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41話 考えろ、私にできることを! そして予想外は目の前に
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「しょだんちょしゃん!!」
「良かった、無事そうだな」
私を背に、結界の前に総団長さんたちが並ぶ。それから結界のギリギリまで、ミッケたちが来てくれて、私はミッケと話そうとしたけど、すぐにやめたよ。アルバートさんが目で合図をしてきて、それからミッケたちも、手でしーっとやってきたから。
ミッケたちのことは、フィンレイには見えないもんね。もしも反応をして、妖精たちがここにいるって分かったら、余計に面倒なことになるかもしれないし。なにしろ相手は、変なことになっているフィンレイだもん。
「リア、大丈夫か」
「うん!!」
「そうか! って、ピィも居たのかよ!」
「アンドリュー、今はそれどころじゃありませんよ」
「分かってるって。……フィンレイお前、随分変わったな」
「そうでしょうか? まぁ、確かに新しい力に関しては、まだ少々使えていない部分もありますが。それでも、あなた方を相手にする分には、問題なく動くことができるかと」
「危険な力を手に入れたようだな」
「ええ。ただ、それのせいで、少々問題が起きてしまいましたが、今は解決しましたよ。そういえば、私に問題が起きている時、宿舎であなた方としっかり話をすることができませんでしたが、何か大切な話をしましたか?」
「いいや、大した話はしていないから大丈夫だ。喚き散らしていたお前と話してもな」
「そうですか。なら良かったです。また話を聞くのは面倒ですからね」
「俺は、力じゃなく、お前のその姿も気になるが? その体に纏っている黒いもんは何だ? それと顔の模様は?」
「姿……ですか?」
え? 今、アンドリューさん、なんて言った? 黒いもんって言った? あれは私やピィ君、それからミッケたち妖精にしか見えない、悪意だったんじゃないの?
「私の力が見えているのですか? 私は使い手なので見ることができますが、他の者たちには見えないはず。妖精がいて、あなた方に知らせていれば別ですが」
「どういうことだ?」
「おそらく、悪意と同じようなものだろう」
「ああ、なるほど……」
「そうですね。後でじっくり確認してみましょうか。この力はこれからもっと、確実に使えるようにしなければいけませんからね」
「後で、があればな」
「ですがその前に、そこの子供をいただきますね」
「俺たちも、お前を捕まえさせてもらうぜ」
フィンレイが両方の手を少し上げ、そこに黒い炎の玉を作る。なんかこう、みんな話し方ははいつも通りだし、フィンレイも、本当にいつも通りに戻ってるみたいだけど。雰囲気と話しの内容があっていないし、周りのピリピリとした緊張感が伝わってくるよ。
たぶん、同団長さんたちも、フィンレイの異様さに気づいたんだと思う。
「それでは、少々時間がかかってしまっているので、こちから行かせてもらいますね。フンッ!!
フィンレイが、黒い火の玉を連続で放ってくる。それを避けたり、剣や斧で防いだ後、それぞれフィンレイに攻撃するどう団長さんたち。
だけど、総団長さんに団長さん、それから戦闘能力が高いとされているエルフの同時攻撃を、いとも簡単に黒い炎で防いでしまったフィンレイは。今度は、黒い炎を槍の先のように尖らせ攻撃してきたよ。
もちろん総団長さんたちはそれも避けたよ。ただ避けた槍の先の攻撃が建物に当たり、ボロボロな箇所が増えていく。
お互い一歩も引かないで、次々に攻撃を繰り出していく。だけどその途中だった。私を守ってくれていた結界が消えたんだ。
鳥が、どんな鳥だったのかは、後でフィンレイに絶対に勝つ総団長さんたちに聞くとして、今はとりあえず。私を守ってくれてありがとう! 鳥さん無事でいてね! と心の中で思ったよ。
そして結界が消え始めると、
「アルバート、リアを頼む!!」
「分かった」
総団長さんに言われて、すぐにアルバートさんが私の側に来てくれて、それからミッケたちも近づいてきたよ。
「リア、大丈夫なんだじょ?」
私は声に出さずに、静かにちょっとだけ頷く。そう、フィンレイに気づかれないようにね。するとアルバートさんが、とても小さな声で、こんなことを言ってきたんだ。
「お前たち、今度は私が結界を張るから、入り口を作れ。それでリアを先に宿舎に戻す」
『簡単な方で良い?』
『危ないから早く移動しないと、丁寧な方は時間かかる』
「ああ、簡単な方で良い。とりあえず、あれから離れた方が良いからな」
『分かったじょ!! すぐに入り口作るんだじょ!!』
『よし、みんな気合いを入れて作るよ!!』
『みんな、しっかり踊って!!』
『ふんっ!! ふふんっ!!』
ぱっちんぱちん!
