スパダリ伯爵様のため美少女となって魔界征服します

みずほ

文字の大きさ
21 / 21
第4章 少女編 9才〜12才

6

しおりを挟む
 
 ……なんだその理不尽空間。信じたくなくて、空間の端っこを探るように走り回るが、だだっ広い空間が広がってるのみ。まるで、小さい頃見知らぬ土地で迷子になって、途方もなく彷徨い歩くような心細さ。


「いやだ、帰りたい!」

 と、大声で泣き叫ぶと彼が隣にすっと現れた。

「いくら叫んだって無駄だよ。誰も助けに来れやしない。僕に君の持つ知識を提供するだけで良いのに。強情だな。なんだってこの僕が信用できないんだい」

「だって、うさんくさいもの。なんか悪いことしそうだもの!」

 そう、はっきり言うと、またため息をついて、得意の長ったらしい講釈垂れを始めようとする。

「早く諦めてもらうために、君に特別に教えてあげよう」

「いやだ、知りたくない!」

 これ以上、不安にかられるのは嫌だと、耳に両手を当てて「あー、わー、あーっ」と叫ぶ。

 こっちの世界へ来て初めてのピンチ。しかもなんだかよく分からないけど、結構ヤバめの。
 もしかしたら彼の話す内容に脱出のヒントがあるのかもしれないけど、今にも精神崩壊をきたしそうな自分の心を維持することが先決だ。

 両手を組んで呆れたように私の様子を見ていたリンク。聞く耳をもたない私に、今度は脳内に直接声を送り込んできた。

『この空間は僕が絶対的な支配者、神様みたいなものなんだよ』

「うー、気持ち悪い、勝手に頭の中で喋らないで!」

 未知の感覚に両耳を押さえていた手に力を込め、その場にしゃがみこむ。

『どのレベルでこの空間を見つけられないか、魔法を学び始めた君にはその絶望感を理解できないよね。例えて言うなら、いる世界の次元が違う感じかな』

『僕には君がいた世界を認識できる。だけどあちらからこちらはまだ未知なる領域。それを見つけるためには、僕が20年間かけて築き上げた、この世界を構築する空間魔法を解明しないと無理なのさ』

 涙が止まらない、ここから絶対に出られないなんて信じたくない。

『さぁ、あの世界で僕と同等、いやそれ以上の神がかったことができる魔法師が果たしているだろうか』


 ……うぅー、うるさい、うるさい、うるさーい!
 もう、嫌だぁー!

 精神年齢45才のはずの中年女の心の叫び。え、なんかヒステリックっぽい?更年期ってやつ?
 いやいや今は、そんなこと心配してる場合じゃない。

 レイン様は魔法をなくすというし、よく分かんないこいつは前いた世界のことを話せって迫ってくるし。

 というか、こんな私が36年間生きた世界を守ろうとしていることに驚きだわ。

 こういう時は、こうやって泣き叫ぶに限る。
 子どもの特権、自己中ルール発動しちゃるわ!


「もう何も考えたくない!お家に帰りたい!」

「は?だめだよ、何言ってんだよ」

「お腹が空いたからぁー!お家に帰りたい!」

 そう言って、床へ背中をつけ両手両足をジタバタさせる。
9才でこの技を使って良いかは疑問が残るが、今自分が使える手はこれしか知らない。

「うるさいガキだな、さっさとお前の知ってることを話せって言ってるだろ!」

「知らないもん!早く帰りたい!」

「こんの!」

 ふっとその瞬間、床が抜けて体がまっさかさまにすごい勢いで落ちていく。あまりの怖さに、悲鳴も泣き声一つもあげられない。
 やだ、怖い、死にたくない……っ!その思いだけが、延々と頭の中をループした。涙がぶわぁっと溢れる。


「ねぇ、どう?話したくなった?」

 私と同じ速度で落下しながら、リンクが尋ねてくる。私の隣であぐらをかいて、もはや泣き叫ぶ元気もないただ涙を流す私を楽しそうに見ている。

「ねぇ、君またここに空間の端っこ作ったらどうなると思う?君はトマトが高いところから落ちたみたいにペシャアって弾けちゃうねぇ」

「ねぇ、言いたくなっ「うわぁーん、うわぁー、嫌だぁー、死にたくないー!」

 小さな体全部から振り絞るように大きな声で泣き叫んだ。

「ちょっとうるさいな!」

 36年あの世界で生きてきて、突然死んだ時、あまりショックじゃなかったのに。今は絶対に死にたくない、と強く思える。だって、まだやり残してることが、目標があるから!

 だから、

「死にたくないよー!だれか、助けてー!私はここにいるのー!早く見つけ出してー!」


 心からの叫びに応えるように、すとっと体が誰かに抱きかかえられ、そのまま私を抱きかかえた人物は床へ静かに降り立った。


「な、ばかな、ありえない」

しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

構造理解で始めるゼロからの文明開拓

TEKTO
ファンタジー
ブラック企業勤めのサラリーマン・シュウが転生したのは、人間も街も存在しない「完全未開の大陸」だった。 ​適当な神から与えられたのは、戦闘力ゼロ、魔法適性ゼロのゴミスキル《構造理解》。 だが、物の仕組みを「作れるレベル」で把握できるその力は、現代知識を持つ俺にとっては、最強の「文明構築ツール」だった――! ​――これは、ゴミと呼ばれたスキルとガラクタと呼ばれた石で、世界を切り拓く男の物語。

