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第二十七話 週間、家を作る
ダンジョンマスターの朝は早い。
そして今日は――
「……もしかして、これ刺さるか?」
俺は新しく並べた棚を見ながら、ぼそりと呟いた。
小さな箱。
そして一冊の冊子。
タイトルは――
週間、家を作る。
「……やっちまったな」
食玩の流れで思いついた。
ミニチュア。
組み立て。
拡張。
「なら、これだろ」
“続くやつ”。
――最初は安い。
「創刊号、銅貨三枚」
手に取りやすい。
だが――
「次号から、銀貨三枚」
じわじわ来る。
しかも。
「シリーズ、長いぞこれ」
家だけじゃない。
庭。
別荘。
プール。
さらには街区まで。
「……どこでやめてもいい」
そう書いてある。
だが――
「(やめられないやつだな、これ)」
分かる。
これは鬼だ。
――結果。
「これ、ください」
「私も」
「創刊号、全部」
主婦たちが来る。
静かに。
だが確実に。
「……これで家が作れるの?」
「そうです」
「へえ……」
興味津々。
そして――
数日後。
「次号、まだ?」
「まだですか?」
「入ってないの?」
来た。
完全に来た。
「(ハマったな)」
しかも。
「これ、ここに付けるのよ」
「え、すごい……」
店内で見せ合っている。
組み上がったパーツ。
少しずつ完成していく家。
「……楽しい」
ぽつりと呟く。
その顔は――
完全に満足している。
さらに。
「バインダー、ありますか?」
「バインダー?」
「この本、綴じたいの」
「ああ……」
なるほど。
冊子も重要か。
「(そっちも来るのか)」
即座に取り寄せる。
そして――
「これもください」
「二つ」
「三つ」
売れる。
めちゃくちゃ売れる。
「(本屋かここは)」
思わずそう思う。
だが――
まだ終わらない。
ある日。
「……これは何だ」
声がした。
振り返る。
貴族だ。
明らかに上の人間。
「週間、家を作るです」
「家……?」
興味を持つ。
冊子をめくる。
サンプルを見る。
「……ほう」
目の色が変わる。
「これは……面白いな」
小さく呟く。
そして――
「全部、揃うのか?」
「続ければ」
「……いい」
即決。
「持ってこい」
「毎度あり」
こうして――
主婦だけでなく、
貴族層にも広がる。
ミニチュアの家。
拡張。
収集。
そして――
完成。
「(完全に文化だな)」
俺はカウンターの中で頷く。
食玩で火がつき、
シリーズで固定される。
これは強い。
非常に強い。
「……鬼だな」
自分で言っておいてなんだが、
これは本当に鬼だ。
やめどきがない。
続けたくなる。
そして――
完成したときの満足感。
すべて計算されている。
「(……怖いな、日本)」
異世界に来てまで思う。
だが――
『売上:安定増加』
『継続率:上昇』
「(うはうはだな)」
結論は同じだ。
――こうして。
コンビニはついに、
時間をかけて人を縛る装置へと進化した。
「……うち、ほんと何屋だよ」
その疑問だけが、
積み上がった冊子のように、
静かに厚みを増していくのだった。
そして今日は――
「……もしかして、これ刺さるか?」
俺は新しく並べた棚を見ながら、ぼそりと呟いた。
小さな箱。
そして一冊の冊子。
タイトルは――
週間、家を作る。
「……やっちまったな」
食玩の流れで思いついた。
ミニチュア。
組み立て。
拡張。
「なら、これだろ」
“続くやつ”。
――最初は安い。
「創刊号、銅貨三枚」
手に取りやすい。
だが――
「次号から、銀貨三枚」
じわじわ来る。
しかも。
「シリーズ、長いぞこれ」
家だけじゃない。
庭。
別荘。
プール。
さらには街区まで。
「……どこでやめてもいい」
そう書いてある。
だが――
「(やめられないやつだな、これ)」
分かる。
これは鬼だ。
――結果。
「これ、ください」
「私も」
「創刊号、全部」
主婦たちが来る。
静かに。
だが確実に。
「……これで家が作れるの?」
「そうです」
「へえ……」
興味津々。
そして――
数日後。
「次号、まだ?」
「まだですか?」
「入ってないの?」
来た。
完全に来た。
「(ハマったな)」
しかも。
「これ、ここに付けるのよ」
「え、すごい……」
店内で見せ合っている。
組み上がったパーツ。
少しずつ完成していく家。
「……楽しい」
ぽつりと呟く。
その顔は――
完全に満足している。
さらに。
「バインダー、ありますか?」
「バインダー?」
「この本、綴じたいの」
「ああ……」
なるほど。
冊子も重要か。
「(そっちも来るのか)」
即座に取り寄せる。
そして――
「これもください」
「二つ」
「三つ」
売れる。
めちゃくちゃ売れる。
「(本屋かここは)」
思わずそう思う。
だが――
まだ終わらない。
ある日。
「……これは何だ」
声がした。
振り返る。
貴族だ。
明らかに上の人間。
「週間、家を作るです」
「家……?」
興味を持つ。
冊子をめくる。
サンプルを見る。
「……ほう」
目の色が変わる。
「これは……面白いな」
小さく呟く。
そして――
「全部、揃うのか?」
「続ければ」
「……いい」
即決。
「持ってこい」
「毎度あり」
こうして――
主婦だけでなく、
貴族層にも広がる。
ミニチュアの家。
拡張。
収集。
そして――
完成。
「(完全に文化だな)」
俺はカウンターの中で頷く。
食玩で火がつき、
シリーズで固定される。
これは強い。
非常に強い。
「……鬼だな」
自分で言っておいてなんだが、
これは本当に鬼だ。
やめどきがない。
続けたくなる。
そして――
完成したときの満足感。
すべて計算されている。
「(……怖いな、日本)」
異世界に来てまで思う。
だが――
『売上:安定増加』
『継続率:上昇』
「(うはうはだな)」
結論は同じだ。
――こうして。
コンビニはついに、
時間をかけて人を縛る装置へと進化した。
「……うち、ほんと何屋だよ」
その疑問だけが、
積み上がった冊子のように、
静かに厚みを増していくのだった。
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