりしてるから眠いのはわかる。
だから曽川は優しく起こす。
でも……依田、京佐、お前らは別だ。

キッチンの冷蔵庫に入っていたキンキンに冷えた水でタオルを濡らして絞る。

濡れタオルを曽川の額に乗せる。
「ふえ……?」
目がしばしばしてる。
「起きたか?」
「うー……起きた……めっちゃ寝た~これ気持ちいい……」
濡れタオルをすりすりしてる。
「暑いもんな」
「ありがと、起きる……」
曽川覚醒。

次は京佐と依田だ。
こいつらはここへ来てからずっと俺に起こされている。
依田には大変世話になっているが、京佐と共に寝起きの悪さはなんとかしてもらいたい。
ということで遠慮なくゲシゲシ蹴っ飛ばす。
「おい、起きろよ。掃除すっぞ」
起きねえ。
「俺に任せろ」
曽川が濡れタオルを依田と京佐の顔をピタリと乗せる。
ほんの数秒で、
「っっ! 息できねえ!」
と二人が起きた。
最初からこうすればよかった。


昼寝から起き、リビング・ダイニングと寝室に掃除機をかけ、窓を拭く。
全員でやるから早い。
その後、1階と2階の風呂場とトイレを俺と京佐が担当し、キッチンは曽川、依田は洗車して掃除は完了。

「ありがとな、助かったよ」
「いやいや、使わせていただいたのでこれくらいは当然です」
と俺たち3人は頭を下げる。
「ちょっと早いけどおじちゃんとこ行く?」
「そうだな」
「スイカ持って行こうぜ」
「本当は海でやりたいけど、後始末大変だもんな」
「それな」
「防波堤でやろうぜw」
京佐がバカなことを言い出す。
「落ちるわww」


波野さんの食堂に来るのはここに来てから何度目だろう。
最後の夜も当然のように来てしまった。
「こんばんはー!」
俺たちが挨拶すると、
「やっと来たか、腹減ってるだろ、座れ」
と厨房から波野さんが声をかける。
「おじちゃん、これ冷やしていい? あとでスイカ割りする」
依田が業務用のでかい冷蔵庫にスイカを押し込む。
「お前らが小さい時にはよくやってたけどなあ、やらなくなったよな」
「うん。久しぶりにやりたい」
「まあ、飯食え」
「うん」

相変わらず舟形には刺身がてんこ盛り。
依田が釣った真鯛がメインだという。
鯛の頭がでかい。
おばさんも魚料理をたくさん運んでくる。
「美味しい魚たくさん食べていってね」
一人暮らしで料理もまともにしない俺や京佐にはハードル高くて魚料理は避けてしまうのでありがたい。
なにより美味いんだ。

「よし食うか」
「美味そう」
「食い尽くしてやる」
「だな」

それじゃ、いただきます!


美味い魚を堪能した後、少ししてから冷蔵庫で冷やしておいたスイカを取り出す。

「お前ら、今飯食ったばかりだろ?」
呆れ気味に波野さんが聞く。
「スイカは別腹」
そう依田が答えると、
「若えって怖えなあ」
「本当ねえ」
波野さんとおばさんが口々に言う。

食堂の前にシートを敷く。
「防波堤でやらないの?」
京佐が防波堤を指差すがお前本気でやろうとしてたのかよ、殺す気か?
お前、絶対誘導して海に落とす気だろ?

ギャーギャー騒いでたら近所の小学生や中学生が数人集まってきた。
「一緒にやるか?」
と曽川が声をかけると、
「やる!」
「やりたい!」
と喜んでる。
この人数で食えば余裕でスイカは片付くだろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

真剣な恋はノンケバツイチ経理課長と。

イワイケイ
BL
社会人BL。36歳×41歳なので、年齢高めです。 元遊び人と真面目なおっさんという、割とオーソドックス(?)なお話です。個人的には書いてて楽しかった記憶あり。

かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい

日向汐
BL
過保護なかわいい系美形の後輩。 たまに見せる甘い言動が受けの心を揺する♡ そんなお話。 【攻め】 雨宮千冬(あめみや・ちふゆ) 大学1年。法学部。 淡いピンク髪、甘い顔立ちの砂糖系イケメン。 裏の顔は、甘い低音ボイスとセクシーな歌声の、人気歌い手「フユ」。 【受け】 睦月伊織(むつき・いおり) 大学2年。工学部。 黒髪黒目の平凡大学生。ぶっきらぼうな口調と態度だが、情が深く人をよく見ている。

アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました

あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」 穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン 攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?   攻め:深海霧矢 受け:清水奏 前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。 ハピエンです。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。 自己判断で消しますので、悪しからず。

下っ端公務員の俺は派遣のαに恋してる【完結済】

tii
BL
市役所勤めの野々宮は、どこにでもいる平凡なβ。 仕事は無難、恋愛は停滞、毎夜の癒しはゲームとストゼロだけ。 そんな日々に現れたのは、派遣職員として配属された青年――朝比奈。 背が高く、音大卒で、いっけん冷たそうに見えるが、 話せば驚くほど穏やかで優しい。 ただひとつ、彼は自己紹介のときに言った。 「僕、αなんです。迷惑をかけるかもしれませんが……」 軽く流されたその言葉が、 野々宮の中でじわりと残り続ける。 残業続きの夜、偶然居酒屋でふたりきりになり―― その指先が触れた瞬間、世界が音を立てて軋んだ。 「……野々宮さんって、本当にβなんですか?」 揺らぎ始めた日常、 “立場”と“本能”の境界が、静かに崩れていく。 ☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。 【第13回BL小説大賞】にエントリーさせて頂きました! まこxゆず の応援 ぜひよろしくお願いします! ☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。

オトナとコドモ

すずかけあおい
BL
心配性な社会人×ぼんやりした高校生 歩きスマホで転びそうになった都亜は、美形男性に助けられる。それから男性――聡樹との交流がはじまった。大人な聡樹は、都亜をいつも子ども扱いして……。 〔攻め〕鐘江 聡樹(30) 〔受け〕伴内 都亜(16) ◆性描写を含むページには*をつけています。 ◆外部サイトでも同作品を投稿しています。

この変態、規格外につき。

perari
BL
俺と坂本瑞生は、犬猿の仲だ。 理由は山ほどある。 高校三年間、俺が勝ち取るはずだった“校内一のイケメン”の称号を、あいつがかっさらっていった。 身長も俺より一回り高くて、しかも―― 俺が三年間片想いしていた女子に、坂本が告白しやがったんだ! ……でも、一番許せないのは大学に入ってからのことだ。 ある日、ふとした拍子に気づいてしまった。 坂本瑞生は、俺の“アレ”を使って……あんなことをしていたなんて!

【BL】SNSで出会ったイケメンに捕まるまで

久遠院 純
BL
タイトル通りの内容です。 自称平凡モブ顔の主人公が、イケメンに捕まるまでのお話。 他サイトでも公開しています。

何度でも君と

星川過世
BL
同窓会で再会した初恋の人。雰囲気の変わった彼は当時は興味を示さなかった俺に絡んできて......。 あの頃が忘れられない二人の物語。 完結保証。他サイト様にも掲載。

処理中です...