43 / 66
誕生日
しおりを挟む
「才、自分で迎えに行くか? それとも迎えたい?」
あーどっちも捨てがたい!
うー……
「迎えたい!」
「だと思った」
「だったら聞くなよ」
「ケーキ受け取ってから帰るな」
「わかった」
今日は俺の二十歳の誕生日。
土曜日で本当は店を開けないといけないんだけど、頼は店を休みにしてこの日に備えていた。
頼は車のキーを手にすると、
「行ってくる」
と家を出た。
おじいちゃんとおばあちゃんを迎えに行くのだ。
こっちに来てくれるのは久しぶりだから楽しみ。
ソワソワしながら待つ。
ソワソワしすぎて落ち着こうと思ってソファーに座ったらウトウトしちゃって寝落ちしてた。
「帰ったぞー、才ー? あれ?」
頼が、
「お前寝てたのか?」
と呆れてる。
「寝てない、寝てない!」
「よだれ拭け」
あ……べちゃべちゃになってる……
「才ちゃん」
「おばあちゃん!」
「お誕生日おめでとう!」
「来てくれてありがとう」
「才、おめでとう」
「おじいちゃん、足大丈夫?」
「おう、これあるからな」
と杖を見せる。
おじいちゃんは少し足が悪い。
歩けなくなるのは嫌だと杖を持って毎日歩いてるっておばあちゃん言ってた。
普通に生活するのには支障ないみたいで安心した。
「今日は才のコーヒー飲めるのか?」
「うん、食事の後に俺が淹れるよ」
「そりゃあ楽しみだ!」
「リリィの店長さんがおめでとうって言ってたぞ」
そう言って頼がケーキの箱を掲げる。
リリィは頼と暮らし始めてから誕生日やクリスマスにケーキを買ってるケーキ屋だ。
7歳の誕生日に頼とケーキを買いに行き、
「どれでも好きなの選んでいいぞ」
と言われたが、苺のホールケーキとチョコレートのホールケーキで迷って決められなくて悩んでいたら、リリィの店長さんが、
「ボクはなにを悩んでるの?」
と聞いてきた。
俺は、
「チョコレートのケーキにも苺が欲しい」
と言ったら、
「なるほどねえ」
と頷き、チョコレートのホールケーキの上にツヤツヤとコーティングされた苺をたくさん乗せてくれた。
「これでいい?」
「うん!」
頼は、
「無理言って申し訳ありません」
と頭を下げていたが、
「目から鱗だったよ。チョコレートにも苺欲しいよなあ、気づかなかったよ、ありがとうね、ボク」
と笑ってくれた。
それからリリィのホールケーキはどのケーキも苺の有無を選べるようになった。
今日のケーキもチョコレートのホールケーキに苺ありだ。
ピンポーン。
あ、来た。
「才、出て」
「うん」
ドアを開ける。
ドアの前にはお父さんがいた。
「才、誕生日おめでとう。呼んでくれてありがとう」
そう言ってもう涙ぐんでる。
相変わらず涙脆い。
「来てくれてありがとう。お父さん、泣くの早いってば」
「うん、そうだね……」
お父さんは家に入ると、
「ご無沙汰しております」
おじいちゃんとおばあちゃんに深々と頭を下げていた。
「弦くん、元気そうでなりよりだ」
「会えて嬉しいわ」
そう二人に言われてお父さんはまた泣き出した。
頼にも、
「頼くん、ありがとう」
と涙ながらに頭を下げていたが、
「お義兄さんが泣いてたら才に笑われますよ」
と揶揄っていた。
6人で食事を取る。
お母さんの写真をテーブルに置く。
お母さんはいつも笑ってる。
テーブルには頼が作ったもの、マーノで調達してきたもの、いろいろある。
どれも美味しい。
「頼、料理上手くなったな」
とおじいちゃんに言われ、頼はちょっと嬉しそう。
おじいちゃん、褒めてるそれ、マーノの料理だよ。
気づいたおばあちゃんとクスクス笑っちゃった。
ご飯のあと、少ししてからケーキを用意する。
今だに頼は全力でハッピーバースデーを歌ってくれる。
あまりにでかい声で歌うので、こっちが恥ずかしいからやめてと言うのだけど、お母さんに聞こえるように歌ってると言われてからは俺も一緒に歌ってる。
今日はおじいちゃんもおばあちゃんもお父さんも歌ってくれた。
「ハッピーバースデーってこんな大声で歌うものだっけ?」
とお父さんが恥ずかしがってた。
あーどっちも捨てがたい!
うー……
「迎えたい!」
「だと思った」
「だったら聞くなよ」
「ケーキ受け取ってから帰るな」
「わかった」
今日は俺の二十歳の誕生日。
土曜日で本当は店を開けないといけないんだけど、頼は店を休みにしてこの日に備えていた。
頼は車のキーを手にすると、
「行ってくる」
と家を出た。
おじいちゃんとおばあちゃんを迎えに行くのだ。
こっちに来てくれるのは久しぶりだから楽しみ。
ソワソワしながら待つ。
ソワソワしすぎて落ち着こうと思ってソファーに座ったらウトウトしちゃって寝落ちしてた。
「帰ったぞー、才ー? あれ?」
頼が、
「お前寝てたのか?」
と呆れてる。
「寝てない、寝てない!」
「よだれ拭け」
あ……べちゃべちゃになってる……
「才ちゃん」
「おばあちゃん!」
「お誕生日おめでとう!」
「来てくれてありがとう」
「才、おめでとう」
「おじいちゃん、足大丈夫?」
「おう、これあるからな」
と杖を見せる。
おじいちゃんは少し足が悪い。
歩けなくなるのは嫌だと杖を持って毎日歩いてるっておばあちゃん言ってた。
普通に生活するのには支障ないみたいで安心した。
「今日は才のコーヒー飲めるのか?」
「うん、食事の後に俺が淹れるよ」
「そりゃあ楽しみだ!」
「リリィの店長さんがおめでとうって言ってたぞ」
そう言って頼がケーキの箱を掲げる。
リリィは頼と暮らし始めてから誕生日やクリスマスにケーキを買ってるケーキ屋だ。
7歳の誕生日に頼とケーキを買いに行き、
「どれでも好きなの選んでいいぞ」
と言われたが、苺のホールケーキとチョコレートのホールケーキで迷って決められなくて悩んでいたら、リリィの店長さんが、
「ボクはなにを悩んでるの?」
と聞いてきた。
俺は、
「チョコレートのケーキにも苺が欲しい」
と言ったら、
「なるほどねえ」
と頷き、チョコレートのホールケーキの上にツヤツヤとコーティングされた苺をたくさん乗せてくれた。
「これでいい?」
「うん!」
頼は、
「無理言って申し訳ありません」
と頭を下げていたが、
「目から鱗だったよ。チョコレートにも苺欲しいよなあ、気づかなかったよ、ありがとうね、ボク」
と笑ってくれた。
それからリリィのホールケーキはどのケーキも苺の有無を選べるようになった。
今日のケーキもチョコレートのホールケーキに苺ありだ。
ピンポーン。
あ、来た。
「才、出て」
「うん」
ドアを開ける。
ドアの前にはお父さんがいた。
「才、誕生日おめでとう。呼んでくれてありがとう」
そう言ってもう涙ぐんでる。
相変わらず涙脆い。
「来てくれてありがとう。お父さん、泣くの早いってば」
「うん、そうだね……」
お父さんは家に入ると、
「ご無沙汰しております」
おじいちゃんとおばあちゃんに深々と頭を下げていた。
「弦くん、元気そうでなりよりだ」
「会えて嬉しいわ」
そう二人に言われてお父さんはまた泣き出した。
頼にも、
「頼くん、ありがとう」
と涙ながらに頭を下げていたが、
「お義兄さんが泣いてたら才に笑われますよ」
と揶揄っていた。
6人で食事を取る。
お母さんの写真をテーブルに置く。
お母さんはいつも笑ってる。
テーブルには頼が作ったもの、マーノで調達してきたもの、いろいろある。
どれも美味しい。
「頼、料理上手くなったな」
とおじいちゃんに言われ、頼はちょっと嬉しそう。
おじいちゃん、褒めてるそれ、マーノの料理だよ。
気づいたおばあちゃんとクスクス笑っちゃった。
ご飯のあと、少ししてからケーキを用意する。
今だに頼は全力でハッピーバースデーを歌ってくれる。
あまりにでかい声で歌うので、こっちが恥ずかしいからやめてと言うのだけど、お母さんに聞こえるように歌ってると言われてからは俺も一緒に歌ってる。
今日はおじいちゃんもおばあちゃんもお父さんも歌ってくれた。
「ハッピーバースデーってこんな大声で歌うものだっけ?」
とお父さんが恥ずかしがってた。
11
あなたにおすすめの小説
神様の成れの果て
囀
BL
極道一家・井戸口組の次男坊である墨怜は、世話係の猿喰綺人に密かに思いを寄せていた。
しかし、彼には愛人がいるという噂や、組長でもあり兄でもある鴉と恋人関係にあるという噂が絶えない。
この恋を断ち切ろうとした矢先、同級生の手塚練太郎から突然の告白を受ける。
墨怜はこれをきっかけに気持ちを整理しようと交際を了承するが、
その日を境に、彼の日常は“静かに狂い始めた”——。
※ ◇は場面切り替え、◆はキャラ視点切り替えになっております。
この作品はカクヨムにも投稿しております。
〈登場人物〉
