異世界で新生活〜スローライフ?は精霊と本当は優しいエルフと共に〜

ありぽん

文字の大きさ
30 / 61

29.変わりのない俺、ミルバーンの進化

しおりを挟む
「だぁぶ?」

 今は、今日は大丈夫だろうか? って言ったんだ。

『どうだろうな、昨日はダメだったもんな』

『ティニー、またゴホゴホ咳しちゃったもんね』

『鼻の方にはいかなかったぁ。でも前の日の方が、もう少し上手くできてたのぉ』

 やっぱりそうだよな。一昨日の方が上手くできてたよな。俺とシャインとフラフィーとラピーが話せるようになっれから2週間。あれか変わったことといえば……、うん、これと言って何もないな。

 本当にみんなと話しができるようになった以外、何の変化はなく。ただ、きちんと言葉が分かるようになった事で、暇ではなくなったかな。

 今までなんとなくで話していた俺達。なんとなくだとやっぱり長い会話ができなくて。ちょっと話せば黙る。ちょっと話せば黙る、って感じで、話していない事の方が多かったけど。今は寝ていないほとんどの時間、みんなで話しをしている。

 おしゃべりの内容としては、そんなに難しい話しじゃなくて、自分の好きな果物は何だとか、あのご飯はまずいから、食べられるようになっても食べない方が良いよとか。
 後は自分が好きな色で、もし何か自分達にプレゼントしてくれるなら、その色の物が欲しいなぁなんて、時々要求も入ってくる。これには笑ってしまった。

 と、他にも色々と、たくさん話しをしたんだが、森のことも少し分かった。エルフの里があるこの森だけど、かなり広いらしくて。みんなが魔法を使わないでフラフラと端から端まで移動すると、数日かかるらしい。10日くらい。魔法を使えば半分の5日だと。

 ただ使う魔法にもよるって。一瞬で移動できる魔法もあるけど、それを使うとかなり疲れるらしくて、あまり使いたくないようだ。前に使った時は元々住んでいた場所に戻ってから2日間も寝ていたらしい。

 小さいみんなの魔法を使わないで移動だから、そりゃあ時間がかかるだろうけど、でも魔法を使っても3日。どれだけこの森は広いのか。

 それと元々この森に住んでいる魔獣は、強い魔獣が多いいんだけど。同じ森に住んでいて、同じ種類の魔獣なのに、向こうに住んでいる魔獣は仲良くなれて、あっちに住んでいる魔獣は問答無用に攻撃してくるなんて魔獣達もいるらしく。

 僕が最初にいた場所は、その中でも攻撃してくる魔獣が多い場所だったって。俺、よく生きてたな。
 魔獣については、後でレイナさんやミルバーンが教えてくれることになっているから、きちんと勉強して気をつけないといけないな。

 と、まぁ、色々な話しをした俺達だけど。情報を得られても、他は何も変わらなかった俺。でもある人物が、ついに進化する時がやってきた。

「さぁ、ご飯にしましょうね」
 
 レイナさんに抱かれて1階のリビングへ。そうしてソファーに座るレイナさん。ミルクがテーブルに置かれているのに、ミルバーンがいない。今日家にいるのはミルバーンとレイナさんとエレノアさんだ。

「これは予備のミルクなの。もう少し待っていて」

 レイナさんにそう言われて待つこと数分。エプロン姿のミルバーンがミルクの入っているお椀を持って入ってきた。

「ミルバーンがミルクを作ったのよ。今から私が確かめて、大丈夫ならミルバーンの作ってくれたミルクを飲みましょうね」

 何だって!? ミルバーンがミルクを作った!!

『ミルバーンが作った!!』

『大変、何か変なこと起こる!?』

『逃げないとだめぇ?』

 地球には、ある人がこんな珍しい行動をした、似合わない事をした、なんて時に、明日は槍が降るんじゃないか、っていうか言葉があるけど。こっちの世界でも、同じような感じで、何かとんでもない事が起こるんじゃないかって。

 ミルバーンがミルクを作ってきたもんだから、それでみんなが騒ぎ始めたんだよ。いや、ミルバーンがミルクを作ってくれただけで、逃げるような事は起こらないよ。たぶん?

 ミルバーンが少しムスッとしながら、ミルクをレイナさんの前に置く。レイナさんが俺をミルバーンに渡した。ミルクチェックをするためだ。
 ふむ、今日の抱きかたは、今までで1番良いんじゃないか? どこも苦しくないし、痛くもない。なかなか良いんじゃないかい、ミルバーン君。

 なんてふざけているけれど、ちゃんとお礼だって言っているよ。ミルバーンが夜な夜なぬいぐるみを使って、俺を抱っこする練習をしているのを知っているからな。
 夜中に来て独り言を言って帰っていくやつ。あれが毎日続いていて。それをバレないように見ている俺。

 ある時ミルバーンのぬいぐるみを抱く姿勢が、ピシッとなってきたんだ。そうしたらその次の日から、ミルバーンの俺を抱く時の感覚が変わった。今までは俺の体をおっかなビックリって感じで落としそうになって。その後は強く抱きすぎて、俺は締め付けられ苦しいし痛いし。

