猫又と俺の願いを縫う不思議な工房

ありぽん

文字の大きさ
64 / 91

64話 ぽよっと落とした宝物5

しおりを挟む
『晴翔!』

「ヒビキ、そっちはどうだって?」

『向こうにはなかったみたい。でももう少し場所を移動して探してくれるって』

「助かる!!」

『はりゅと!!』

「氷菓丸、そっちはどうだった!?」

『こっちなかっちゃ。でももいちど、しゃがちてみりゅ!! みんなもしゃがちてくれりゅ!!』

「ありがとう!!」

『晴翔、向こうにもなかったよ。でも転がったかもしれないし、僕たちも他を探してみる。ネズじいちゃんがみんなを呼んでくれたんだ』

『今よりもいっぱいの人数で、探せるぜ!』

「そうか、みんなありがとう。ネズじいちゃんにも後で直接お礼を言うけど、先のありがとうって伝えておいてくれるか!」

『『『は~い!』』』

『晴翔!!』

「ピヨ太、ピヨ助、ピヨ吉、どうだった!?」

『町中の鳥たちと、他の所に住んでる鳥にもお願いして、今探してもらってるよ』

『でもまだ、何か見つけたって情報もないぞ』

『このまま探す、任せて!』

「ありがとう、みんなにもありがとうって伝えてくれ」

『晴翔、こっちは1度、探した場所を確認した方が良いんじゃないか? 紛羽が行った場所、通った場所に、それぞれ探しに行ってもらったからな。とりあえず場所を確認して、探す人数が足りない所に、みんな行ってもらった方が良いかもしれない』

「そうだな」

 シロタマに言われ、完璧に探し終わった場所にはバツマークを付けて、引き続き探している場所には三角を、まだ報告がないな場所には丸を書いた。

 そう、俺たちは今、紛羽のボタン探し大作戦を行っている最中だ。

 紛羽が泣き止んでから俺たちはじっくりと、紛羽がここへくるまでに、どこへ寄ったのかを確認した。
 もちろん地図を見て、ここと、ここと、なんて紛羽が言えるわけないから。鴉天狗に手伝ってもらったんだ。

 俺とシロタマそして紛羽で鴉天狗の背に乗せてもらって、とりあえずボタンは探さずに、場所だけ確認。
 それから家に戻り、集まってくれたあやかしや動物たちに手分けしてもらい、ボタンを探してもらった。

 バツ、三角、丸を付けて確認すると、今の段階で8割がた、探し終わっているって感じか。ちなみに今俺たちが探している場所は、じいちゃんの家から近い場所だぞ。ほら。連絡を受けた時、なるべく俺たちがいる場所が、分かりやすい方が良いだろう?

 俺は紛羽の方を見る。俺が書いた印を見た後、とても心配そうな、不安そうな表情をして、また探し始めた紛羽。

 小さいボタンだからな、すぐに見つからないのは当たり前だけど。それでも探すところは確実に減ってきていて、あと少しで紛羽が行った場所の全部を探し終わることになる。もしそれでボタンが見つからなければ……。

 ただ、紛羽の探し方を見ていて、ちょっと気になる事が2つほどあった。たぶんそれはシロタマも気づいているだろう。さっき思わず顔を見合わせたし。もしもこのまま見つからないようなら、それについて確認しても良いかもしれない。

 こんな風に、気になることはあったものの、俺たちはそれからも、粉羽のボタンを探して続けた。そして……。

『これで最後の報告……。ボタン、なかったって』

 そのヒビキの報告に、一瞬でその場が静まり返る。でもそれは数秒で、その後は紛羽の啜り泣く声が響いた。

「紛羽……」

『うっく、うぇぇ。……みんな、ありがとぽよ。ボタン探してくれてありがとうぽよ。ヒック、ボクがダメだったのに、探してもらえて、とっても嬉しかったぽよ』

 泣きながらも、さっきみたいに泣くだけじゃなく、今度はちゃんとみんなに、お礼を言う紛羽。

『うぇぇ、ボクがなくしたのがいけないぽよ。ちゃんと責任取るぽよ。ひっく、小春喜んでくれるか分からないけど、新しい可愛くて綺麗なボタン、今から探すぽよ。ボタン、道にけっこう落ちてるぽよ。だから探すぽよ』

