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第4章 少女編 9才〜12才
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しおりを挟むそれから月日は流れ、私は9歳になっていた。
庭に佇むルイスを見つけて側へ歩み寄る。いつもだったら子どもらしく、彼の足元にまとわりついて目一杯の愛嬌を振り撒くのだが今日は違った。
彼の様子がいつもと違って見えたから、咄嗟に足へまとわりつくのを止めたのだ。
「ルイス、」
「リリア、お花に水をやってくれませんか?」
私が話し出すより先に、水の入ったジョウロを手渡された。
「うん」
近くに咲くマーガレットへ水をかけようとした時、
「リリア、実はその水には花を枯らせる毒が入っています」
「え!」
「今から魔法を教えます。水を浄化させる魔法です」
「は、はい!」
今まで頑なに魔法を教えてくれなかったのに、突然教えてくれるなんて!
嬉しくて思わず声が大きくなる。
「一度しか教えませんからね」
「はい」
「魔法をかける時、詠唱を唱えたり紋を書いて行います。私の真似をしてください」
そう言って、地面に紋章を書く。もっと複雑かと思ったらいたってシンプル。
真似をして促されるまま、じょうろの側面に同じ紋章を書く。
「水をその花へかけてみなさい」
綺麗に咲いている花を見て、思わず躊躇う。
「こんなに綺麗に咲いているのに、魔法が効いていなかったら……」
「それでは、リリアが魔法を使えたか分かりませんね」
やっぱりいつものルイスとはちょっと様子が違う。いつもだったらこんな意地悪なこと言わないのに。
意を決して、マーガレットに水をかける。
「あ、良かった。枯れない」
無事、ジョウロから毒が抜けて浄化できたようだ。今まで淡々としていたルイスは、その様子に驚いているように見えた。
「……次は、その水に栄養素を含ませる魔法を教えます」
「はい」
次は安心して魔法をかけられる。ルイスに教えてもらった通りにジョウロへ紋を書く。
そしてマーガレットに水をやった。今度は枯れてしまう心配はない。
「ふふふ。でもこれじゃ魔法が効いてるか分からないね」
しかし、水をかけた瞬間、みるみるしおれ枯れていくマーガレット。
「あれ、どうして!私、魔法間違えちゃった?」
慌てる私に、ルイスは無言だった。
「どうしよう、ごめんなさい」
「……謝る必要はありません。私が今あなたに教えた魔法は、毒を生成する魔法です」
毒!?
とんでもないことを言っているのに表情一つ変えず冷静なルイス。騙された私はまんまと水をかけて花を枯らせてしまった。恨むような目で、ルイスを見上げる。
「なんで、そんなこと。毒だと知ってたら水をかけなかった」
一体、どうして、そんなことをさせたの?
嘆く私に、ルイスはいつもなら慰めてくれるのに、今日ばかりはただただ今まで見たことのないような冷たい目で私を見下ろす。
「リリア、私は今あなたに二つ試しました。まず一つ目、魔法のかけ方。普通は長い詠唱と血紋が必要になります。ちなみに私は、簡易的な紋だけで魔法を発動できることが可能です。あなたにも私と同じことが可能か試したのですが……、結果は自分でも分かりますね?」
「……っ」
「二つ目、あなたの適性と魔力。今あなたに浄化と毒の魔法を教えました。浄化や治癒などは光魔法に属します。毒や呪殺などは闇魔法に属します。すでにあなたは4元素の魔法を扱えますが、そこまでは適性が合えば扱える領域です。しかし、今教えたこの二つを扱える人間はとても少ないのです。特に後者の闇魔法はこの世界で数える程しかいない」
「つまり……?」
「私は、今夜レイン様に殺されますね」
はぁ、と特大のため息をついたルイス。心配するような私の顔を見ると、やっと顔が綻んで何か諦めたかのように微笑んだ。張り詰めていた雰囲気が少しだけ和らぐ。
それじゃ、答えになっていない!と詰め寄りたい気もするが、ルイスのこんな複雑な表情は今まで見たことがない。彼の心労を察して口をつぐんだ。
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