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最終話 楽しもう
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2年後。
動機は不純だった。
大学も同じところに行きたい、ルームシェアしたい。本当に理由はこれだけしかなかった。
だってルームシェアという大義名分のもと同棲を勝ち取りたいじゃないか。
それしか頭にない上、なんの目標も目的もなく、将来の夢もぼんやりしすぎていて、現実という眼鏡をかけてもやる気の度が合わないのか、全く見えていない。
こんな理由で大学を決めることやルームシェアを承諾してもらえるのか、一か八か双方の親に集まってもらい、晃と二人で説得することにした。
母親たちは、
「ここまで仲良いと驚くより呆れるわ」
と言われ、父親たちには、
「やりたいことができる大学がいいと思うぞ」
と言われた。
「一人暮らししたいと言うのならわかるけどルームシェアって…今の子ってそういうものなの?」
双方の親たちがどうしたものかと思い倦ねている。
兄貴は、
「だったら、俺の時みたいに学費が安い国公立に受かったらOKっていうのはどうよ」
と自分の時と同じ条件を提案した。
ん?兄貴?なんで兄貴がここにいる?
「受験と一人暮らしのノウハウを教えろってさ」
「広夢の時はだいぶ楽させてもらったしな。学費免除とまではさすがに言わないが国公立なら一人暮らしでもルームシェアでもできるんじゃないか?」
と俺の父さんが言う。
兄貴がいい前例を作ってくれたおかげでイメージしやすい俺の両親が晃の両親を説得し始めた。いい前例なのだが頭の出来が並の俺たちにはかなりハードルが高い。
それでもそれを叶えるために二人して死に物狂いで勉強し、なんとか合格することができた。
と言いたいところだが、兄貴のようにはいかないのが俺と晃らしく能力の違いをまざまざと示す結果になった。
普通に国公立は落ち、私大に合格した。
この結果に両親たちは、
「まあ広夢のように全てうまくいくのが当たり前と思っちゃダメよね~」
とさも落ちるのがわかっていたかのような口ぶりだ。
晃の親は、
「私大でも合格できて良かったと思うぞ、頑張ったな」
と労ってくれた。
恵茉ちゃんも、
「お兄ちゃんと歩夢くん、えらいね!おめでとう!」
と頭を撫で撫でしてくれる。本当かわいい。
兄貴は、
「だろうね」
と一言。腹立つ。
本当は俺と晃に合格祝いを置いていってくれてた。
何回か登山を我慢して工面した金らしい、ありがとう。
こうして無事合格と最初から反対はしていなかったらしいルームシェアを認めてもらい、学校に近い2LDKのアパートを見つけ手続きをした。
俺も晃もこれからの生活に浮かれていたが、一つだけ心を曇らせていた。恵茉ちゃんだ。
「なんでお兄ちゃん家出ていっちゃうの?やだあー!」
「歩夢くんが恵茉の家に住めばいいでしょ?
恵茉とお兄ちゃんと歩夢くんの3人一緒でいいでしょ!」
と大泣きされた。
俺も晃も恵茉ちゃんには滅法弱いから、まさかここで心折れそうになるとは思わなかったが、しょっちゅう帰ると約束し、泣く恵茉ちゃんをどうにか納得させた。
引っ越しには兄貴も手伝いに来てくれて、テキパキと俺たちに指示を出し、予定より早く終わらせることができた。
帰り際、
「合鍵くれよ、俺も住む」
とほざいていて、晃が本当に渡しそうになっていたのをすんでの所で止めた。
危なっ!
