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43話 ついに倒れたフィンレイ、最恐の臭靴下で勝利!!
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「おおおおおっ!!」
『ぴぴぴぴぴぃっ!!』
『凄いんだじょ!!』
『ブワッとだよ、ブワッと!!』
『違うよ、しゅごごごごご、だよ』
『それも違うわよ。しゅー、よ』
『違うんだじょ。ずぞぞぞぞなんだじょ』
『ぴぴぴぴぃーぴ!』
いや、どれでも良いから、黒い炎の動き方の音なんて。それよりも、もっと大事なことがあるでしょう!
なんて、みんなの感想に、心の中でツッコミを入れる。まぁ、私も最初は、思わず大きな声を出しちゃったけどさ。
『どんどん、あの人間に戻っていくよ!』
『ブワァ!!』
『しゅごごごごご!』
『しゅー!』
『ずぞぞぞぞなんだじょ!』
『ぴぴぴぴぃーぴ!』
『しゅぺぺぺぺ!』
誰だ、変な音を言ってるのは。
『……ウエ~イで良いんじゃないかな? 戻る速さと、ちゃんと臭が効いたのと、あいつが吐いてよろよろになって、今のところ良いことばかり。だから、良いねのウエ~イ』
『……あ、それで良いじゃん』
『……それで良いわね』
『『『うえ~い!!』』』
『ウエ~イなんだじょ!!』
『ぴぴ~ぴ!!』
……もう、ミッケたちは放っておこう。それよりも黒い炎だよ。
黒い炎は、フィンレイが吐いて膝をつき、四つん這いになってからすぐに、フィンレイの元へ凄い勢いで戻り始めたんだ。
最初に結界にまとわりついていた黒い炎が、それから私たちがいる部屋の中の黒い炎が。その後も、隣の部屋や、建物の周り。他からも次から次に、フィンレイの体に戻っていっているよ。
そして、アンドリューさんの臭靴下にやられた、フィンレイ本人は……。
なんとか靴下を遠くに投げようとしたんだけど、臭いでたられていて力が出なかったのか、1メートルも遠くに飛ばせず。ずっと臭いにやられてる、って感じかな。
「グッ、オエッ、ゲホゲホッ!!」
しかも、結界の中の匂いまで、アルバートさんがフィンレイの方へ流したからね。ダブルで苦しむことに。あ、また吐いた。
『ウエ~イなんだじょ!!』
『『『ウエ~イ!!』』』
『ぴぴ~ぴ!!』
「お前たち、変なことを言っていないで、移動の準備をしろ。それと……今ならできるだろう。みー、ブランデンたちの回復を。私はまだ、結界を消すわけにはいかないからな」
『は~い。すぐに治すわね」
『じゃあ俺たちはこっち』
『リア、入り口に入る準備だって』
『あっ! 待ってみんな!! あいつが!!』
あー君の声に、みんながフィンレイの方を振り向く。総団長さんたちはずっと見ていたから、フィンレイの様子に気づいていたけどね。
ついに。そうついに、フィンレイがその場に倒れたんだ。自分の吐いたものの上にね……。それから目は白目を向いていて、口は半開きで涎を流し、呼吸は……あれ、止まってないよね?
