いきたがり

秋臣

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二人の男

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橋の向こう側から一人の男性…らしき人が歩いてくる。遠くて人間であろうことしかわからないが 背格好からすると男性だろう。こんな夜中にこんな山合いにある橋に何の用だ。
不審者か?
俺も向こうからしたら同じか。
まあそのうちすれ違うだろうし、不審者なら別にそれでもいいか。
目的が果たせればそれでいい。


向こう側から誰かが歩いてきている。
見えてはいけないものではないと思う…思いたい。ぼんやりとした姿がだんだん明確になる。ちゃんと歩行している。それではなかったことに安堵するが、本物の人間の方が怖いことに今気づく。あんた、ここでなにしてる?


橋の両側から歩いてきた男二人は真ん中あたりですれ違う。
はずだった。
二人の男はすれ違いざまに向きを90度変え、橋の欄干に手をかける。

は?
え?

橋についてる外灯で薄ぼんやり見える顔が驚いてる。

「なんですか?」
「いや、なんですか?」

お互い欄干を掴んだまま見ず知らずの人にここにいる理由、欄干に手をかけてる理由を尋ねる。

同じか!
察してしまった二人。
そう、この男たちは死ぬためにここに来たのだった。

「もしかして死のうとしてますか?」

思わず声をかけてしまった。

「あなたもですか?」

どうして今日?
どうしてこの時間?
どうしてここ?
待ち合わせかよ。



互いに場所は譲らんと欄干に手をかけたまま牽制し合う。

「せっかく今日こそはと決心してきたのに台無しです。一人で逝きたかった」
「こっちのセリフです。私の覚悟を返してください」

自殺場所を巡って火花が散るとは誰が想像できただろうか。

……… 

「譲ってくれませんか?」低く出てみる。

………

「譲る道理がないんですが?」なめられるな。

くそ!
どちらも一歩も譲らず時間だけが過ぎていく。
冬に入り、だいぶ気温も下がり、死んでもすぐには腐らないでいられるだろう。
なんなら雪なんか降ってくれると雰囲気出ていいかもしれない。
最後くらいは自力で華々しく散ってやる。
そう意気込んできたのに、なんだこれは。
もはや我慢比べ、こんな事しにきたんじゃないんだ、死ぬためにきたのに根比べしてる不毛に気づけ!
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