霧晴れる時、君は

秋臣

文字の大きさ
103 / 107

一年後

しおりを挟む
一年後。


「晴れて良かったね!」
車の窓から景色を眺めて悠馬が嬉しそうにしてる。
今日は3月最初の土曜日。
あの日からもう一年経ったのか。
この一年の間に俺は大学生になり、悠馬は受験、そして晴れて大学合格、そして先日高校を卒業した。

卒業式はしれっと保護者席で参列した。
入口で悠馬のお母さんに会ったのでご一緒させてもらった。
「相変わらず仲がいいわね」
と言われちゃった。というか勝手に来ただけなんだけど……
高校生の悠馬を見られる最後の日だから見届けないとね。

「香坂先輩!」
声がする方を見ると坂井くんと水口くんが手を振ってる。その横には悠馬がいるが目を見開いて、なんでここにいる?って顔してる。来ちゃった。
ぷいっとそっぽを向いちゃったけど、ちっちゃく手を振ってくれたのを俺は見逃してないぞ。

式が始まる。
悠馬が高校生ではなくなる、知り合った高校を卒業する……感極まって序盤から涙が溢れる。
隣に座ってる悠馬のお母さんが笑いを堪えながら慰めてくれる。
結局ずっと泣きっぱなしだし、後輩たちに、
「香坂先輩ウケるw」
とか言われちゃうし、
先生たちには、
「お前なにしに来たんだ?」
と呆れられるし、
「湊くんが面白くて全然泣けなかったわよ」
と悠馬のお母さんに言われちゃうし、
ダメ押しに、
「泣きすぎ! 恥ずかしいからやめて!」
と悠馬に怒られた。

悠馬は俺の通う大学とは違う大学に通う。
同じ理系だし、あわよくば一緒の大学ならいいなと思っていなかったわけではない。
でも、
「この先ずっと同じ道を歩けるわけではないから、遅かれ早かれ違う場所で生きなきゃね」
と自分の歩みたい道を選択した。
その考え方は正論だけど寂しい。
俺はその寂しさにどうしても慣れなくて辛い。
「そのために『支えられる思い出』を作ったんでしょ?」
悠馬の方が大人だった。
地方とかではなかったのが唯一の救いだ。遠距離になったら耐えられない。
そう思うことで自分を慰めるしかなかった。

それから数日後が今日だ。
一年ぶりにあのホテルのスイートに泊まる。
今回は俺が全額持つことになっている。
そのあまりにも高額な料金にこれを昨年悠馬はやったのかと思うとその男気に改めて惚れ直す。しかも高校生で。
すげえ、俺の彼氏、すげえかっこいい!

そのためにバイトはかなり頑張った。
バイトは相変わらず浅野さんのところでやってる。
高校生、未成年の縛りがないとできることも増えるので、ヌードモデルとまではいかないが、なかなか際どいラインを浅野さんに求められるようにもなってきた。
あまりにも際どいと浅野さんと話し合って決める。モデルのくせにこれはちょっと……と苦言を呈しても浅野さんはちゃんと意見を聞いてくれる。その上で説得されることもあるけど、話し合いに応じてくれるのはありがたいと思ってる。
おまけにモデル名を公表しないでくれているのがなにより助かってる。様々な媒体で自分の姿を目にすることも増えたが、身バレはしていない。それは全部浅野さんの仕事で、モデル名は一切明らかにしないという方針と条件でOKなところでしか受けていないから。他のファッションモデルとかだとこうはいかないだろうから、浅野さんに声をかけてもらえてよかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...