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第4章 少女編 9才〜12才
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しおりを挟む……なんだその理不尽空間。信じたくなくて、空間の端っこを探るように走り回るが、だだっ広い空間が広がってるのみ。まるで、小さい頃見知らぬ土地で迷子になって、途方もなく彷徨い歩くような心細さ。
「いやだ、帰りたい!」
と、大声で泣き叫ぶと彼が隣にすっと現れた。
「いくら叫んだって無駄だよ。誰も助けに来れやしない。僕に君の持つ知識を提供するだけで良いのに。強情だな。なんだってこの僕が信用できないんだい」
「だって、うさんくさいもの。なんか悪いことしそうだもの!」
そう、はっきり言うと、またため息をついて、得意の長ったらしい講釈垂れを始めようとする。
「早く諦めてもらうために、君に特別に教えてあげよう」
「いやだ、知りたくない!」
これ以上、不安にかられるのは嫌だと、耳に両手を当てて「あー、わー、あーっ」と叫ぶ。
こっちの世界へ来て初めてのピンチ。しかもなんだかよく分からないけど、結構ヤバめの。
もしかしたら彼の話す内容に脱出のヒントがあるのかもしれないけど、今にも精神崩壊をきたしそうな自分の心を維持することが先決だ。
両手を組んで呆れたように私の様子を見ていたリンク。聞く耳をもたない私に、今度は脳内に直接声を送り込んできた。
『この空間は僕が絶対的な支配者、神様みたいなものなんだよ』
「うー、気持ち悪い、勝手に頭の中で喋らないで!」
未知の感覚に両耳を押さえていた手に力を込め、その場にしゃがみこむ。
『どのレベルでこの空間を見つけられないか、魔法を学び始めた君にはその絶望感を理解できないよね。例えて言うなら、いる世界の次元が違う感じかな』
『僕には君がいた世界を認識できる。だけどあちらからこちらはまだ未知なる領域。それを見つけるためには、僕が20年間かけて築き上げた、この世界を構築する空間魔法を解明しないと無理なのさ』
涙が止まらない、ここから絶対に出られないなんて信じたくない。
『さぁ、あの世界で僕と同等、いやそれ以上の神がかったことができる魔法師が果たしているだろうか』
……うぅー、うるさい、うるさい、うるさーい!
もう、嫌だぁー!
精神年齢45才のはずの中年女の心の叫び。え、なんかヒステリックっぽい?更年期ってやつ?
いやいや今は、そんなこと心配してる場合じゃない。
レイン様は魔法をなくすというし、よく分かんないこいつは前いた世界のことを話せって迫ってくるし。
というか、こんな私が36年間生きた世界を守ろうとしていることに驚きだわ。
こういう時は、こうやって泣き叫ぶに限る。
子どもの特権、自己中ルール発動しちゃるわ!
「もう何も考えたくない!お家に帰りたい!」
「は?だめだよ、何言ってんだよ」
「お腹が空いたからぁー!お家に帰りたい!」
そう言って、床へ背中をつけ両手両足をジタバタさせる。
9才でこの技を使って良いかは疑問が残るが、今自分が使える手はこれしか知らない。
「うるさいガキだな、さっさとお前の知ってることを話せって言ってるだろ!」
「知らないもん!早く帰りたい!」
「こんの!」
ふっとその瞬間、床が抜けて体がまっさかさまにすごい勢いで落ちていく。あまりの怖さに、悲鳴も泣き声一つもあげられない。
やだ、怖い、死にたくない……っ!その思いだけが、延々と頭の中をループした。涙がぶわぁっと溢れる。
「ねぇ、どう?話したくなった?」
私と同じ速度で落下しながら、リンクが尋ねてくる。私の隣であぐらをかいて、もはや泣き叫ぶ元気もないただ涙を流す私を楽しそうに見ている。
「ねぇ、君またここに空間の端っこ作ったらどうなると思う?君はトマトが高いところから落ちたみたいにペシャアって弾けちゃうねぇ」
「ねぇ、言いたくなっ「うわぁーん、うわぁー、嫌だぁー、死にたくないー!」
小さな体全部から振り絞るように大きな声で泣き叫んだ。
「ちょっとうるさいな!」
36年あの世界で生きてきて、突然死んだ時、あまりショックじゃなかったのに。今は絶対に死にたくない、と強く思える。だって、まだやり残してることが、目標があるから!
だから、
「死にたくないよー!だれか、助けてー!私はここにいるのー!早く見つけ出してー!」
心からの叫びに応えるように、すとっと体が誰かに抱きかかえられ、そのまま私を抱きかかえた人物は床へ静かに降り立った。
「な、ばかな、ありえない」
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