「みー、皆を」
『うん!! まず毛がギザギザさんから」
「ブランデンだ」
フィンレイが倒れたことに、またみんなが止まって喜んだけど、もう1度アルバートさんに声をかけられて動き出す。
それと、あー君たち妖精は、私や数人は普通に名前で呼ぶけど、他は大体あだ名で呼ぶんだ。自分たちで考えたね。総団長さんは、頭の毛がギザギザに見えるから、毛がギザギザさん。
ヒルドレッドさんは、ヒルドレッドって呼んだり、毛がピンッ! っていったり。時々ヒルドレッドさん、寝癖が治らなくて、一部が触覚みたいになっている時があるんだ。それでね。
エディスンさんは、ぼくたちのハーチーおじさん。森や林の奥には、大きさが大型犬くらいで、蜂に似たハーチーという魔獣がいてね。そのハーチーの巣には、美味しい蜜がいっぱいあるんだ。
でも、ハーチーはとても危険な魔獣だから、なかなか近づくことができない。そんなハーチーの蜜を、エディスンさんは時々持って帰ってきてくれて、私たちにくれるんだ。
あー君たちは蜜が大好き。だからあだ名が、ぼくたちのハチーチーおじさん。エディスンさんは、子供たちにも妖精たちにも大人気なんだよ。
そしてアンドリューさんだけど……。まぁ、ね。分かるでしょう? この前、あー君たちが倒れた時に、新しいあだ名がつきました。靴下つーわーさん。
靴下が、どんな臭いをしているか、みんな分からないうちに倒れちゃったでしょう? でもきっと、つわ~んと臭いが漂ってきたはずだから、そのつわ~んからとって、靴下つーわーさん。後はそのまま、靴下危険さんって呼ばれるようになったよ。
「ブランデン、皆も。今、みーが、順に回復させている。そのまま動かずに待っていろ。……あちらは大丈夫のようだからな」
そのアルバートさんの言葉に、みんなが改めてフィンレイを見る。さっきと同じ。少しも動いていないから大丈夫なはず。でも、寝たふりをしているだけかもしれないし、やっぱり一応、警戒はしておかないとね。
……まぁ、寝たふりをしていて、目の前に靴下があって、呻き声も、なんの反応もしない、なんてことはないだろうけど。
『回復、おわり!!』
「終わったと言っているが、どうだ?」
「ああ、完璧だ。みー、ありがとう」
見えないから、みーちゃんがいる場所と、真逆に向かってお礼をいう総団長さん。でも慣れているみーちゃんは気にせずに、
『なんてことないわ! じゃあ、次ねぇ』
と言って、今度はアンドリューさんを回復し始めたよ。
そしてフィンレイの方だけど、総団長さんの回復が終わる頃には、周りの黒い炎は、ほぼすべてフィンレイに戻り。戻った黒い炎も、これまでとは打って変わって、今にも消えそうな、弱々しい黒い炎に変わっていたんだ。
『はい、危険さん終わり!!』
「おっ! ここへ来る前よりも体の調子が良いぜ。ありがとな!!」
『……』
アンドリューさんも元気になって、ホッとした私。でも、アンドリューさんを回復してくれたみーちゃんが、なぜかじっとアンドリューさんの足を見ていて。何かあるのかと、また不安になって、みーちゃんに声をかけたよ。
「みーちゃん、どちたの? なにかある?」
『……う~ん。あのね、危険さん、靴下はとっても臭い。もしかしたら、あの人間よりも危険。だけど靴下はあれだけ臭いのに、足だけだと臭くない』
その言葉に、私とピィ君とミッケ、そしてあー君たちが、一斉にアンドリューさんの足を見る。
『そういえば?』
『確かに臭くないかも?』
『え? 本当?』
『でも、確かに今、臭くないよね? 誰も倒れてない』
『俺、確かめてみる!!』
なんて、かー君が言ったもんだから、私もみんなも慌てて止めようとしたよ。でもその前にアルバートさんが、
「やめないか!!」
って、大きな声を出して止めてくれたんだ。大きな声にビックリして止まったかー君。
「それは後で確かめればいい。もしも今、倒れたらどうするんだ」
『あ、うん、そうだよな。ごめんな』
ふぅ、思わず溜め息を吐いちゃった。なんて危険な事を。でも、そうか。もしも臭かったら、今頃みんな倒れてるか、もっと具合が悪くなってたよね。
臭靴下のことしか考えてなかったから、危うくもっと大変なことになるところだった。完璧な作戦なんて言ったけど、後でみんなを危険に晒したこと、謝らなくちゃ。
簡単に、今の状況をアルバートさんが、アンドリューさんたちに伝えてくれて、苦笑いの総団長さんたちに、私たち同様、不思議そうに自分の足を見たアンドリューさん。アンドリューさんはもともと、自分の靴下の匂いが、全然分からないんだ。あれだけ危険な匂いなのにね。
って、だから今はフィンレイだよ。アルバートさんが一部、結界を開いてくれて、そこから総団長さんは息を止めて、アンドリューさんはそのまま、フィンレイの方へ歩いて行って。
それから、みーちゃんに回復してもらった、エディスンさんとヒルドレッドさんも、総団長さんたちに合流したんだ。だけど……。
息をするために、結界に戻ってくる総団長さんたち。ただ、それを繰り返して、フィンレイに何もしないの。こういう時って、こう何かでぐるぐる巻きにして、犯罪者を動けないようの拘束するんじゃないの? それか、魔法で何かするとか。
靴下の前に顔があるといっても、早くしないと、フィンレイが復活しちゃうかも。
「しょだんちょうしゃん、なんでちゅかまえないの?」
「ああ、ちょっとな」
ちょっと?
「あれですよ。もう少しで消えそうですが、フィンレイは、あのおかしな黒い炎のようなものを、まだ体に纏っているでしょう? あれに触れても大丈夫か、分かりませんからね。それの確認をどうするか考えているところです」
あー、そうか。あ、でもそれなら、私の体はあの黒い炎を弾いていたから、私がどうにかすれば良いんじゃないか? 私はすぐに、そのことを総団長さんたちに話したよ。
でも、その後は? って。運ぶにしても何をするにも、やっぱり触らないといけ
ないし、それを私ができるかといえばね。ということで結局、私も何もできず。
う~ん、もう少しで消えそうなんだよなぁ。フィンレイは気絶しているけれど、こう、もう少し何かできない? トドメみたいなやつ。
と、考えていると総団長さんが、私たちに先に宿舎に戻るように言ってきて、私たちはエディスンさんとヒルドレッドさんと一緒に、ミッケたちが開いてくれた入り口から帰ることになったんだ。
「エディスンは、そのままリアたちの護衛を。ヒルドレッドは、あれを持ってきてくれ。あいつの靴下をしまう箱だ。さすがに汚物の付いたものを、あいつも履いて帰れないだろうし、箱に入れないと、俺たちが動けん。もし滑って転んで、鼻にでも付いたら、それこそ俺でも気絶する」
獣人って滑って転ぶのか? 私ならいざ知らず。それはそれで見てみたい。なんて、ちょっと思ってしまった私。でも、鼻につくのは、確かにダメだなと思って。
いくら強い総団長さんたちでも倒れて、その後何か障害が残ったら? 治癒魔法をかけてもらっても、完璧に治らなかったら? それどころか全部の力が使えななる可能性も。いくらニーンの加護があるとはいえ不安だよ。
と、そこまで考えた時。私はハッとして、次の瞬間には、息を止めて走っていた。ついでにマジックバックから、木でできたコングみたいな物を出しながらね。
そうして、私が急いで近づいたのは、気絶中のフィンレイ。私の行動に、すぐにアンドリューさんが、私を抱き上げようとする。でも私はそれを制止して、木のコングで臭靴下を挟むと、フィンレイの鼻の上に直接置いた。
それから、グイグイ鼻に押し付けて……と。あ、ちょっと臭靴下が、鼻の穴に入った。このままもう少し入れるか……。たまたま鼻に臭靴下が入ったから、ついでにグイグイ押し込む。
そうしたら、気絶しているはずにフィンレイが、グエェだからクエェだか変な声をげ。体を痙攣させたんだ。その後……。
私はアンドリューさん抱っこされて、結界の中へ戻る。そんな私を、ピィ君は足踏みで、ミッケたちは拍手で迎えてくれたよ。それからアンドリューさんには、
「急に近づいたのはダメだが、……お前、容赦ないな」
って言われたよ。
「くろいほのおきえた。これでかんぺき!!」
今のフィンレイは、完璧に黒い炎が消えた状態。普通のフィンレイに戻ったんだ。フィンレイが変な声をあげてすぐだったよ。消えそうだった黒い炎が揺らめいたかと思うと、スッと消えたの。
それだけじゃないんだ。フィンレイの体から黒いモヤモヤした物が出てきて、空に向かって飛んで行き、そしてそのまま、弾けるように消えたんだ。