『ふふふふふんっ!!』
ぱちぱっちん!!
すぐ側で、激しい戦闘が行われる中、鼻歌を歌い、手を叩きながら、盆踊りをするミッケたち。何も知らない人が見たら、その落差に呆気に取られる人や、何やってるんだって怒る人がいるかもしれない。
だけどミッケたちは、私のために頑張って入り口を開こうとしてるんだから、私は心の中で応援したよ。今の私には、それしかできないから。
それからその間に、総団長さんとアンドリューさんが、魔獣に変身して攻撃を始めたんだ。
その姿が、本当に凄くて。総団長さんはライオン、アンドリューさんはトラだからね。鋭い牙や爪で、噛みつき攻撃や切り裂く攻撃をしたり。それだけじゃなく、魔法でも攻撃するし。
特に、噛み切り裂く攻撃が迫力があって、私はミッケたちの応援をしていたけど。でも総団長さんたちの攻撃に、思わず腕を上げて、やっちゃえー!! と叫んじゃったよ。
というか、入り口作り中のミッケたちまで、盆踊りをしながら、私と同じく片腕を上げて、やっちゃえー!! と言っていたしね。それ、入り口を作っている時に、やっても良いの? って言いそうになったよ。
ただ、そんな総団長さんとアンドリューさんの、カッコいい迫力のある攻撃だったけど。何度かフィンレイに攻撃が当たりそうになったものの、フィンレイはそれをギリギリで避け。逆に総団長さんたちが攻撃を受けそうになっちゃったんだ。そして……。
「くっ!?」
「ぐっ!?」
「うっ!?」
ついにフィンレイの攻撃を、少しだ受けてしまった総団長さんたちが、私たちのすぐ近くまで下がってきたよ。
誰だよ、フィンレイを実験体にして、バカにしてた奴は! もともと強かったんだろうけど、副団長をするくらいだしね。でも実験で、変な力を与えたりするから、こんなに強くなっちゃったじゃないか。
「どうしましたか? やはり下級な生き物はダメですね。たかが私1人に、少しの傷を負わせることもできず、逆に自分たちが攻撃を受けるとは」
「フンッ、今のは、わざとどれくらいの威力があるのか、少し受けただけだ。何も問題はないから、安心しろ」
「そうですか? なら良いのですが。では次、いきましょうか」
そうして、また始まる攻撃。アルバートさんが、総団長さんたちを見ながら、ミッケたちに声をかける。
「おい、この間は、入口を作り始めてからこれくらいの時間で、すでに入り口ができていたと思うが、まだか?」
『もうちょっとだけ待って!』
『周りがうるさくて、上手くいかないんだよ!』
『こう、この踊りを、もうちょっと踊るから』
『もう少しだから待つんだじょ!!』
今日はこの前みたいに、上手く入り口が開かないみたい。腕を上げて、やっちゃえー! なんて途中で入れたからじゃ? なんてちょっと思った私。
ただ、この数分後。ミッケたちの入り口作りを、待っていることができない状況になっちゃったんだ。
「はぁ、いい加減面倒ですね。ハッ!!」
フィンレイが気合? を入れ直すと、纏っていた黒い炎が、前みたいな濃い黒へと変わり、それが一瞬で建物全体を覆って。それと同時に黒い炎は、総団長さんたちも攻撃したの。
「くっ!?」
「ぐあっ!?」
「ぐうっ!?」
私たちの前に倒れ込む総団長さんたち。アルバートさんが急いで結界を広げて、みんなを守る。そしてすぐに、みーちゃんがみんなを回復させようとしたんだけど。でも、みーちゃんは入り口を開いている最中だったから、途中で抜けられなくて。
アルバートさんも何とかしようとしたんだけど、フィンレイの攻撃が激しくなりすぎて、結界を維持するだけで精一杯で動けず。
総団長さんとアンドリューさんは、攻撃により魔獣の姿からいつも通りの獣人の姿に。エディスンさんとヒルドレッドさんも、その場から動けずに、フィンレイを睨むことしかできなくなっちゃったんだ。
そんな中、フィンレイだけが、あの姿が見えなくなるほど、黒い炎を纏った状態になって。でも今度は、意識はハッキリしたまま、自由自在に黒い炎を操っていたよ。
「いい加減、面倒になったので、全員連れて行くことにします。あなた方でしたら、良い実験体になるでしょうからね」
「ぐっ、早く奴を抑えなければ」
「なんで奴に、攻撃が当たらねぇんだ」
「どうにか、あの炎を止めなければ」
「アルバート、まだですか。せめてリアたちだけでも」
『おい、お前たち、まだか!!』
あれ? アルバートさんは話していないのに、アルバートさんの声が聞こえる?
