好きを教えて

秋臣

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別れ

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頼は俺の父親じゃない。
俺のお母さんの弟、つまり叔父だ。
俺のお父さんとお母さんは俺が赤ちゃんの頃に離婚して、お母さんが一人で育ててくれた。
頼は小さい頃からよく一緒に遊んでくれて、いろんなところに俺を連れて行く。お母さんが仕事で忙しい時には泊まって行くし、運動会や参観には毎回来てくれる。
いつもずっと一緒にいてくれた。

俺のために頑張ってたお母さんは俺が小学生になってすぐ病気で死んだ。
お母さんが入院する前に買ってくれた真新しいランドセルを病室で背負って見せたら、お母さんは泣いて喜んだ。
「かっこいいよ、才」
って親指立てて笑ってた。


お葬式ではみんな泣いてた。
おじいちゃんやおばあちゃん、黒い服を着た知らない大人の人たちがたくさん泣いてた。
それを俺は見てた。
ただじっと見てた。
涙は出なかった、だってかっこいいって言ったもん。
お母さん、俺のことかっこいいって言った。
言ったもん。

その日もお母さんが買ってくれたランドセルを背負っていた。
学校じゃないのに背負ってきた。
お母さんに見せたかったから。

お母さん、見えた?

よく晴れた真っ青な空に白い煙がたなびく。
俺は大きな窓の近くに座ってそれをずっと見ていた。

「才」
頼が隣に座る。
「暑いな」
そう言って黒いネクタイを緩める。
「なあ」
「……」
「才ってなんで『才』って名前か知ってる?」
「……てんさいになるようにって、おかあさんいってた」
「ふっ」
「?」
「ふっ……ふはは!」
「そういってたもん!」
「あのな、お前が生まれる前にお父さんとお母さん二人で動物園に行ったんだって」
「……」
「でな、いろんな動物見たんだけど、サイの所に行ったらお前めちゃくちゃお腹蹴ったんだってw」
「……」
「この子サイが好きなんだ!って思って『才』にしたんだってさw」
「……サイ」
「そう、サイw」
「おかあさん、そんなこといってなかった……」
「あともう一つ」
「?」
「これは生まれてからの話だけどな、
『この子は愛される才能があると思うんだよね! だから才で間違ってない!』って自信満々に言ってた」
「……」
「『誰よりも私に愛されてるし!』って」
「……」

「なあ、才、ちょっとだけ俺とかっこ悪くならねえか?」
「え?」
「ランドセル、前に背負ってみな」
言われるがまま、前に背負う。
頼はランドセルを開けるとそのまま才の頭に冠せを乗せる、視界が遮られる。
「え? なに?」
「こうすればお母さんに見られないだろ?」
「?」
被せの下から頼を見る。
「才が泣いてくれないと俺も泣けない。でも我慢の限界かも……」
頼がポロッと涙をこぼす。
それにつられるように才の目から涙が溢れる。
泣きたくないのに溢れて止まらない、どうやって止めたらいいの?
頼が後ろから抱きしめてくれる。
「お母さんに泣いてんの見られちゃうから才が隠してくれ」

俺はランドセルの冠せの下でお母さんに見られないようにかっこ悪く泣いた。


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