 泣きながら、その場を離れようとする紛羽。俺はそんな紛羽を止めようとする。さっきのちょっと気になることを聞くためだ。だけどその前にピヨ太たちが紛羽を止めた。

『待って粉羽! どうなる分からなかったから、一応拾ってきてたんだ。他のみんなもね。この中に使えるボタンはないかな?』

 なんと探してくれていたみんな、その時に見つけたボタンや綺麗な石なんかを、そのまま集めて、持ってきてくれていたんだ。

『まったく同じっていうのは、さすがにないだろうけど、どうかな?』

『……これ、全部拾ってくれたぽよ?』

『ああ。みんなでいろいろ考えてさ。大切な人間の大切なぬいぐるみなんだろう? まず忘れた人間が悪いし、なくしたお前もお前だけど。それでも何もしないより、ここから選ぶか、晴翔の家にあるボタンから選んで、ぬいぐるみにつけた方が、元のぬいぐるみに近づけられるよな、ってみんなで集めておいたんだ』

『それに、ちょっと違うぬいぐるみでも良いじゃんって。僕たちいろいろぬいぐるみを変身させるんだ。イケイケな格好とか、ゴーゴーな格好とか。サングラス付けたり、羽つけるし』

 ピヨ太たちはこの前まで、地域復興イベントの時の派手な格好をしていた。だけど最近は、俺が作ってあげたピヨ太たちのぬいぐるみに、いろいろ派手な格好をさせて、遊んでいるんだよ。そのことについて話すピヨ太たとち。

『だから、元の姿にこだわらないで、ちょっと進化しても良いんじゃない?』

『……変身、進化』

『そうだぞ! たまには別の格好でも良いんだぞ!!』

『この緑のボタンなんか綺麗。どう?』

『……』

『それにさ。こういうのって、今、全然見つからないのに、後でフッと突然見つかって、なんだよ! って思ったりするんだよね。そうしたら晴翔に、人間の所に送ってもらえば良いしさ。ね、まだできることはいろいろあるし、変身、進化って考えたら楽しいでしょう?』

『今、せっかくぬいぐるみを修復してる。だから修復楽しんだ方が良い。悲しい気持ちだと、ぬいぐるみも悲しい気持ちになる。そうしたら修復が上手くいないかもしれない』

 ピヨ太、ピヨ助、ピヨ吉の話しに考え込む紛羽。でも数分後、紛羽の表情がキリッとした。

『そうぽよ。悲しい気持ちのままは、ぬいぐるみにダメぽよ。元気じゃないとダメぽよ。みんなありがとうぽよ!! ボク、ダメなことしたけど、今のことを考えるぽよ!! 今はしっかり、ぬいぐるみを直してもらうぽよ!!』

 紛羽が立ち直ってくれたよ。はぁ、本当みんなには感謝だな。後でみんなにお礼をしないと。

『うんうん、その調子!!』

『よし、ボタン選ぼうぜ!!』

『たくさんある。きっと良いのがある』

『うんぽよ!!』

 みんなが集めてきたボタンに集まろうとする。と、そうだ。元気になってくれたのは良いけど、選ぶ前にあれについて聞かないと。もしかしたら、もう少ししだけ、探す場所が残っているかもしれないから。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

裏路地古民家カフェでまったりしたい

雪那 由多
大衆娯楽
夜月燈火は亡き祖父の家をカフェに作り直して人生を再出発。 高校時代の友人と再会からの有無を言わさぬ魔王の指示で俺の意志一つなくリフォームは進んでいく。 あれ? 俺が思ったのとなんか違うけどでも俺が想像したよりいいカフェになってるんだけど予算内ならまあいいか? え?あまい? は?コーヒー不味い? インスタントしか飲んだ事ないから分かるわけないじゃん。 はい?!修行いって来い??? しかも棒を銜えて筋トレってどんな修行?! その甲斐あって人通りのない裏路地の古民家カフェは人はいないが穏やかな時間とコーヒーの香りと周囲の優しさに助けられ今日もオープンします。 第6回ライト文芸大賞で奨励賞を頂きました!ありがとうございました!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ

さくら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。 絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。 荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。 優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。 華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。

処理中です...