さっき私が考えたやつ。全部の力が使えなくなっても、ってやつね。もしかしたら、フィンレイの黒い炎にも使えるんじゃないかって思って、やってみたらやっぱり消えたよ。
「こうかは、てきめん!!」
「はぁ。おい、奴を拘束の鎖で捕えろ。それからリアたちは、先に宿舎へ戻りなさい。エディスン、頼む」
「はっ」
『リア、帰るんだじょ!!』
『ぴぴぴぴぴぃ!!』
「うん!!」
『はぁ、やっと帰れるよ』
『こんな危険な場所からは、早く帰った方がいい』
『やっぱり、あいつより臭靴下の方が危険だよね』
『まぁ、あいつはあいつで危険だから、やっぱり気をつけなくちゃいけないけど』
『他の子たちに、ちゃんと伝えておかないとね』
『臭靴下は危険』
あー君たちに中では。フィンレイよりも危険なものとして、アンドリューさんの臭靴下は認定されたらしい。
入り口に入る前に、ふと後ろを振り向く。と、みんなの会話をアルバートさんが総団長さんたちに伝えてくれて。アンドリューさんは大笑い、総団長さんは苦笑いしていたよ。私たちと一緒にいる、エディスンさんとヒルドレッドさんもね。
そして、その向こうで、靴下を顔に乗せたままのフィンレイ……。
はぁ、大変だった。そう思いながら私はみんなと手を繋ぎ、入り口に乗って。そうして数秒で宿舎へ戻ったんだ。
『ぴぴぴぴぴぃっ!!』
『凄いんだじょ!!』
『ブワッとだよ、ブワッと!!』
『違うよ、しゅごごごごご、だよ』
『それも違うわよ。しゅー、よ』
『違うんだじょ。ずぞぞぞぞなんだじょ』
『ぴぴぴぴぃーぴ!』
いや、どれでも良いから、黒い炎の動き方の音なんて。それよりも、もっと大事なことがあるでしょう!
なんて、みんなの感想に、心の中でツッコミを入れる。まぁ、私も最初は、思わず大きな声を出しちゃったけどさ。
『どんどん、あの人間に戻っていくよ!』
『ブワァ!!』
『しゅごごごごご!』
『しゅー!』
『ずぞぞぞぞなんだじょ!』
『ぴぴぴぴぃーぴ!』
『しゅぺぺぺぺ!』
誰だ、変な音を言ってるのは。
『……ウエ~イで良いんじゃないかな? 戻る速さと、ちゃんと臭が効いたのと、あいつが吐いてよろよろになって、今のところ良いことばかり。だから、良いねのウエ~イ』
『……あ、それで良いじゃん』
『……それで良いわね』
『『『うえ~い!!』』』
『ウエ~イなんだじょ!!』
『ぴぴ~ぴ!!』
……もう、ミッケたちは放っておこう。それよりも黒い炎だよ。
黒い炎は、フィンレイが吐いて膝をつき、四つん這いになってからすぐに、フィンレイの元へ凄い勢いで戻り始めたんだ。
最初に結界にまとわりついていた黒い炎が、それから私たちがいる部屋の中の黒い炎が。その後も、隣の部屋や、建物の周り。他からも次から次に、フィンレイの体に戻っていっているよ。
そして、アンドリューさんの臭靴下にやられた、フィンレイ本人は……。
なんとか靴下を遠くに投げようとしたんだけど、臭いでたられていて力が出なかったのか、1メートルも遠くに飛ばせず。ずっと臭いにやられてる、って感じかな。
「グッ、オエッ、ゲホゲホッ!!」
