二つの魂は剣を振るう

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第二章

第32話「決意の双剣」

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 鋼の唸りが空を裂いた。
 カサンドラの長剣が振り下ろされるたび、大地は抉れ、土煙が視界を覆う。黒衣の将の一歩一歩が戦場の空気を重くし、王国兵の心臓を縛りつけた。

「下がるな! 踏みとどまれ!」
 セリナが声を張り上げ、槍の穂先で敵兵を押し返す。だが兵の顔は蒼白で、盾を持つ腕は震えている。

 その前に立ちはだかる小さな背中――リシア。
 彼女は右手に新しく鍛えられた直剣を、左手に折れた刃を仕立て直した短剣を握り、両腕を交差させるように構えていた。

(怖い……でも、退いたら、また誰かが死ぬ。あの時みたいに――もう嫌だ!)

 心臓の高鳴りと共に、胸の奥から別の声が響いた。
『思い出せ。重さでは敵わぬ。だが小柄だからこそ、速さで斬れる。二刀は一つを囮にし、もう一つで仕留めるのだ』

「うん……やってみる!」

 カサンドラが踏み込んできた。
 長剣の軌跡が稲妻のように走り、リシアは反射的に直剣を掲げる。
 衝撃が腕に食い込み、骨が軋む。だが、受け流すように斜めへと刃をずらし、同時に左手の短剣を閃かせた。

 カシャン! 火花が飛び散る。
 小さな銀の刃が、カサンドラの黒衣を裂き、その下の白い肩をかすめた。

 赤い線が浮かぶ。
 王国兵たちが息を呑み、次の瞬間、ざわめきが波のように広がった。

「当たった……!」「あの将に傷が……!」

 その声はたちまち周囲の兵の胸を震わせ、押されていた盾列がわずかに前へと進み出す。
 一方、帝国兵たちもまた、主の負傷に顔を歪めた。だがカサンドラが笑みを浮かべるのを見るや、逆に血の気を帯びて咆哮を上げる。

「……愉快ね」
 カサンドラが低く呟き、長剣を構え直す。
「その眼。前とは別人のようだ。だが――」

 言葉の続きを聞く前に、リシアは呼吸を整え、瞳を見開いた。
 青と金が交錯し、胸の奥でベルナルトの声が響く。

『恐れるな。お前の刃は届く。小さな傷でも、戦場を揺るがすのだ』

 リシアは短く息を吐き、両の刃を交差させて構え直した。
「……私は、私の剣で戦う」

 その声は、風にかき消されるほど小さかった。
 だが、彼女の背を見つめる王国兵たちには確かに届いた。

 セリナは槍を握る手に力を込める。
「リシア……そのまま、自分を信じろ」

 戦場はなおもざわめいている。希望と恐怖が入り交じり、空気が震える。
 カサンドラの長剣が太陽の光を反射し、リシアの銀に輝く瞳と交差する。

 ――ここからが本当の戦いだ。

 そう悟った瞬間、リシアは一歩前へ踏み出した。
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