めんどくさがりな彼女は、元おじさん

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第三章

第27話「父との休日」

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 日曜の朝。
 珍しく父さんがジャケットを着ず、ラフなシャツ姿でリビングに立っていた。
 コーヒーの香りが漂う中、新聞をたたみながらこちらを見やる。

「今日は久しぶりに休みだ。ひな、一緒に出かけるか?」

 思わず耳を疑った。
 父さんと二人きりで出かけるなんて、今まで一度もなかった。
 前世の俺にとって「父と休日」は遠い記憶で、気づけば失われていた時間だったから。



 行き先は近くの公園。
 ベンチに腰を下ろすと、父さんは缶コーヒーを開け、俺には缶ジュースを手渡してくれた。
 ふたつの缶が同じ音を立てて開く。その瞬間だけで胸が熱くなる。

「学校はどうだ?」
 父さんの問いは短くて不器用。でも、真剣に聞いてくれているのが伝わる。

「……まあ、それなり」
 口から出たのは、子どもらしい曖昧な返事。
 本当は、転生の戸惑いとか、友達との距離感とか、語りたいことは山ほどあるのに。

 けれど父さんは、それ以上問い詰めずに頷き、空を見上げた。
 沈黙が気まずくなく、むしろ心地よい。



 しばらくして、公園の端で小さな子どもが転んで泣いていた。
 父さんはすぐに駆け寄り、土を払ってやさしく声をかける。
 その姿に、胸の奥がじんとした。

 前世では「仕事人間」だった自分。
 父親として誰かを支える姿なんて、想像すらしなかった。
 けれど今、目の前の父さんは自然にそれをやってのける。

 俺は缶ジュースを握りしめたまま、小さくつぶやく。
(……こういうの、俺はできなかったな)



 帰り道、父さんがぽつりと口を開いた。
「ひな。おまえが楽しそうにしてると、それだけで俺も元気になるんだ」

 不意打ちのような言葉に、足が止まりそうになる。
 こんなこと、前世では誰にも言われなかった。
 それどころか、自分からも言ったことがなかった。

「……ふ、普通だよ」
 顔をそむけてごまかすしかない。
 でも胸の奥は、不思議な温かさでいっぱいになっていた。
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