しかも、結界の中の匂いまで、アルバートさんがフィンレイの方へ流したからね。ダブルで苦しむことに。あ、また吐いた。
『ウエ~イなんだじょ!!』
『『『ウエ~イ!!』』』
『ぴぴ~ぴ!!』
「お前たち、変なことを言っていないで、移動の準備をしろ。それと……今ならできるだろう。みー、ブランデンたちの回復を。私はまだ、結界を消すわけにはいかないからな」
『は~い。すぐに治すわね」
『じゃあ俺たちはこっち』
『リア、入り口に入る準備だって』
『あっ! 待ってみんな!! あいつが!!』
あー君の声に、みんながフィンレイの方を振り向く。総団長さんたちはずっと見ていたから、フィンレイの様子に気づいていたけどね。
ついに。そうついに、フィンレイがその場に倒れたんだ。自分の吐いたものの上にね……。それから目は白目を向いていて、口は半開きで涎を流し、呼吸は……あれ、止まってないよね?
「みー、皆を」
『うん!! まず毛がギザギザさんから」
「ブランデンだ」
フィンレイが倒れたことに、またみんなが止まって喜んだけど、もう1度アルバートさんに声をかけられて動き出す。
それと、あー君たち妖精は、私や数人は普通に名前で呼ぶけど、他は大体あだ名で呼ぶんだ。自分たちで考えたね。総団長さんは、頭の毛がギザギザに見えるから、毛がギザギザさん。
ヒルドレッドさんは、ヒルドレッドって呼んだり、毛がピンッ! っていったり。時々ヒルドレッドさん、寝癖が治らなくて、一部が触覚みたいになっている時があるんだ。それでね。
エディスンさんは、ぼくたちのハーチーおじさん。森や林の奥には、大きさが大型犬くらいで、蜂に似たハーチーという魔獣がいてね。そのハーチーの巣には、美味しい蜜がいっぱいあるんだ。
でも、ハーチーはとても危険な魔獣だから、なかなか近づくことができない。そんなハーチーの蜜を、エディスンさんは時々持って帰ってきてくれて、私たちにくれるんだ。
あー君たちは蜜が大好き。だからあだ名が、ぼくたちのハチーチーおじさん。エディスンさんは、子供たちにも妖精たちにも大人気なんだよ。
そしてアンドリューさんだけど……。まぁ、ね。分かるでしょう? この前、あー君たちが倒れた時に、新しいあだ名がつきました。靴下つーわーさん。
靴下が、どんな臭いをしているか、みんな分からないうちに倒れちゃったでしょう? でもきっと、つわ~んと臭いが漂ってきたはずだから、そのつわ~んからとって、靴下つーわーさん。後はそのまま、靴下危険さんって呼ばれるようになったよ。
「ブランデン、皆も。今、みーが、順に回復させている。そのまま動かずに待っていろ。……あちらは大丈夫のようだからな」
そのアルバートさんの言葉に、みんなが改めてフィンレイを見る。さっきと同じ。少しも動いていないから大丈夫なはず。でも、寝たふりをしているだけかもしれないし、やっぱり一応、警戒はしておかないとね。
……まぁ、寝たふりをしていて、目の前に靴下があって、呻き声も、なんの反応もしない、なんてことはないだろうけど。
『回復、おわり!!』
「終わったと言っているが、どうだ?」
「ああ、完璧だ。みー、ありがとう」
