いきたがり

秋臣

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譲らない二人

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欄干を持つ手が氷のように冷たい。
もう手だけ先に死んでるのかもしれない。
もしかして欄干にくっついてしまったのではないかと思い、手を離してみる。
あ、凍りついてなかった…と思ったその隙に
そいつが抜けがけしようと足を欄干にかける。

「おい、お前!卑怯だぞ!お前だけ死ぬ気かよ!」
「うるせえ!お前だけってなんだよ!」

ん?あれ?一緒に死ねばいいんじゃないか?

「なあ、お前自殺しに来たんだよな?」
「それ以外にこんなところに何の用がある」
「だよな」
「なんだよ」
「同じ日に同じ時間に同じ場所に偶然居合わせたのも何かの縁だ。だったら一緒に死ぬのも悪くないと思わないか?」
彼はどう出るか。
「……」
「どうだろうか」ネゴシエーターの気分だ。

「ダメだ」
なんでだよ
「俺らが二人で死んだら死体が発見された時に『同性カップルが周囲の理解を得られず思い悩んで非業の死』なんて見出しがつけられて面白おかしく報道される。
そこからジェンダー云々の論争に発展して、デモが起きて、法改正されて、国を動かすことになるんだぞ!」

頭のネジ外れてんのか?
お前が発展させすぎなんだよ、バカか?
なにが国を動かすだ、体動かして欄干乗り越えればいいだけの話だろうがよ!

もういい、誘った俺がバカだった。
「俺はもう逝くから」
と足をかける。
「いや待て!俺が先だ」
「俺が先にここに来たんだろ?」
「俺だろ?」
「お前何歳だ?」
「38」
「俺42。年功序列だな、お先!」
「待て!後進に道を譲るもんだろうが!」
「それは生きてる時の話だろ?」
「だったら年功序列もそうだろうよ!」
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