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第3章 幼女編
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しおりを挟む「ほら、もう手を洗ってうがいをして来なさい」
わざと、子ども扱いするように私の頭を撫でて言う。むっとしながらそれに従って二人の元を離れると、二人の深刻そうな会話が聞こえてしまってこっそり隠れながら二人の話に耳を傾けた。
「悪かった。どうしてもあの子には厳しくできなくて」
「いいえ、あの子の不振な行動に気付いていながら今日の今日まで許容してしまっていた。どこかで歯止めをかけないとと思っていましたから。あの子には幸せになって欲しい。それは皆の願いです。これから命の危険に脅かされるなんてことがないようにしないといけない」
更に声に力が入るルイス。
「そう遠くない未来、ここは戦禍の中心となる。いずれは彼女を保護してくれるところへ嫁に出さなきゃいけない、ここに置いておくにはいかない。ギルだってそれを分かっていて、剣術ごっこに付き合ってやるつもりだったんだろう?」
「あぁ、護身術位ならと思ってな」
……やっぱりずっとここにはいられないんだ。皆が言う通りに私はただ守られる存在のままでいるしかないの?
ちょっと待ってよ、私ここに来てまだ5年しか経ってないの。戦況がまだよく分からないのよ。だけどこれだけははっきりしてる。私は絶対に遠くにお嫁に行くなんて嫌。
皆と一緒に戦いたい。だから、戦える強い力が欲しい。
敵が誰なのか、どうして戦争になっているのか。まだ詳しいことは分からない。
けれど険しい表情の彼を、癒し、で救えるのか。きっと救えないだろう。
自分が強くなれるのか分からない。だけど強くなれるかもしれないじゃないか。力を得てみないことには何も始まらない。
最初は、このままこのスパダリ伯爵様の妻になってやると意気込んでいた。だけど本当にそれを望むのかと、最近思うのだ。
前の人生で私の役割はなんだったんだろうって、何を残せたんだろうって、ふと思うのだ。
何も残せず、何も果たせず、あの時代にあの場所に私が生まれた意味があったのかって。
どうしてあの後輩の女の子にただ聞かれたら教えるだけで、やる気がない彼女を叱咤しなかったのだろう。
おかげで彼女は私に聞くことを覚え、それを繰り返すだけになってしまった。彼女に怠惰を覚えさせ、彼女の成長の機会を逃したのは私のせいでもあるんじゃないのか。
同期に対しても想い人としながら自分から何か彼に働きかけたり、自分の外見や性格を変えようなど努力したことはあったのだろうか。傷つく位ならこのままで良いと、現状に甘んじていたのではないのだろうか。
私は自分が善良であると思っていた。だけどそれは違った、善良なんてものではなかった。
皆が嫌がる仕事を引き受ける私は、こんなに頑張っているのに誰も分かってくれない、と一人悲劇のヒロインになっていただけだったのだ。
そのおかげで私はストレスを溜め挙句の果てには命を落とすハメになってしまった。
私は弱かったのだ、人に意見を言えず、頼まれれば一手に引き受けてしまう。周りと円滑な人間関係を結ぶことも放棄し、ただ目の前の仕事をこなすだけになっていた。
私はこの世界で何を望むんだろう。
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