ざまぁされるための努力とかしたくない

こうやさい
ファンタジー
 ある日あたしは自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生している事に気付いた。  けどなんか環境違いすぎるんだけど?  例のごとく深く考えないで下さい。ゲーム転生系で前世の記憶が戻った理由自体が強制力とかってあんまなくね? って思いつきから書いただけなので。けど知らないだけであるんだろうな。  作中で「身近な物で代用できますよってその身近がすでにないじゃん的な~」とありますが『俺の知識チートが始まらない』の方が書いたのは後です。これから連想して書きました。  ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。  恐らく後で消す私信。電話機は通販なのでまだ来てないけどAndroidのBlackBerry買いました、中古の。  中古でもノーパソ買えるだけの値段するやんと思っただろうけど、ノーパソの場合は妥協しての機種だけど、BlackBerryは使ってみたかった機種なので(後で「こんなの使えない」とぶん投げる可能性はあるにしろ)。それに電話機は壊れなくても後二年も経たないうちに強制的に買い換え決まってたので、最低限の覚悟はしてたわけで……もうちょっと壊れるのが遅かったらそれに手をつけてた可能性はあるけど。それにタブレットの調子も最近悪いのでガラケー買ってそっちも別に買い換える可能性を考えると、妥協ノーパソより有意義かなと。妥協して惰性で使い続けるの苦痛だからね。  ……ちなみにパソの調子ですが……なんか無意識に「もう嫌だ」とエンドレスでつぶやいてたらしいくらいの速度です。これだって10動くっていわれてるの買ってハードディスクとか取り替えてもらったりしたんだけどなぁ。

婚約破棄で追放された悪役令嬢ですが、隣国で『魔道具ネット通販』を始めたら金貨スパチャが止まりません〜私を追い出した王国は経済崩壊しました〜

ハリネズミの肉球
ファンタジー
「婚約破棄だ。君は国を裏切った」 王太子の冷たい宣言で、公爵令嬢セシリア・アルフェンはすべてを失う。 罪状は“横領と国家反逆”。もちろん冤罪だ。 だが彼女は静かに笑っていた。 ――なぜなら、彼女には誰にも知られていない能力があったから。 それは「異世界にいながら、現代日本のECサイトを閲覧できる」という奇妙なスキル。 隣国へ追放されたセシリアは、その知識を使い始める。 鏡。石鹸。ガラス瓶。香水。保存食。 この世界ではまだ珍しい品を魔道具で再現し、数量限定で販売。 さらに彼女は「配信魔道具」を開発。 商品制作の様子をライブ配信しながら販売するという、前代未聞の商売を始める。 結果―― 貴族たちは熱狂。 金貨の投げ銭が空を舞う。 セシリアの店は世界最大の商会へと急成長。 一方で、彼女を追放した祖国では異変が起きていた。 セシリアが管理していた輸出ルートが止まり、 物資不足、価格暴騰、そして経済崩壊。 焦った王太子が通信魔道具で泣きついてくる。 「戻ってきてくれ……!」 しかしセシリアはワイングラスを揺らしながら笑う。 「あ、その声はブロック対象です」 これは―― 婚約破棄された悪役令嬢が、世界経済を握るまでの物語。 ※本作品は、人工知能の生成する文章の力をお借りしつつも、最終的な仕上げにあたっては著者自身の手により丁寧な加筆・修正を施した作品です。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

ぼっちで死んだら、創造主が迎えに来た!

旬乃助
ファンタジー
(パ―――ン!カンカンカンカン!)(がやがやがや)(ズンチャカ♪ズンチャカ♪…)(ピコ…ピコ…ピコ…)(がやがやがや)一斉に行き交う人と車…。 少しばかりのお惣菜を機械にかざし…小さな財布から小銭を探す…「お金は此方に入れて下さいポイントカードは…」せきたてる言葉に身体が竦くむ。 街の喧騒から逃れる様に家路につく。そんな日々が続いている。 生をなして92年、何時お迎えが来ても良い様 身なりを整え床に就く…。 …   …     …『ニャー』 『…また、目覚めて…し…まった…?』 …? …? う うーん?…「「「…?…眩しいわ!!!」」」…白銀の世界が何処までも続いている… ―――「「「うるさいぞ!!!!」」」――― 「⁉…。」 何処からか声が…神?…女神?…口の悪い少女が立っていた… 「おぬしはこれから別世界に転生する」「…?」なんですと⁉「また人生をやれと⁉」やっとお迎えが来たと思ったら また いちからやれと…。「不満か?」そりゃあ不満ですとも、理不尽な世界、神がいるなら何とか出来なかったのか! 主人公小梅と創造主マロンが繰り広げるハチャメチャ異世界ファンタジー ちょっぴり笑えてちょっぴり切ない チートな物語

​弱小スキル【翻訳】が実は神スキルでした。追放されたが最強王国作ります

綾取
ファンタジー
万物の声を聴くスキル【翻訳】が実は【世界干渉】の神スキルでした~追放された俺が辺境を浄化して聖域を作ったら、加護を失った帝国が滅びかけてますがもう遅い。喋る野菜や聖獣たちと最強の王国を築きます

足手まといだと言われて冒険者パーティから追放されたのに、なぜか元メンバーが追いかけてきました

ちくわ食べます
ファンタジー
「ユウト。正直にいうけど、最近のあなたは足手まといになっている。もう、ここらへんが限界だと思う」 優秀なアタッカー、メイジ、タンクの3人に囲まれていたヒーラーのユウトは、実力不足を理由に冒険者パーティを追放されてしまう。 ――僕には才能がなかった。 打ちひしがれ、故郷の実家へと帰省を決意したユウトを待ち受けていたのは、彼の知らない真実だった。

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。 敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。 この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。 「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」 無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。 正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。

処理中です...