『少々力を使うが、お前たちと念話で話している。ここでお前たちの存在が知られれば、結界を壊すために攻撃してくる箇所を、お前たちの近くにしてくるだろう。最初にお前たちを攻撃して、リアを逃さないようにするために。気づかれないうちに、早く入り口を開くんだ!!』
『分かってるよ! でも本当に、いつもみたいにできないんだ』
『何かが邪魔してるんだよ!!』
『あの黒い炎のせいかも!!』
『そう! なんかあいつの方から、何かがブワッとこっちにきてるのよ!!』
『あと少しが、できないんだじょ!!』
その間にも、結界の周りの黒い炎は、どんどん濃くなっていく。だけどわざとなのか、お互いが見える場所だけは、黒い炎を使ってこないフィンレイ。
どうしよう、このままじゃ本当に、みんな連れて行かれちゃうかも。何か私にできることはない? だって私だけが、何もしていない。守られているだけ、助けてもらおうとしているだけ。何か、みんなのためにお手伝いしたいよ。
……たいしたお手伝いもできないまま、みんなに恩返しができないまま、挙句は攫われて。今はただ、みんなを見ていることしかできない。何で私は何もできないの? 少しくらい何か攻撃できない?
ああ、もう! こんなことなら、強い魔法をバカ神にもらっておくんだった。ちょっとでもいいんだよ。あいつの力を抑えられるような力。そうすれば、ミッケたちも入り口を開けて、みんなで一旦逃げられるかもしれない。
あ、でもそれだとまた、フィンレイが私たちのところに来ちゃうかも。それで同じことになったらダメだよね。本当にどうしたら良いの!?
と、そう考えている時だった。
「くっ!?」
ついに、アルバートさんの結界に、ヒビが入っちゃったんだ。
『まだか!?』
『も、もう少し!』
『あと少し!!』
『あと少しとは、どれだけだ!!』
『だから、あと少しだよ!!』
『リアだけでも、なんとか逃がすんだ!』
……違う。今考えていたやつ。逃げても、何も変わらない。あいつをどうにかしない限り、解決にならない。みんなに、いつまでも危険が及ぶ。
「さぁ、そろそろですかね。新しい力を、ここまで使えるようになって良かったですよ。そして、この力を完璧にするために、あなた方という、とても良質な実験体を手に入れることができる。あなた方も、何か新しい力を使えれば、私に対応できたかもしれませんね。私が知らない力を。もっとも、そんなものがあったとしても、私には通用しないでしょうが」
「くそっ」
「チッ、あと少しで動けるっていうのに」
「ほんの少し、時間を伸ばせれば」
「そうそう、獣衰病の研究も続けねば。人間は罹らず、獣人だけが罹るこの病気。この世界に、こんな素晴らしい病気があるとは。本当にありがたい。全種族が罹る病気もありますが、獣衰病ほどの力はありません。まぁ、私はどんな力にも、病気にも屈しませんが。どんな想定外のものにもです。ハハハハハッ!!」
ん? どんな病気にも? 想定外のものにも? 獣衰病は獣人だけが罹る最悪の病気。でもそう。フィンレイの言った通り、どんな種族だって罹る、最悪な病気、苦手な物はあるわけで。そう、全人種に……。
どんな強い魔法を使う人でも、どんな屈強な体で強力な攻撃ができる人でも、それ以外の人も、どんな人たちも嫌がる想定外のもの……。
私の頭の中に、今まで生活のことが思い出される。そして……。
あるじゃん!! 誰にでもダメージを与える、予想外の物が!!