 そんな感じだったのが、その姿勢が良くなった日から、だんだんと改善されてきたんだよ。そうして今日は、ほとんど不快な感じはしていない。

『ティニー、大丈夫か?』

『苦しくない? 痛くない?』

『苦しかったら言ってぇ。ぼく達が魔法でふわふわ浮かせてあげるよぉ~』

「ばぶう!!」

 今のは、今日は今までで1番バッチリ、と言ったんだ。

『本当か?』

『ねぇ、やっぱり何か起こるんじゃ?』

『危ないのぉ』

 だから何も起こらないよ、これくらいじゃあ。それにこれは頑張ってくれた成果なんだから。

「あら、今日は今までで1番抱きかたね。この抱きかたが毎回できるようになれば、抱く訓練は終了よ」

 ほら、レイナさんもそう言ってるし。ミルバーン、毎日訓練お疲れ様。

 抱くのをチェックしながら、ミルクに手を伸ばしていたレイナさん。さぁ、ミルクはどうだろう? ミルクは今までに成功した事ないんだよな。昨日は後少しって言われてたけど。このままミルクも合格を貰おう!!
しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

僕のギフトは規格外!?〜大好きなもふもふたちと異世界で品質開拓を始めます〜

犬社護
ファンタジー
5歳の誕生日、アキトは不思議な夢を見た。舞台は日本、自分は小学生6年生の子供、様々なシーンが走馬灯のように進んでいき、突然の交通事故で終幕となり、そこでの経験と知識の一部を引き継いだまま目を覚ます。それが前世の記憶で、自分が異世界へと転生していることに気付かないまま日常生活を送るある日、父親の職場見学のため、街中にある遺跡へと出かけ、そこで出会った貴族の幼女と話し合っている時に誘拐されてしまい、大ピンチ! 目隠しされ不安の中でどうしようかと思案していると、小さなもふもふ精霊-白虎が救いの手を差し伸べて、アキトの秘めたる力が解放される。 この小さき白虎との出会いにより、アキトの運命が思わぬ方向へと動き出す。 これは、アキトと訳ありモフモフたちの起こす品質開拓物語。

才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!

にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。 そう、ノエールは転生者だったのだ。 そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。

転生能無し少女のゆるっとチートな異世界交流

犬社護
ファンタジー
10歳の祝福の儀で、イリア・ランスロット伯爵令嬢は、神様からギフトを貰えなかった。その日以降、家族から【能無し・役立たず】と罵られる日々が続くも、彼女はめげることなく、3年間懸命に努力し続ける。 しかし、13歳の誕生日を迎えても、取得魔法は1個、スキルに至ってはゼロという始末。 遂に我慢の限界を超えた家族から、王都追放処分を受けてしまう。 彼女は悲しみに暮れるも一念発起し、家族から最後の餞別として貰ったお金を使い、隣国行きの列車に乗るも、今度は山間部での落雷による脱線事故が起きてしまい、その衝撃で車外へ放り出され、列車もろとも崖下へと転落していく。 転落中、彼女は前世日本人-七瀬彩奈で、12歳で水難事故に巻き込まれ死んでしまったことを思い出し、現世13歳までの記憶が走馬灯として駆け巡りながら、絶望の淵に達したところで気絶してしまう。 そんな窮地のところをランクS冒険者ベイツに助けられると、神様からギフト《異世界交流》とスキル《アニマルセラピー》を貰っていることに気づかされ、そこから神鳥ルウリと知り合い、日本の家族とも交流できたことで、人生の転機を迎えることとなる。 人は、娯楽で癒されます。 動物や従魔たちには、何もありません。 私が異世界にいる家族と交流して、動物や従魔たちに癒しを与えましょう!

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/466596284/episode/5320962 https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/84576624/episode/5093144 https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/786307039/episode/2285646

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

【一秒クッキング】追放された転生人は最強スキルより食にしか興味がないようです~元婚約者と子犬と獣人族母娘との旅~

御峰。
ファンタジー
転生を果たした主人公ノアは剣士家系の子爵家三男として生まれる。 十歳に開花するはずの才能だが、ノアは生まれてすぐに才能【アプリ】を開花していた。 剣士家系の家に嫌気がさしていた主人公は、剣士系のアプリではなく【一秒クッキング】をインストールし、好きな食べ物を食べ歩くと決意する。 十歳に才能なしと判断され婚約破棄されたが、元婚約者セレナも才能【暴食】を開花させて、実家から煙たがれるようになった。 紆余曲折から二人は再び出会い、休息日を一緒に過ごすようになる。 十二歳になり成人となったノアは晴れて(?)実家から追放され家を出ることになった。 自由の身となったノアと家出元婚約者セレナと可愛らしい子犬は世界を歩き回りながら、美味しいご飯を食べまくる旅を始める。 その旅はやがて色んな国の色んな事件に巻き込まれるのだが、この物語はまだ始まったばかりだ。 ※ファンタジーカップ用に書き下ろし作品となります。アルファポリス優先投稿となっております。

処理中です...