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幸せな時間
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頼がケーキを切り分けてる間に、俺はコーヒーを淹れる。
ちょっと緊張する。
「いつも通りで大丈夫だ」
と頼が言ってくれる。
丁寧に心を込めて淹れる。
「どうぞ」
コーヒーカップを置く。
「いい香りだね」
お父さんが反応する。
「うん、いい匂いだ」
おじいちゃんも嬉しそうにしてる。
「おばあちゃんにはこれね」
コーヒーが苦手なおばあちゃんにはアフォガートと紅茶にした。
ちょっとでもみんなと同じコーヒーに触れて欲しかったから。
それでもダメだった時の紅茶も淹れた。
「ごめんね、才ちゃん」
「なんで謝るの? おばあちゃん、それ食べてみて、それならコーヒー苦手でも大丈夫だと思うから」
エスプレッソマシンは持ってない。
ミチルのマスターに相談したらドリッパーでも近づけられると聞いて淹れ方を教えてもらった。
エスプレッソとバニラアイスの組み合わせをいろいろ試した。
エスプレッソが多すぎても少なすぎてもダメ。それに負けないバニラアイスはどれだ。
頼にも食べてもらってこれならという組み合わせを見つけた。
おばあちゃんが俺を信じて躊躇なく食べる。
すぐに、
「才ちゃん、これ美味しい! 初めて食べた、美味しい!」
「でしょ? よかったあ!」
「才、じいちゃん、コーヒー詳しくないからよくわからないけど、美味しいのはわかるよ、とっても美味しい」
「本当!?」
「うん、どこがどうって聞かれるとわからないけどじいちゃん好きだな」
「へへ」
お父さんは難しい顔してる。
「お父さんはどう?」
「僕は酸味のあるコーヒーも好きだから、このコーヒーはそれとは違うね」
「ごめん……」
「才、謝るのは違うよ。好みの問題だから正解はないんだよ」
マスターがいつも言ってる言葉だ。
「うん、マスターにいつも言われる」
「これはケーキの甘みに合わせて豆を決めた?」
「なんでわかるの?」
「わからないよ、才ならそうするかなと思っただけ」
そう言って笑ってる。
頼が、
「さすがお父さん」
と揶揄う。
「やめてよ、頼くん」
お父さん大照れ。
ケーキを食べているとおじいちゃんとおばあちゃんが、
「才、二十歳の誕生日おめでとう」
と改めて祝ってくれる。
照れちゃう。
「これ、じいちゃんとばあちゃんからプレゼント」
「開けてもいい?」
「もちろん」
ちょっと重い、なんだろう?
腕時計だった。
俺でも知ってるブランドだ。
「こんなにいいもの……いいの?」
「成人は18歳だけど、二十歳は全てのことに於いて大人になるから、本当の意味での成人だ。その記念だよ」
とおじいちゃんが笑う。
「ありがとう、大事にする」
「そういえば俺も二十歳の時に腕時計もらったな」
「頼の二十歳の時のこと思い出してね。それで腕時計にしたのよ」
おばあちゃんが懐かしそうに話す。
「お揃いではないけど、同じブランドのものにしたよ」
頼がにやっと笑う。
嬉しい、そういうの嬉しい。
お父さんが言い出しにくそうに、
「才、お父さん、今日はなにも持ってきてないんだけどね……」
と話出す。
「ううん、来てくれただけでいいから」
お父さん、また泣きそう。
「……才、お父さんにスーツを作らせてもらえないか?」
「え?」
「フォーマルで着るスーツとビジネススーツ、二着作らせて欲しいんだ」
「え、二つも?」
「ブラックスーツは基本だし、社会人になったらスーツを着る機会も増えるだろうしね」
それが高いということは想像できる。
「これからきっと必要になるから……ダメかな?」
おじいちゃんとおばあちゃんがにこにこ笑って頷いてる。
どうしたらいいんだろうと頼に助けを求めると、
「甘えさせてもらえ」
と言ってくれた。
「お父さん、いいの?」
「もうテーラーには話してあるんだ! 今度一緒に行ってくれるか?」
ふふっ
「うん、ありがとう、お父さん」
「うん……」
ほら、また泣いちゃった。
「3人の後だと霞むなあ……嫌だな」
「頼もくれるの?」
「当たり前だろ? ほら」
そう言いながら紙袋を手渡してくれる。
「やった! ありがとう、何?」
「開けてみろ」
「うん、なんだろう?」
リュックだった。
「今使ってるのだいぶくたびれてきちゃってるからな。お客さんにデザイナーさんがいて、その人に相談したら一緒に作るの手伝ってくれてさ。デザインはデザイナーの野田さんにお願いして、機能面は俺が要望したとおりにしてくれた。使いやすくなったと思うんだけどどう?」
「かっこいい!」
黒のコーデュラナイロンを使った贅沢なリュックだ。
ポケットがたくさんあって、パソコンも入る。
痒いところに手が届くとはこういうことを言うんだ。
さすが頼、俺の好みを熟知してる!
あれ? サイドポケットのところ……なんだこれ?
あ! 頼の店のロゴだ!
「バレた? こっそり入れちゃったw
まずかったかな?」
「全然! 頼が作ってくれた証拠みたいでいい!」
「喜んでくれて良かったよ」
「ありがとう、頼!」
楽しい時間だった。
俺のために家に来てくれて誕生日を祝ってくれた。
俺のために……
何度も誕生日は祝ってもらってきたけど、今日は格別。
「俺って幸せ者なのかもしれない」
と頼に言ったら、
「かも、じゃなくて幸せ者だ」
と笑ってた。
「本人にそう思ってもらえるなら、じいちゃんもばあちゃんもお父さんも俺も幸せだよ」
と頭をポンポンしてくれた。
「これももう最後かな」
と頼は言うけど、最後は嫌だな。
こういうところは大人になりたくない。
夕方、誕生日会はお開きとなった。
頼がお父さんとおじいちゃん、おばあちゃんを車で送る。
お父さんは遠慮してたが、
「たまにはいいじゃないですか」
と頼に押し切られた。
帰りは頼が一人で送る予定だったけど、俺も一緒に行くことにした。俺が運転する!
なんとなく、俺が送りたい、送らなきゃって思った。
たまに運転してるから大丈夫! 任せて!
3人が一瞬顔を曇らせたのは気のせいだ。
ちょっと緊張する。
「いつも通りで大丈夫だ」
と頼が言ってくれる。
丁寧に心を込めて淹れる。
「どうぞ」
コーヒーカップを置く。
「いい香りだね」
お父さんが反応する。
「うん、いい匂いだ」
おじいちゃんも嬉しそうにしてる。
「おばあちゃんにはこれね」
コーヒーが苦手なおばあちゃんにはアフォガートと紅茶にした。
ちょっとでもみんなと同じコーヒーに触れて欲しかったから。
それでもダメだった時の紅茶も淹れた。
「ごめんね、才ちゃん」
「なんで謝るの? おばあちゃん、それ食べてみて、それならコーヒー苦手でも大丈夫だと思うから」
エスプレッソマシンは持ってない。
ミチルのマスターに相談したらドリッパーでも近づけられると聞いて淹れ方を教えてもらった。
エスプレッソとバニラアイスの組み合わせをいろいろ試した。
エスプレッソが多すぎても少なすぎてもダメ。それに負けないバニラアイスはどれだ。
頼にも食べてもらってこれならという組み合わせを見つけた。
おばあちゃんが俺を信じて躊躇なく食べる。
すぐに、
「才ちゃん、これ美味しい! 初めて食べた、美味しい!」
「でしょ? よかったあ!」
「才、じいちゃん、コーヒー詳しくないからよくわからないけど、美味しいのはわかるよ、とっても美味しい」
「本当!?」
「うん、どこがどうって聞かれるとわからないけどじいちゃん好きだな」
「へへ」
お父さんは難しい顔してる。
「お父さんはどう?」
「僕は酸味のあるコーヒーも好きだから、このコーヒーはそれとは違うね」
「ごめん……」
「才、謝るのは違うよ。好みの問題だから正解はないんだよ」
マスターがいつも言ってる言葉だ。
「うん、マスターにいつも言われる」
「これはケーキの甘みに合わせて豆を決めた?」
「なんでわかるの?」
「わからないよ、才ならそうするかなと思っただけ」
そう言って笑ってる。
頼が、
「さすがお父さん」
と揶揄う。
「やめてよ、頼くん」
お父さん大照れ。
ケーキを食べているとおじいちゃんとおばあちゃんが、
「才、二十歳の誕生日おめでとう」
と改めて祝ってくれる。
照れちゃう。
「これ、じいちゃんとばあちゃんからプレゼント」
「開けてもいい?」
「もちろん」
ちょっと重い、なんだろう?
腕時計だった。
俺でも知ってるブランドだ。
「こんなにいいもの……いいの?」
「成人は18歳だけど、二十歳は全てのことに於いて大人になるから、本当の意味での成人だ。その記念だよ」
とおじいちゃんが笑う。
「ありがとう、大事にする」
「そういえば俺も二十歳の時に腕時計もらったな」
「頼の二十歳の時のこと思い出してね。それで腕時計にしたのよ」
おばあちゃんが懐かしそうに話す。
「お揃いではないけど、同じブランドのものにしたよ」
頼がにやっと笑う。
嬉しい、そういうの嬉しい。
お父さんが言い出しにくそうに、
「才、お父さん、今日はなにも持ってきてないんだけどね……」
と話出す。
「ううん、来てくれただけでいいから」
お父さん、また泣きそう。
「……才、お父さんにスーツを作らせてもらえないか?」
「え?」
「フォーマルで着るスーツとビジネススーツ、二着作らせて欲しいんだ」
「え、二つも?」
「ブラックスーツは基本だし、社会人になったらスーツを着る機会も増えるだろうしね」
それが高いということは想像できる。
「これからきっと必要になるから……ダメかな?」
おじいちゃんとおばあちゃんがにこにこ笑って頷いてる。
どうしたらいいんだろうと頼に助けを求めると、
「甘えさせてもらえ」
と言ってくれた。
「お父さん、いいの?」
「もうテーラーには話してあるんだ! 今度一緒に行ってくれるか?」
ふふっ
「うん、ありがとう、お父さん」
「うん……」
ほら、また泣いちゃった。
「3人の後だと霞むなあ……嫌だな」
「頼もくれるの?」
「当たり前だろ? ほら」
そう言いながら紙袋を手渡してくれる。
「やった! ありがとう、何?」
「開けてみろ」
「うん、なんだろう?」
リュックだった。
「今使ってるのだいぶくたびれてきちゃってるからな。お客さんにデザイナーさんがいて、その人に相談したら一緒に作るの手伝ってくれてさ。デザインはデザイナーの野田さんにお願いして、機能面は俺が要望したとおりにしてくれた。使いやすくなったと思うんだけどどう?」
「かっこいい!」
黒のコーデュラナイロンを使った贅沢なリュックだ。
ポケットがたくさんあって、パソコンも入る。
痒いところに手が届くとはこういうことを言うんだ。
さすが頼、俺の好みを熟知してる!
あれ? サイドポケットのところ……なんだこれ?
あ! 頼の店のロゴだ!
「バレた? こっそり入れちゃったw
まずかったかな?」
「全然! 頼が作ってくれた証拠みたいでいい!」
「喜んでくれて良かったよ」
「ありがとう、頼!」
楽しい時間だった。
俺のために家に来てくれて誕生日を祝ってくれた。
俺のために……
何度も誕生日は祝ってもらってきたけど、今日は格別。
「俺って幸せ者なのかもしれない」
と頼に言ったら、
「かも、じゃなくて幸せ者だ」
と笑ってた。
「本人にそう思ってもらえるなら、じいちゃんもばあちゃんもお父さんも俺も幸せだよ」
と頭をポンポンしてくれた。
「これももう最後かな」
と頼は言うけど、最後は嫌だな。
こういうところは大人になりたくない。
夕方、誕生日会はお開きとなった。
頼がお父さんとおじいちゃん、おばあちゃんを車で送る。
お父さんは遠慮してたが、
「たまにはいいじゃないですか」
と頼に押し切られた。
帰りは頼が一人で送る予定だったけど、俺も一緒に行くことにした。俺が運転する!
なんとなく、俺が送りたい、送らなきゃって思った。
たまに運転してるから大丈夫! 任せて!
3人が一瞬顔を曇らせたのは気のせいだ。
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