いきたがり

秋臣

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麻薬

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伊央くんと書店で別れて俺は店へ向かった。
まだあれがなんだったのかよく分からない。

呆けている俺に綺羅きらくんと愛斗くんが、
「八雲さんどうしたの?」
と顔を覗き込む。
人懐っこい顔で俺を見てる。

「伊央くんってどんな子?」
二人に聞いてみた。
「伊央? なに今更? どんな子って見りゃ分かるでしょ? ハンパない美形」
と愛斗くんが言えば、綺羅くんも、
「この店、自分で言うのもなんだけどさ、相当顔面レベル高いと思うんだよね。その中でも飛び抜けてるのが伊央かな」
と言う。
「接客力とかトータル的なものはNo. 1の綺羅なんだけど、集客力は伊央じゃねえかな」
と愛斗くんは分析する。
綺羅くんが、
「伊央のためになにかしたい、そう思っちゃうんだよな。あいつ『お金は大事に使って』なんて客に言うから貢いでる感覚が無くなって、もはや責務みたいになっちゃってんの。本人は全くの無自覚だし客もそう感じてない。
ホストに貢ぐってそういうことだけど伊央のは違う、お布施に近いかな。
貢ぐは見返りを求めるけど、お布施はそうすることで自分の徳を積むというか。
伊央って感覚的には弟とか息子みたいじゃん? でもやってることは教祖だから。
合法の麻薬だよ。犯罪性はないけど中毒性が桁違い、一度嵌ったらもう無理。堕ちるところまで堕ちる、それが伊央。あれは敵わない」
No. 1の綺羅くんをもってしてもここまで言わしめる伊央くんとは何者なんだ。



「八雲さん、初めてだった?」
三木さんに今日のことを話した。
「初めてと言いますと?」
「あれ、毎回見られるものではないんだけどね、伊央の魔性とでもいうのかな。いきなり出るんだよね」
よくわからない。

「色が変わったように見えたでしょ? それよ。突然変えるんだよ、纏ってる空気や目の色やオーラまでも。それが本人は全く気づいてなくて完全な無自覚でやってるから恐ろしいよね。あんなの出されたら俺でも無理かもな」
確かに一瞬で色が変わった、空気が変わった。
「綺羅くんが『伊央は合法の麻薬』って言ってました」
「あははは! さすが綺羅! そうね、麻薬ね。あれを一度食らったら、もう戻れないだろうね。伊央を雇ったのはそこも理由かな。
あれを纏えるやつに俺は伊央以外出会ったことがない」
「普段の伊央くんとあまりにも違いすぎて戸惑いました」
「だろうね、でもどちらが本当の伊央なんだか、そこは俺にも分からないな」
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