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秋臣

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約束

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約束……
なんでそんな昔のことを不意に思い出したのかわからなかった。
由岐兄ちゃんか……懐かしいな。

少し前、仕事が忙しくて資料作りに追われていた碧斗のデスクはまだ少し雑多だった。
それが忙しさを物語っていた。
たくさんの本や資料の中に数枚の紙が見えた。
なんだこれ? 資料か?

なんの意味もなく抜き出してみた。


Aシネマズ ◯
レイトショーあり
日曜日まで
ギリギリか?

Bシネマ ✕
レイトショーなし
近いのにダメ

シネマC ◎
レイトショー以外もあり
最有力

Dシネマズ東京 ◯
レイトショーのみ
席数が少ないということはスクリーン小さい?

Eシネマ2 △
金曜日まで
近いけど微妙、金曜は無理か?

F横浜シネマズ ◯
レイトショーあり
少し遠い

埼玉シネマG △
レイトショー以外もありだが金曜まで
遠い、厳しい

シネマズ埼玉H △
レイトショーのみだが来週まで上映
遠い、週末なら可能かも


これって……

俺が観たいと言ってた映画の情報……
碧斗が忙しくて、俺に待たせてごめんとずっと謝ってた。
気にするなと俺はのんびり待ってたのに、飲みに行ったらその映画の話で盛り上がり、その場のノリでみんなで近くの映画館でやってたレイトショーを観た。

俺は何度観たっていいと思ってただけだった。なにも気にしてなかった。

碧斗は違ったんだ。
忙しい中、なんとか都合をつけて俺と観にいこうとしてくれていた。
忙しいのに映画の情報をこんなに調べてくれていた。
俺はそれに気づかなかった。
そんな碧斗の気持ちを知らずに先に観た。
悪びれもせず先に観たと碧斗に言った。

碧斗は怒ったんじゃない。
悲しかったんだ。
俺、なにも気づかなかった、気づけなかった。
そんなことって気にもしなかった。
碧斗にとってそんなことじゃなかったんだ。
それなのに俺は……

涙が溢れる。
俺が碧斗を傷つけた。
心を壊した。
碧斗の優しさに俺は甘え過ぎた。

どうすればいい?
壊れた碧斗の心はどうすれば直せる?
直せるのか?
直し方がわからない。
体で繋がってなんとかしようなんて、
余計粉々にするだけだったんだ。
俺が壊したかけらを全て拾い集めて直さなきゃ……
違う匂いがする碧斗の心はもうここにないのかもしれない、間に合わないかもしれないけど、俺が直したい。
俺が見つけたい。
助けてと叫んでいた碧斗の心を俺が見つけて助けたい。

俺は立ち上がる。
朝食に碧斗に作ろうと思っていたフレンチトーストの食材。
食パンは大丈夫だけど、卵と牛乳は暑さでダメになってしまったかも。
碧斗の部屋の冷蔵庫に卵と牛乳があった。砂糖もバターもある。
ごめんな、碧斗、ちょっと借りるな。

唯一俺が作れるフレンチトーストを作る。
ラップをして冷蔵庫に入れる。

テーブルの上にメモを置いて俺は部屋を出た。
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