見えないから、みーちゃんがいる場所と、真逆に向かってお礼をいう総団長さん。でも慣れているみーちゃんは気にせずに、
『なんてことないわ! じゃあ、次ねぇ』
と言って、今度はアンドリューさんを回復し始めたよ。
そしてフィンレイの方だけど、総団長さんの回復が終わる頃には、周りの黒い炎は、ほぼすべてフィンレイに戻り。戻った黒い炎も、これまでとは打って変わって、今にも消えそうな、弱々しい黒い炎に変わっていたんだ。
『はい、危険さん終わり!!』
「おっ! ここへ来る前よりも体の調子が良いぜ。ありがとな!!」
『……』
アンドリューさんも元気になって、ホッとした私。でも、アンドリューさんを回復してくれたみーちゃんが、なぜかじっとアンドリューさんの足を見ていて。何かあるのかと、また不安になって、みーちゃんに声をかけたよ。
「みーちゃん、どちたの? なにかある?」
『……う~ん。あのね、危険さん、靴下はとっても臭い。もしかしたら、あの人間よりも危険。だけど靴下はあれだけ臭いのに、足だけだと臭くない』
その言葉に、私とピィ君とミッケ、そしてあー君たちが、一斉にアンドリューさんの足を見る。
『そういえば?』
『確かに臭くないかも?』
『え? 本当?』
『でも、確かに今、臭くないよね? 誰も倒れてない』
『俺、確かめてみる!!』
なんて、かー君が言ったもんだから、私もみんなも慌てて止めようとしたよ。でもその前にアルバートさんが、
「やめないか!!」
って、大きな声を出して止めてくれたんだ。大きな声にビックリして止まったかー君。
「それは後で確かめればいい。もしも今、倒れたらどうするんだ」
『あ、うん、そうだよな。ごめんな』
ふぅ、思わず溜め息を吐いちゃった。なんて危険な事を。でも、そうか。もしも臭かったら、今頃みんな倒れてるか、もっと具合が悪くなってたよね。
臭靴下のことしか考えてなかったから、危うくもっと大変なことになるところだった。完璧な作戦なんて言ったけど、後でみんなを危険に晒したこと、謝らなくちゃ。
簡単に、今の状況をアルバートさんが、アンドリューさんたちに伝えてくれて、苦笑いの総団長さんたちに、私たち同様、不思議そうに自分の足を見たアンドリューさん。アンドリューさんはもともと、自分の靴下の匂いが、全然分からないんだ。あれだけ危険な匂いなのにね。
って、だから今はフィンレイだよ。アルバートさんが一部、結界を開いてくれて、そこから総団長さんは息を止めて、アンドリューさんはそのまま、フィンレイの方へ歩いて行って。
それから、みーちゃんに回復してもらった、エディスンさんとヒルドレッドさんも、総団長さんたちに合流したんだ。だけど……。
息をするために、結界に戻ってくる総団長さんたち。ただ、それを繰り返して、フィンレイに何もしないの。こういう時って、こう何かでぐるぐる巻きにして、犯罪者を動けないようの拘束するんじゃないの? それか、魔法で何かするとか。
靴下の前に顔があるといっても、早くしないと、フィンレイが復活しちゃうかも。
「しょだんちょうしゃん、なんでちゅかまえないの?」
「ああ、ちょっとな」
ちょっと?
「あれですよ。もう少しで消えそうですが、フィンレイは、あのおかしな黒い炎のようなものを、まだ体に纏っているでしょう? あれに触れても大丈夫か、分かりませんからね。それの確認をどうするか考えているところです」
あー、そうか。あ、でもそれなら、私の体はあの黒い炎を弾いていたから、私がどうにかすれば良いんじゃないか? 私はすぐに、そのことを総団長さんたちに話したよ。
でも、その後は? って。運ぶにしても何をするにも、やっぱり触らないといけ
ないし、それを私ができるかといえばね。ということで結局、私も何もできず。
う~ん、もう少しで消えそうなんだよなぁ。フィンレイは気絶しているけれど、こう、もう少し何かできない? トドメみたいなやつ。
と、考えていると総団長さんが、私たちに先に宿舎に戻るように言ってきて、私たちはエディスンさんとヒルドレッドさんと一緒に、ミッケたちが開いてくれた入り口から帰ることになったんだ。
「エディスンは、そのままリアたちの護衛を。ヒルドレッドは、あれを持ってきてくれ。あいつの靴下をしまう箱だ。さすがに汚物の付いたものを、あいつも履いて帰れないだろうし、箱に入れないと、俺たちが動けん。もし滑って転んで、鼻にでも付いたら、それこそ俺でも気絶する」
獣人って滑って転ぶのか? 私ならいざ知らず。それはそれで見てみたい。なんて、ちょっと思ってしまった私。でも、鼻につくのは、確かにダメだなと思って。
いくら強い総団長さんたちでも倒れて、その後何か障害が残ったら? 治癒魔法をかけてもらっても、完璧に治らなかったら? それどころか全部の力が使えななる可能性も。いくらニーンの加護があるとはいえ不安だよ。
と、そこまで考えた時。私はハッとして、次の瞬間には、息を止めて走っていた。ついでにマジックバックから、木でできたコングみたいな物を出しながらね。
そうして、私が急いで近づいたのは、気絶中のフィンレイ。私の行動に、すぐにアンドリューさんが、私を抱き上げようとする。でも私はそれを制止して、木のコングで臭靴下を挟むと、フィンレイの鼻の上に直接置いた。
それから、グイグイ鼻に押し付けて……と。あ、ちょっと臭靴下が、鼻の穴に入った。このままもう少し入れるか……。たまたま鼻に臭靴下が入ったから、ついでにグイグイ押し込む。
そうしたら、気絶しているはずにフィンレイが、グエェだからクエェだか変な声をげ。体を痙攣させたんだ。その後……。
私はアンドリューさん抱っこされて、結界の中へ戻る。そんな私を、ピィ君は足踏みで、ミッケたちは拍手で迎えてくれたよ。それからアンドリューさんには、
「急に近づいたのはダメだが、……お前、容赦ないな」
って言われたよ。
「くろいほのおきえた。これでかんぺき!!」
今のフィンレイは、完璧に黒い炎が消えた状態。普通のフィンレイに戻ったんだ。フィンレイが変な声をあげてすぐだったよ。消えそうだった黒い炎が揺らめいたかと思うと、スッと消えたの。
それだけじゃないんだ。フィンレイの体から黒いモヤモヤした物が出てきて、空に向かって飛んで行き、そしてそのまま、弾けるように消えたんだ。
さっき私が考えたやつ。全部の力が使えなくなっても、ってやつね。もしかしたら、フィンレイの黒い炎にも使えるんじゃないかって思って、やってみたらやっぱり消えたよ。
「こうかは、てきめん!!」
「はぁ。おい、奴を拘束の鎖で捕えろ。それからリアたちは、先に宿舎へ戻りなさい。エディスン、頼む」
「はっ」
『リア、帰るんだじょ!!』
『ぴぴぴぴぴぃ!!』
「うん!!」
『はぁ、やっと帰れるよ』
『こんな危険な場所からは、早く帰った方がいい』
『やっぱり、あいつより臭靴下の方が危険だよね』
『まぁ、あいつはあいつで危険だから、やっぱり気をつけなくちゃいけないけど』
『他の子たちに、ちゃんと伝えておかないとね』
『臭靴下は危険』
あー君たちに中では。フィンレイよりも危険なものとして、アンドリューさんの臭靴下は認定されたらしい。
入り口に入る前に、ふと後ろを振り向く。と、みんなの会話をアルバートさんが総団長さんたちに伝えてくれて。アンドリューさんは大笑い、総団長さんは苦笑いしていたよ。私たちと一緒にいる、エディスンさんとヒルドレッドさんもね。
そして、その向こうで、靴下を顔に乗せたままのフィンレイ……。
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