井戸口(いどぐち) 墨怜(すみれ)
極道井戸口組の次男坊
引っ込み思案
世話係である猿喰に密かに想いを寄せている
猿喰(さるばみ) 綺人(あやと)
井戸口組の組員で墨怜の世話係
眉目秀麗でミステリアス
手塚(てづか) 練太郎(れんたろう)
墨怜の同級生 真面目で正義感がある
空手部に所属している
泰泉寺(しんせんじ) 霧雨(きりさめ)
墨怜の同級生 飄々としている
関西から上京して、現在は母と姉と三人暮らし
井戸口 鴉(からす)
墨怜の兄で井戸口組の組長を務めている
優しい
Take On Me 2
マン太
BL
大和と岳。二人の新たな生活が始まった三月末。新たな出会いもあり、色々ありながらも、賑やかな日々が過ぎていく。
そんな岳の元に、一本の電話が。それは、昔世話になったヤクザの古山からの呼び出しの電話だった。
岳は仕方なく会うことにするが…。
※絡みの表現は控え目です。
※「エブリスタ」、「小説家になろう」にも投稿しています。
今日もBL営業カフェで働いています!?
卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とスタッフ達とBL営業をして腐女子や腐男子たまに普通のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ
※ 不定期更新です。
インテリヤクザは子守りができない
タタミ
BL
とある事件で大学を中退した初瀬岳は、極道の道へ進みわずか5年で兼城組の若頭にまで上り詰めていた。
冷酷非道なやり口で出世したものの不必要に凄惨な報復を繰り返した結果、組長から『人間味を学べ』という名目で組のシマで立ちんぼをしていた少年・皆木冬馬の教育を任されてしまう。
なんでも性接待で物事を進めようとするバカな冬馬を煙たがっていたが、小学生の頃に親に捨てられ字もろくに読めないとわかると、徐々に同情という名の情を抱くようになり……──
僕の彼氏は僕のことを好きじゃないⅠ/Ⅱ
MITARASI_
BL
I
彼氏に愛されているはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。
「好き」と言ってほしくて、でも返ってくるのは沈黙ばかり。
揺れる心を支えてくれたのは、ずっと隣にいた幼なじみだった――。
不器用な彼氏とのすれ違い、そして幼なじみの静かな想い。
すべてを失ったときに初めて気づく、本当に欲しかった温もりとは。
切なくて、やさしくて、最後には救いに包まれる救済BLストーリー。
Ⅱ
高校を卒業し、同じ大学へ進学した陸と颯馬。
別々の学部に進みながらも支え合い、やがて同棲を始めた二人は、通学の疲れや家事の分担といった小さな現実に向き合いながら、少しずつ【これから】を形にしていく。
未来の旅行を計画し、バイトを始め、日常を重ねていく日々。
恋人として選び合った関係は、穏やかに、けれど確かに深まっていく。
そんな中、陸の前に思いがけない再会をする。
過去と現在が交差するその瞬間が、二人の日常に小さな影を落としていく。
不安も、すれ違いも、言葉にできない想いも抱えながら。
それでも陸と颯馬は、互いの手を離さずに進もうとする。
高校編のその先を描く大学生活編。
選び続けることの意味を問いかける、二人の新たな物語。
続編執筆中
病弱の花
雨水林檎
BL
痩せた身体の病弱な青年遠野空音は資産家の男、藤篠清月に望まれて単身東京に向かうことになる。清月は彼をぜひ跡継ぎにしたいのだと言う。明らかに怪しい話に乗ったのは空音が引き取られた遠縁の家に住んでいたからだった。できそこないとも言えるほど、寝込んでばかりいる空音を彼らは厄介払いしたのだ。そして空音は清月の家で同居生活を始めることになる。そんな空音の願いは一つ、誰よりも痩せていることだった。誰もが眉をひそめるようなそんな願いを、清月は何故か肯定する……。
彼の想いはちょっと重い
なかあたま
BL
幼少期、心矢に「結婚してほしい」と告げられた優希は「お前が高校生になっても好きな人がいなかったら、考えてやらなくもない」と返事をした。
数年後、高校生になった心矢は優希へ結婚してほしいと申し出る。しかし、約束をすっかり忘れていた優希は二ヶ月だけ猶予をくれ、と告げる。
健全BL
年下×年上
表紙はhttps://www.pixiv.net/artworks/140379292様からお借りしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる