11 / 15
かくれんぼ
しおりを挟む
ここどこ?
ベッド?
見慣れた部屋、碧斗の部屋だ。
碧斗……碧斗! 起きあがろうとしたらベッドの下で寝ている碧斗がいた。
不意に涙が込み上げる。
帰ってこない碧斗が心配でアパートのドアの前で座り込んで待ってしまった。
なにかあったのかと心配だった。
こんなこと今までなかったから……
帰ってきた碧斗に起こされて、ふっと力が抜けた。姿を見て安心した。
抱きしめて碧斗の存在を確かめたかった。
その時、ボディソープとシャンプーの向こう側にあるはずの碧斗の匂いがなかった。
他の匂いがいた。
女だと直感した。
碧斗が女を抱いた。
それを悟った瞬間、碧斗を失う恐怖が現実となって襲って来た。
怖い。
嫌だ。
恐怖に支配された俺は壊れた。
助けて欲しいのに、手を伸ばしても、
どんなに叫んでも碧斗は見ているだけ。
それどころか俺を放って後ろを向いて歩き出してしまった。
助けて……
俺を見つけて……
怖い……
助けて……
急に昔のことがシンクロした。
子どもの頃みんなでかくれんぼをした。
俺は隠れるのが得意だった。
その日も神社の大きな木のうろに隠れた。
うろは危ないからダメだと大人に言われていたけど、体が小さかった俺が隠れるには最適だった。
ここなら見つからないとほくそ笑んだ。
その笑みは次第に消えた。
いつまで経っても見つけに来てくれない。
「珀ちゃーん、どこー?」
というみんなの探す声もだんだん聞こえなくなっていた。
木々が騒めく。
怖くなって来た。
ここから出よう、そう思っても体が動かなかった。
恐怖で体が動かない。
どうして見つけてくれないの?
どうして助けてくれないの?
うろに隠れたから?
言うこと聞かないから罰が当たったの?
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……
動けなかったが泣くことはできた。
泣くしかできなかった。
それでも俺の声は誰にも届かなかった。
その時、
「その声、珀次か?」
と、うろを覗く顔があった。
不意に名前を呼ばれて涙が止まる。
「由岐兄ちゃん?」
「お前、こんなところでなにしてんだ?
ほら、出てこい」
由岐兄ちゃんが手を差し伸べてくれる。
俺はその手を掴んだ。
「ごめん、この子近所の子なんだ。送って行くから今日はごめん」
「ううん、気にしないで、またね由岐くん」
と女の人が手を振って帰って行った。
由岐兄ちゃんは6歳年上の中学生。
家が近所でよく構ってくれる優しい兄ちゃん。
「珀次、お前なにしてんだ?」
涙でぐちゃぐちゃの俺の顔をハンカチでゴシゴシ拭く。
「かくれんぼしてたのに見つけてくれない……」
ふっ
「お前、隠れるの上手いからなあ」
「うん」
「うん、じゃねえよwうろには隠れるなって言われてるだろ? 崩れることもあるんだぞ」
「ごめんなさい……」
「送ってってやる、一緒に帰ろ」
「うん」
「珀次」
「ん?」
「怖かったか?」
「うん……」
「そうだよな、見つけてもらえないのって怖いんだよな。一人ぼっちでもう誰にも見つけてもらえないんじゃないかって」
「うん……」
「そういう時は『助けて』『ここにいる!』って言え」
「でもかくれんぼだよ?」
「見つけてもらえないのと、かくれんぼの鬼になるのとどっちが怖い?」
「……見つけてもらえないの」
「だろ? だったら『助けて』って言え。
『ここにいるよ!』って出てこい。今度は珀次がみんなを見つけてやれ」
「うん」
「うろはダメだからな」
「……お父さんに言う?」
「泣いてたことだけ言う」
と由岐兄ちゃんが笑う。
「言わないで!」
あはははは!
「由岐兄ちゃん」
「なに?」
「さっきの女の人誰?」
「ん?」
「一緒にいた女の人」
「んー……」
「なんであんなところに二人でいたの?」
「んんー……なあ、珀次」
「なに?」
「うろにいたことも、泣いてたことも
内緒にしてやる」
「え?」
「だから珀次も黙ってろ」
「由岐兄ちゃんが女の人とあそこにいたこと?」
「そう」
「わかった」
「約束な」
「うん」
本当は見たんだ。
由岐兄ちゃんがあの女の人とチューしてた。
由岐兄ちゃんの知らない部分を見て、それが怖くて余計泣いたんだ。
約束したから誰にも言わない。
約束だから。
ベッド?
見慣れた部屋、碧斗の部屋だ。
碧斗……碧斗! 起きあがろうとしたらベッドの下で寝ている碧斗がいた。
不意に涙が込み上げる。
帰ってこない碧斗が心配でアパートのドアの前で座り込んで待ってしまった。
なにかあったのかと心配だった。
こんなこと今までなかったから……
帰ってきた碧斗に起こされて、ふっと力が抜けた。姿を見て安心した。
抱きしめて碧斗の存在を確かめたかった。
その時、ボディソープとシャンプーの向こう側にあるはずの碧斗の匂いがなかった。
他の匂いがいた。
女だと直感した。
碧斗が女を抱いた。
それを悟った瞬間、碧斗を失う恐怖が現実となって襲って来た。
怖い。
嫌だ。
恐怖に支配された俺は壊れた。
助けて欲しいのに、手を伸ばしても、
どんなに叫んでも碧斗は見ているだけ。
それどころか俺を放って後ろを向いて歩き出してしまった。
助けて……
俺を見つけて……
怖い……
助けて……
急に昔のことがシンクロした。
子どもの頃みんなでかくれんぼをした。
俺は隠れるのが得意だった。
その日も神社の大きな木のうろに隠れた。
うろは危ないからダメだと大人に言われていたけど、体が小さかった俺が隠れるには最適だった。
ここなら見つからないとほくそ笑んだ。
その笑みは次第に消えた。
いつまで経っても見つけに来てくれない。
「珀ちゃーん、どこー?」
というみんなの探す声もだんだん聞こえなくなっていた。
木々が騒めく。
怖くなって来た。
ここから出よう、そう思っても体が動かなかった。
恐怖で体が動かない。
どうして見つけてくれないの?
どうして助けてくれないの?
うろに隠れたから?
言うこと聞かないから罰が当たったの?
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……
動けなかったが泣くことはできた。
泣くしかできなかった。
それでも俺の声は誰にも届かなかった。
その時、
「その声、珀次か?」
と、うろを覗く顔があった。
不意に名前を呼ばれて涙が止まる。
「由岐兄ちゃん?」
「お前、こんなところでなにしてんだ?
ほら、出てこい」
由岐兄ちゃんが手を差し伸べてくれる。
俺はその手を掴んだ。
「ごめん、この子近所の子なんだ。送って行くから今日はごめん」
「ううん、気にしないで、またね由岐くん」
と女の人が手を振って帰って行った。
由岐兄ちゃんは6歳年上の中学生。
家が近所でよく構ってくれる優しい兄ちゃん。
「珀次、お前なにしてんだ?」
涙でぐちゃぐちゃの俺の顔をハンカチでゴシゴシ拭く。
「かくれんぼしてたのに見つけてくれない……」
ふっ
「お前、隠れるの上手いからなあ」
「うん」
「うん、じゃねえよwうろには隠れるなって言われてるだろ? 崩れることもあるんだぞ」
「ごめんなさい……」
「送ってってやる、一緒に帰ろ」
「うん」
「珀次」
「ん?」
「怖かったか?」
「うん……」
「そうだよな、見つけてもらえないのって怖いんだよな。一人ぼっちでもう誰にも見つけてもらえないんじゃないかって」
「うん……」
「そういう時は『助けて』『ここにいる!』って言え」
「でもかくれんぼだよ?」
「見つけてもらえないのと、かくれんぼの鬼になるのとどっちが怖い?」
「……見つけてもらえないの」
「だろ? だったら『助けて』って言え。
『ここにいるよ!』って出てこい。今度は珀次がみんなを見つけてやれ」
「うん」
「うろはダメだからな」
「……お父さんに言う?」
「泣いてたことだけ言う」
と由岐兄ちゃんが笑う。
「言わないで!」
あはははは!
「由岐兄ちゃん」
「なに?」
「さっきの女の人誰?」
「ん?」
「一緒にいた女の人」
「んー……」
「なんであんなところに二人でいたの?」
「んんー……なあ、珀次」
「なに?」
「うろにいたことも、泣いてたことも
内緒にしてやる」
「え?」
「だから珀次も黙ってろ」
「由岐兄ちゃんが女の人とあそこにいたこと?」
「そう」
「わかった」
「約束な」
「うん」
本当は見たんだ。
由岐兄ちゃんがあの女の人とチューしてた。
由岐兄ちゃんの知らない部分を見て、それが怖くて余計泣いたんだ。
約束したから誰にも言わない。
約束だから。
13
あなたにおすすめの小説
お使いはタバコとアイスとお兄さん
秋臣
BL
風景が動いた気がした。
居酒屋でバイトをしている俺はよく客からお使いを頼まれる。
お使い途中の陸橋で見かけるその人はいつも寂しそうな顔をしていて、俺はそれが気になっていた。ある夜、降り出した雨の中佇むその人を放っておけず傘を差し出した俺。
ただの風景だったはずのその人が熱を持った人間だと初めて感じた…
死ぬほど嫌いな上司と付き合いました
三宅スズ
BL
社会人3年目の皆川涼介(みながわりょうすけ)25歳。
皆川涼介の上司、瀧本樹(たきもといつき)28歳。
涼介はとにかく樹のことが苦手だし、嫌いだし、話すのも嫌だし、絶対に自分とは釣り合わないと思っていたが‥‥
上司×部下BL
カフェ・コン・レーチェ
こうらい ゆあ
BL
小さな喫茶店 音雫には、今日も静かなオルゴール調のの曲が流れている。
背が高すぎるせいか、いつも肩をすぼめている常連の彼が来てくれるのを、僕は密かに楽しみにしていた。
苦いブラックが苦手なのに、毎日変わらずブラックを頼む彼が気になる。
今日はいつもより温度を下げてみようかな?香りだけ甘いものは苦手かな?どうすれば、喜んでくれる?
「君の淹れる珈琲が一番美味しい」
苦手なくせに、いつも僕が淹れた珈琲を褒めてくれる彼。
照れ臭そうに顔を赤ながらも褒めてくれる彼ともっと仲良くなりたい。
そんな、ささやかな想いを込めて、今日も丁寧に豆を挽く。
甘く、切なく、でも愛しくてたまらない――
珈琲の香りに包まれた、静かで優しい記憶の物語。
愛と猛毒(仮)
万里
BL
オフィスビルの非常階段。冷え切った踊り場で煙草をくゆらせる水原七瀬(みずはらななせ)は、部下たちのやり取りを静かに見守っていた。 そこでは村上和弥(むらかみかずや)が、長年想い続けてきた和泉に別れを告げられていた。和泉は「ありがとう」と優しく微笑みながらも、決意をもって彼を突き放す。和弥は矜持を守ろうと、営業スマイルを貼り付けて必死に言葉を紡ぐが、その姿は痛々しいほどに惨めだった。
和泉が去った後、七瀬は姿を現し、冷徹な言葉で和弥を追い詰める。 「お前はただの予備だった」「純愛なんて綺麗な言葉で誤魔化してるだけだ」――七瀬の毒舌は、和弥の心を抉り、憎悪を引き出す。和弥は「嫌いだ」と叫び、七瀬を突き放して階段を駆け下りていく。
「……本当、バカだよな。お前も、俺も」
七瀬は独り言を漏らすと、和弥が触れた手首を愛おしそうに、そして自嘲気味に強く握りしめた。
その指先に残る熱は、嫌悪という仮面の下で燃え盛る執着の証だった。 毒を吐き続けることでしか伝えられない――「好きだ」という言葉を、七瀬は永遠に飲み込んだまま、胸の奥で腐らせていた。
手紙
ドラマチカ
BL
忘れらない思い出。高校で知り合って親友になった益子と郡山。一年、二年と共に過ごし、いつの間にか郡山に恋心を抱いていた益子。カッコよく、優しい郡山と一緒にいればいるほど好きになっていく。きっと郡山も同じ気持ちなのだろうと感じながらも、告白をする勇気もなく日々が過ぎていく。
そうこうしているうちに三年になり、高校生活も終わりが見えてきた。ずっと一緒にいたいと思いながら気持ちを伝えることができない益子。そして、誰よりも益子を大切に想っている郡山。二人の想いは思い出とともに記憶の中に残り続けている……。
サラリーマン二人、酔いどれ同伴
風
BL
久しぶりの飲み会!
楽しむ佐万里(さまり)は後輩の迅蛇(じんだ)と翌朝ベッドの上で出会う。
「……え、やった?」
「やりましたね」
「あれ、俺は受け?攻め?」
「受けでしたね」
絶望する佐万里!
しかし今週末も仕事終わりには飲み会だ!
こうして佐万里は同じ過ちを繰り返すのだった……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる