霧晴れる時、君は

秋臣

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一目惚れ

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「今日は?」
3階の窓から声が降ってくる。
見なくてもわかる、みなとくんだ。
ほら、やっばりそうだ、こっち見て手振ってる。
「大丈夫!」
そう答えるとにっこり手を振って窓から見えなくなった。

「相変わらず仲良いな」
わたるが呆れ気味に言う。
「うん」
「全然照れとか恥じらいとかないのが凄いよ、お前も香坂こうさか先輩も」
春樹はるきも同意する。
「そうかな?普通だと思ってるからわかんない」
「男同士で付き合ってるのは普通じゃないんだわ。でもお前と香坂先輩のおかげでお前が言う普通に思えてきたから洗脳ってすごいよな」
「洗脳って言うな、隠してないってだけで大っぴらにしてるわけじゃないよ」
「してるわ、付き合い始める時にあれだけの騒ぎ起こしといてなに言ってんだ」
「まあ仲良いならそれに越したことはないよな」

本当は男同士が普通なんて思ってない。
隠してない、というより隠せないだし、今だって揶揄われたり冷やかされたりするのは嫌だ。



悠馬ゆうまと湊は恋人同士。
文化祭で使い古された王道の、女装・男装喫茶をやってアイドル風の衣装を着た悠馬に湊が一目惚れした。

「マジでタイプ、俺と付き合って!」
その場で湊が悠馬に告白し大騒ぎになった。
香坂 湊こうさかみなとは2年生、短髪でザ・雄といった感じの男らしい人。顔も結構カッコよくてモテるという話は聞いたことがある。
悠馬は戸惑いつつも、人前でそんなことを言われて顔が赤くなるのがわかった。

蓮見はすみくん、赤くなってる!」
「マジか!? 俺たち偏見ないぞ!」
とクラスのみんなが囃し立てる。
「いや……俺男なんで……」
と当たり前のことを言う悠馬に、
「マジで惚れた、俺と付き合ってください」
自分が言われてるわけでもないのに女子たちはキャーキャー言ってるし、男子たちも、
「かっこいい……」
と羨望の目を向ける。

「湊、いい加減しろって! 困らせるなよ、見せ物だろ、これじゃ。かわいそうだ」
と友達らしき人が嗜めるが、
「文化祭終わったら一緒に帰ろ。昇降口で待ってる」
と全く意に介さず、それだけ告げて行ってしまった。
春樹と渉は、
「すげえな、香坂先輩」
「帰るだけならいいんじゃね?」
と無責任なことを言ってる。

誰もが本気じゃないだろうと思っていたら本当に昇降口に香坂先輩はいた。
「あ! 蓮見くん」
春樹と渉が、
「マジだった……」
とびっくりしている。
いやいや、驚いてるのは俺だよと悠馬は挙動不審になる。

「一緒に帰ろ」

渉が小声で、
「一回だけだろ? 今日のところは一緒に帰れば?」
と言えば春樹も、
「そうだな、香坂先輩に恥かかせるのもな……」
ともっともらしいことを言う。
そんなこと言われたら断れなくなる。

「帰れる?」
「……はい」
成り行きで一緒に帰ることになってしまった。
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