好きを教えて

秋臣

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戦線離脱

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16時すぎ。
まだバーが開くには早い時間。
しかしドアは開いていた。
そのドアを開け、店内に入る。
外より暗くて、ひと足先に夜になったみたいだ。

カウンターの奥に京がいた。


「京さんが好き」
「俺が京さんにキスした」


才の言葉が頭の中で渦巻いている。
落ち着け、抑えろ。

「開店前に悪い」
「いや、構わない」
「……」
「……」
「はっきりさせないと俺はお前を殴り殺してしまうから正直に答えてくれないか」
「……わかった」

「才に手を出したのは京か?」
「違う」
「才からか?」
「そうだ」
「拒否しなかったのか?」
「したよ、抵抗した」

「才はお前を好きだと言った、才に言われたか?」
「ああ」
「京はなんて答えた?」
「正直どう答えればいいのかわからなかった」
「そうじゃない、お前の気持ちだ」
「お前……それ俺に聞くのかよ、知ってて聞いてるなら酷だろ」
「答えてくれ」
「……才にはなにも言わなかった、俺はお前が好きだ」
「……」
「もう俺の言葉で才を傷つけるのは嫌だ
、だからどうしても言えなかった」

「……キスは才からか?」
「そうだ」

「才のことを受け入れる気はないんだな?」
「今はない」
「どういう意味だ」
「人の気持ちなんてどう変わるか、いつ変わるかなんてわからない。
俺は才をいい子だと思ってる。
今はそれだけなんだ、答えになってないか?」

「この先変わる可能性があるのか?」
「そんなこと誰にもわからないだろ?」
「才を苦しめたくない」
「才よりお前の気持ちを聞かせろ、そっちが先だ」
「……」
「俺はお前が好きだ、ずっと変わらない。頼、俺とやり直してくれ」
「俺は……」
あの日昂ったのは本当だ、でもそれは愛情なのか……
俺は京の気持ちを利用しただけなんじゃないか……
そんな俺に京を責める権利などないのではないか。


「京、俺は才を引き取った時に才と仕事以外のものを捨てた。才と一緒にいたかったし、才のことだけを考えていたかった。
優しい父親がいるにも関わらず俺を選んでくれた才と、辛い決断をさせてしまったお義兄さん、大好きな才の成長を見守ることが叶わなかった姉ちゃんに対して、俺ができることを全力でしなきゃ、才を必ず幸せにしないといけないってずっと思ってる。
それが今も、これからも、多分死ぬまで変わらない、変わりたくない。
だからそこに京が入る余地がない。
京だけじゃない、誰もだ」

「頑なだな、でも俺も譲らない。
なにかチャンスがあれば有効に使わせてもらう、この前みたいな」
「……セックス自体、12年ぶりだったよ」
「嘘だろ!? お前マジ?」
「……本当に要らなかったんだ、全く欲しなかった。才が全てでそれが楽しくて幸せなんだ」

ふうと京がため息をつく。
「平行線だな」
「平行線……というより俺は戦線離脱なんだよ」
「そろそろ復帰してもいいと思うぞ、
体は復帰したし」
「言うなよ……」
「あはははは!」

「そう簡単にはいかないよな、俺もお前も才も。
もしお前が才に遠慮して俺を才に譲ったりなんかしてみろ、それこそ才を傷つけることになるぞ、それだけはするなよ」
「……」
「俺が向いてるのは頼だってことは才は百も承知なんだよ、それでも想ってくれてる。
そこに嘘や詭弁は必要ないだろ?
真っ直ぐぶつかってきた才に失礼だ」 

京はタバコに火をつける。
「あのな、お前がここに来る前、才から電話があった」
「才から?」
「そう。あいつ俺にこう言ったよ。
『頼が一番なの、どうやっても一番なの、
だからどうしても京さんは二番になっちゃう。
どうやってもダメなの。
だって頼はずっと一緒にいてくれたんだもん、頼を一人にできない、頼は寂しがりなんだ。
比べるなんてできないよ。
ずっと一番なんだ。
それでも好きでいていい?
二番目だけど好きでいていい?
キスしたいって思うのは京さんだけなんだ』
泣きながら一生懸命伝えてくれた」
「……」
「俺はどうやっても二番だとさw
それを正直に言える才が凄えと思うし、好きだなと思うよ」
「え!?」
「才は好きだよ、お前とは違う種類の好き。
今はこんなあやふやな関係でもいいんじゃねえか?」
「いやダメだ、そんなはっきりしない気持ちで才に近づくな」
「一番あやふやではっきりしねえのは、頼、お前だよ! はっきりしてるのは才への無償の愛だけだろ」
「へへ」
「褒めてねえんだわ」

「ちゃんと才と話をするよ、きちんと伝える。
もし付き合うことになったらその時は報告するから」
「おいっ!」
「なんだよ」
「才と付き合うなら俺の審査を通過しないとダメだ」
「うわあ、めんどくさ……」 
「まず、相手がお前って時点で失格だけどな」
「なんでだよ」
「お古はちょっとな」
「ふっ それはちょっとわかる」

「なにがあっても才より先に死ぬな。
絶対に才を一人にするな。
それができないなら手を引け」
「重っ!」
「俺の才への愛を見くびるなよ」
「こっわ!w」
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