「良かった、無事そうだな」
私を背に、結界の前に総団長さんたちが並ぶ。それから結界のギリギリまで、ミッケたちが来てくれて、私はミッケと話そうとしたけど、すぐにやめたよ。アルバートさんが目で合図をしてきて、それからミッケたちも、手でしーっとやってきたから。
ミッケたちのことは、フィンレイには見えないもんね。もしも反応をして、妖精たちがここにいるって分かったら、余計に面倒なことになるかもしれないし。なにしろ相手は、変なことになっているフィンレイだもん。
「リア、大丈夫か」
「うん!!」
「そうか! って、ピィも居たのかよ!」
「アンドリュー、今はそれどころじゃありませんよ」
「分かってるって。……フィンレイお前、随分変わったな」
「そうでしょうか? まぁ、確かに新しい力に関しては、まだ少々使えていない部分もありますが。それでも、あなた方を相手にする分には、問題なく動くことができるかと」
「危険な力を手に入れたようだな」
「ええ。ただ、それのせいで、少々問題が起きてしまいましたが、今は解決しましたよ。そういえば、私に問題が起きている時、宿舎であなた方としっかり話をすることができませんでしたが、何か大切な話をしましたか?」
「いいや、大した話はしていないから大丈夫だ。喚き散らしていたお前と話してもな」
「そうですか。なら良かったです。また話を聞くのは面倒ですからね」
「俺は、力じゃなく、お前のその姿も気になるが? その体に纏っている黒いもんは何だ? それと顔の模様は?」
「姿……ですか?」
え? 今、アンドリューさん、なんて言った? 黒いもんって言った? あれは私やピィ君、それからミッケたち妖精にしか見えない、悪意だったんじゃないの?
「私の力が見えているのですか? 私は使い手なので見ることができますが、他の者たちには見えないはず。妖精がいて、あなた方に知らせていれば別ですが」
「どういうことだ?」
「おそらく、悪意と同じようなものだろう」
「ああ、なるほど……」
「そうですね。後でじっくり確認してみましょうか。この力はこれからもっと、確実に使えるようにしなければいけませんからね」
「後で、があればな」
「ですがその前に、そこの子供をいただきますね」
「俺たちも、お前を捕まえさせてもらうぜ」
フィンレイが両方の手を少し上げ、そこに黒い炎の玉を作る。なんかこう、みんな話し方ははいつも通りだし、フィンレイも、本当にいつも通りに戻ってるみたいだけど。雰囲気と話しの内容があっていないし、周りのピリピリとした緊張感が伝わってくるよ。
たぶん、同団長さんたちも、フィンレイの異様さに気づいたんだと思う。
「それでは、少々時間がかかってしまっているので、こちから行かせてもらいますね。フンッ!!
フィンレイが、黒い火の玉を連続で放ってくる。それを避けたり、剣や斧で防いだ後、それぞれフィンレイに攻撃するどう団長さんたち。
だけど、総団長さんに団長さん、それから戦闘能力が高いとされているエルフの同時攻撃を、いとも簡単に黒い炎で防いでしまったフィンレイは。今度は、黒い炎を槍の先のように尖らせ攻撃してきたよ。
もちろん総団長さんたちはそれも避けたよ。ただ避けた槍の先の攻撃が建物に当たり、ボロボロな箇所が増えていく。
お互い一歩も引かないで、次々に攻撃を繰り出していく。だけどその途中だった。私を守ってくれていた結界が消えたんだ。
鳥が、どんな鳥だったのかは、後でフィンレイに絶対に勝つ総団長さんたちに聞くとして、今はとりあえず。私を守ってくれてありがとう! 鳥さん無事でいてね! と心の中で思ったよ。
そして結界が消え始めると、
「アルバート、リアを頼む!!」
「分かった」
総団長さんに言われて、すぐにアルバートさんが私の側に来てくれて、それからミッケたちも近づいてきたよ。
「リア、大丈夫なんだじょ?」
私は声に出さずに、静かにちょっとだけ頷く。そう、フィンレイに気づかれないようにね。するとアルバートさんが、とても小さな声で、こんなことを言ってきたんだ。
「お前たち、今度は私が結界を張るから、入り口を作れ。それでリアを先に宿舎に戻す」
『簡単な方で良い?』
『危ないから早く移動しないと、丁寧な方は時間かかる』
「ああ、簡単な方で良い。とりあえず、あれから離れた方が良いからな」
『分かったじょ!! すぐに入り口作るんだじょ!!』
『よし、みんな気合いを入れて作るよ!!』
『みんな、しっかり踊って!!』
『ふんっ!! ふふんっ!!』
ぱっちんぱちん!
『ふふふふふんっ!!』
ぱちぱっちん!!
すぐ側で、激しい戦闘が行われる中、鼻歌を歌い、手を叩きながら、盆踊りをするミッケたち。何も知らない人が見たら、その落差に呆気に取られる人や、何やってるんだって怒る人がいるかもしれない。
だけどミッケたちは、私のために頑張って入り口を開こうとしてるんだから、私は心の中で応援したよ。今の私には、それしかできないから。
それからその間に、総団長さんとアンドリューさんが、魔獣に変身して攻撃を始めたんだ。
その姿が、本当に凄くて。総団長さんはライオン、アンドリューさんはトラだからね。鋭い牙や爪で、噛みつき攻撃や切り裂く攻撃をしたり。それだけじゃなく、魔法でも攻撃するし。
特に、噛み切り裂く攻撃が迫力があって、私はミッケたちの応援をしていたけど。でも総団長さんたちの攻撃に、思わず腕を上げて、やっちゃえー!! と叫んじゃったよ。
というか、入り口作り中のミッケたちまで、盆踊りをしながら、私と同じく片腕を上げて、やっちゃえー!! と言っていたしね。それ、入り口を作っている時に、やっても良いの? って言いそうになったよ。
ただ、そんな総団長さんとアンドリューさんの、カッコいい迫力のある攻撃だったけど。何度かフィンレイに攻撃が当たりそうになったものの、フィンレイはそれをギリギリで避け。逆に総団長さんたちが攻撃を受けそうになっちゃったんだ。そして……。
「くっ!?」
「ぐっ!?」
「うっ!?」
ついにフィンレイの攻撃を、少しだ受けてしまった総団長さんたちが、私たちのすぐ近くまで下がってきたよ。
誰だよ、フィンレイを実験体にして、バカにしてた奴は! もともと強かったんだろうけど、副団長をするくらいだしね。でも実験で、変な力を与えたりするから、こんなに強くなっちゃったじゃないか。
「どうしましたか? やはり下級な生き物はダメですね。たかが私1人に、少しの傷を負わせることもできず、逆に自分たちが攻撃を受けるとは」
「フンッ、今のは、わざとどれくらいの威力があるのか、少し受けただけだ。何も問題はないから、安心しろ」
「そうですか? なら良いのですが。では次、いきましょうか」
そうして、また始まる攻撃。アルバートさんが、総団長さんたちを見ながら、ミッケたちに声をかける。
「おい、この間は、入口を作り始めてからこれくらいの時間で、すでに入り口ができていたと思うが、まだか?」
『もうちょっとだけ待って!』
『周りがうるさくて、上手くいかないんだよ!』
『こう、この踊りを、もうちょっと踊るから』
『もう少しだから待つんだじょ!!』
今日はこの前みたいに、上手く入り口が開かないみたい。腕を上げて、やっちゃえー! なんて途中で入れたからじゃ? なんてちょっと思った私。
ただ、この数分後。ミッケたちの入り口作りを、待っていることができない状況になっちゃったんだ。
「はぁ、いい加減面倒ですね。ハッ!!」
フィンレイが気合? を入れ直すと、纏っていた黒い炎が、前みたいな濃い黒へと変わり、それが一瞬で建物全体を覆って。それと同時に黒い炎は、総団長さんたちも攻撃したの。
「くっ!?」
「ぐあっ!?」
「ぐうっ!?」
私たちの前に倒れ込む総団長さんたち。アルバートさんが急いで結界を広げて、みんなを守る。そしてすぐに、みーちゃんがみんなを回復させようとしたんだけど。でも、みーちゃんは入り口を開いている最中だったから、途中で抜けられなくて。
アルバートさんも何とかしようとしたんだけど、フィンレイの攻撃が激しくなりすぎて、結界を維持するだけで精一杯で動けず。
総団長さんとアンドリューさんは、攻撃により魔獣の姿からいつも通りの獣人の姿に。エディスンさんとヒルドレッドさんも、その場から動けずに、フィンレイを睨むことしかできなくなっちゃったんだ。
そんな中、フィンレイだけが、あの姿が見えなくなるほど、黒い炎を纏った状態になって。でも今度は、意識はハッキリしたまま、自由自在に黒い炎を操っていたよ。
「いい加減、面倒になったので、全員連れて行くことにします。あなた方でしたら、良い実験体になるでしょうからね」
「ぐっ、早く奴を抑えなければ」
「なんで奴に、攻撃が当たらねぇんだ」
「どうにか、あの炎を止めなければ」
「アルバート、まだですか。せめてリアたちだけでも」
『おい、お前たち、まだか!!』
あれ? アルバートさんは話していないのに、アルバートさんの声が聞こえる?
『少々力を使うが、お前たちと念話で話している。ここでお前たちの存在が知られれば、結界を壊すために攻撃してくる箇所を、お前たちの近くにしてくるだろう。最初にお前たちを攻撃して、リアを逃さないようにするために。気づかれないうちに、早く入り口を開くんだ!!』
『分かってるよ! でも本当に、いつもみたいにできないんだ』
『何かが邪魔してるんだよ!!』
『あの黒い炎のせいかも!!』
『そう! なんかあいつの方から、何かがブワッとこっちにきてるのよ!!』
『あと少しが、できないんだじょ!!』
その間にも、結界の周りの黒い炎は、どんどん濃くなっていく。だけどわざとなのか、お互いが見える場所だけは、黒い炎を使ってこないフィンレイ。
どうしよう、このままじゃ本当に、みんな連れて行かれちゃうかも。何か私にできることはない? だって私だけが、何もしていない。守られているだけ、助けてもらおうとしているだけ。何か、みんなのためにお手伝いしたいよ。
……たいしたお手伝いもできないまま、みんなに恩返しができないまま、挙句は攫われて。今はただ、みんなを見ていることしかできない。何で私は何もできないの? 少しくらい何か攻撃できない?
ああ、もう! こんなことなら、強い魔法をバカ神にもらっておくんだった。ちょっとでもいいんだよ。あいつの力を抑えられるような力。そうすれば、ミッケたちも入り口を開けて、みんなで一旦逃げられるかもしれない。
あ、でもそれだとまた、フィンレイが私たちのところに来ちゃうかも。それで同じことになったらダメだよね。本当にどうしたら良いの!?
と、そう考えている時だった。
「くっ!?」
ついに、アルバートさんの結界に、ヒビが入っちゃったんだ。
『まだか!?』
『も、もう少し!』
『あと少し!!』
『あと少しとは、どれだけだ!!』
『だから、あと少しだよ!!』
『リアだけでも、なんとか逃がすんだ!』
……違う。今考えていたやつ。逃げても、何も変わらない。あいつをどうにかしない限り、解決にならない。みんなに、いつまでも危険が及ぶ。
「さぁ、そろそろですかね。新しい力を、ここまで使えるようになって良かったですよ。そして、この力を完璧にするために、あなた方という、とても良質な実験体を手に入れることができる。あなた方も、何か新しい力を使えれば、私に対応できたかもしれませんね。私が知らない力を。もっとも、そんなものがあったとしても、私には通用しないでしょうが」
「くそっ」
「チッ、あと少しで動けるっていうのに」
「ほんの少し、時間を伸ばせれば」
「そうそう、獣衰病の研究も続けねば。人間は罹らず、獣人だけが罹るこの病気。この世界に、こんな素晴らしい病気があるとは。本当にありがたい。全種族が罹る病気もありますが、獣衰病ほどの力はありません。まぁ、私はどんな力にも、病気にも屈しませんが。どんな想定外のものにもです。ハハハハハッ!!」
ん? どんな病気にも? 想定外のものにも? 獣衰病は獣人だけが罹る最悪の病気。でもそう。フィンレイの言った通り、どんな種族だって罹る、最悪な病気、苦手な物はあるわけで。そう、全人種に……。
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