こいつの警戒心のなさはなんとかしないといけない。
引っ越しも終わり、なんとか新生活と呼べるくらいには整ったと思う。
「晃、俺やりたいことがあるんだけど」
「あ、俺もある!」
「もしかして同じことか?」
「そうかも」
晃が耳打ちする。
やっぱりそうだった。二人で笑い、実行することにした。
飯を外で済ませ、風呂に入るが実家だと当たり前に母さんがやってくれていたことが、全部自分たちでやらなきゃいけないことになったのが、地味に大変で早くも親のありがたみを知ることとなった。
そんなこんなでバタバタしながらも片付けも終わり、晃が、
「早く早く!」
と呼ぶ。
間に合った。
ベッドに入り、二人でこう言った。
「23時に明かりを消して」
ふふっと笑いながら明かりを消す。
23時になる。
そしてお互い見つめながらこう言った。
「楽しもう」
動機は不純だった。
大学も同じところに行きたい、ルームシェアしたい。本当に理由はこれだけしかなかった。
だってルームシェアという大義名分のもと同棲を勝ち取りたいじゃないか。
それしか頭にない上、なんの目標も目的もなく、将来の夢もぼんやりしすぎていて、現実という眼鏡をかけてもやる気の度が合わないのか、全く見えていない。
こんな理由で大学を決めることやルームシェアを承諾してもらえるのか、一か八か双方の親に集まってもらい、晃と二人で説得することにした。
母親たちは、
「ここまで仲良いと驚くより呆れるわ」
と言われ、父親たちには、
「やりたいことができる大学がいいと思うぞ」
と言われた。
「一人暮らししたいと言うのならわかるけどルームシェアって…今の子ってそういうものなの?」
双方の親たちがどうしたものかと思い倦ねている。
兄貴は、
「だったら、俺の時みたいに学費が安い国公立に受かったらOKっていうのはどうよ」
と自分の時と同じ条件を提案した。
ん?兄貴?なんで兄貴がここにいる?
「受験と一人暮らしのノウハウを教えろってさ」
「広夢の時はだいぶ楽させてもらったしな。学費免除とまではさすがに言わないが国公立なら一人暮らしでもルームシェアでもできるんじゃないか?」
と俺の父さんが言う。
兄貴がいい前例を作ってくれたおかげでイメージしやすい俺の両親が晃の両親を説得し始めた。いい前例なのだが頭の出来が並の俺たちにはかなりハードルが高い。
それでもそれを叶えるために二人して死に物狂いで勉強し、なんとか合格することができた。
と言いたいところだが、兄貴のようにはいかないのが俺と晃らしく能力の違いをまざまざと示す結果になった。
普通に国公立は落ち、私大に合格した。
この結果に両親たちは、
「まあ広夢のように全てうまくいくのが当たり前と思っちゃダメよね~」
とさも落ちるのがわかっていたかのような口ぶりだ。
晃の親は、
「私大でも合格できて良かったと思うぞ、頑張ったな」
と労ってくれた。
恵茉ちゃんも、
「お兄ちゃんと歩夢くん、えらいね!おめでとう!」
と頭を撫で撫でしてくれる。本当かわいい。
兄貴は、
「だろうね」
と一言。腹立つ。
本当は俺と晃に合格祝いを置いていってくれてた。
何回か登山を我慢して工面した金らしい、ありがとう。
こうして無事合格と最初から反対はしていなかったらしいルームシェアを認めてもらい、学校に近い2LDKのアパートを見つけ手続きをした。
俺も晃もこれからの生活に浮かれていたが、一つだけ心を曇らせていた。恵茉ちゃんだ。
「なんでお兄ちゃん家出ていっちゃうの?やだあー!」
「歩夢くんが恵茉の家に住めばいいでしょ?
恵茉とお兄ちゃんと歩夢くんの3人一緒でいいでしょ!」
と大泣きされた。
俺も晃も恵茉ちゃんには滅法弱いから、まさかここで心折れそうになるとは思わなかったが、しょっちゅう帰ると約束し、泣く恵茉ちゃんをどうにか納得させた。
引っ越しには兄貴も手伝いに来てくれて、テキパキと俺たちに指示を出し、予定より早く終わらせることができた。
帰り際、
「合鍵くれよ、俺も住む」
とほざいていて、晃が本当に渡しそうになっていたのをすんでの所で止めた。
危なっ!
こいつの警戒心のなさはなんとかしないといけない。
引っ越しも終わり、なんとか新生活と呼べるくらいには整ったと思う。
「晃、俺やりたいことがあるんだけど」
「あ、俺もある!」
「もしかして同じことか?」
「そうかも」
晃が耳打ちする。
やっぱりそうだった。二人で笑い、実行することにした。
飯を外で済ませ、風呂に入るが実家だと当たり前に母さんがやってくれていたことが、全部自分たちでやらなきゃいけないことになったのが、地味に大変で早くも親のありがたみを知ることとなった。
そんなこんなでバタバタしながらも片付けも終わり、晃が、
「早く早く!」
と呼ぶ。
間に合った。
ベッドに入り、二人でこう言った。
「23時に明かりを消して」
ふふっと笑いながら明かりを消す。
23時になる。
そしてお互い見つめながらこう言った。
「楽しもう」
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