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第三章
第28話「友情の芽生え」
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昼休みの教室は、弁当の匂いと子どもたちの声でいっぱいだった。
机を寄せ合ってワイワイ食べるグループ、廊下に出て走り回る子たち。
その中で俺――ひなは、自分の席で静かに弁当の包みを広げていた。
前世の癖で、つい「群れる」ことに身構えてしまう。
「ひな、一緒に食べよ」
唐突に声をかけてきたのは、さやだった。
当然のように椅子を引き寄せ、弁当箱をドンと置く。
断る間もなく、俺の机は二人用の小さな食卓になった。
⸻
「ねえ、昨日さ、プリクラ見返してたんだ」
さやが弁当をつつきながら、スマホを取り出す。
親のを借りているらしい。画面には、この前二人で撮ったプリクラが映し出されていた。
「ほら、ひなの目が変な方向向いてるやつ!」
画面を突きつけられ、俺は思わず吹き出した。
「……誰だよこれ。完全に半目じゃねーか」
「そうそう! でもわたしも口開いてるし、ふたりで変顔コンビだね」
周りの子たちも「なになにー?」と覗き込んできて、笑い声が広がった。
胸の奥がほんのり温かい。
大人だった頃、写真にこんなふうに笑ったことなんて一度もなかった。
⸻
「そういえばさ」
ひとしきり笑ったあと、さやが箸を止めてこちらを見つめてきた。
「ひなって、なにか好きなものある?」
不意打ちに、手が止まる。
好きなもの。
前世なら酒とか音楽とか、口にしていたかもしれない。
でも小学生の女の子がそんなことを言えるはずもなく、言葉が喉で詰まった。
「……まだ、探してるとこ」
正直な答えに、さやはきょとんとした後、にっと笑った。
「じゃあさ、見つけたら一番に教えてよ。わたしも一緒に探すから」
何気ない言葉なのに、不思議と胸が揺れる。
子どもらしい軽さなのに、まっすぐであたたかい。
俺にはもう失ったと思っていたものだった。
⸻
放課後。
「寄り道しよ」とさやに腕を引っ張られ、駄菓子屋に入る。
棚にはチョコ、スナック、ラムネがぎっしり並び、奥にはガチャガチャの機械が光っていた。
「ひなはどれにする?」
「え、別に……」と口を濁した瞬間、さやは勝手に二つのチョコを手に取った。
「じゃ、半分こね!」
帰り道、包装紙をむきながら笑うさやを見て、俺もつられて口元が緩んだ。
こんな小さな時間が、どうしてこんなに心を満たすんだろう。
⸻
気づけば、さやと過ごす時間を「面倒」とは思わなくなっていた。
むしろ、もう少し一緒にいたい――そう思う自分に驚く。
机を寄せ合ってワイワイ食べるグループ、廊下に出て走り回る子たち。
その中で俺――ひなは、自分の席で静かに弁当の包みを広げていた。
前世の癖で、つい「群れる」ことに身構えてしまう。
「ひな、一緒に食べよ」
唐突に声をかけてきたのは、さやだった。
当然のように椅子を引き寄せ、弁当箱をドンと置く。
断る間もなく、俺の机は二人用の小さな食卓になった。
⸻
「ねえ、昨日さ、プリクラ見返してたんだ」
さやが弁当をつつきながら、スマホを取り出す。
親のを借りているらしい。画面には、この前二人で撮ったプリクラが映し出されていた。
「ほら、ひなの目が変な方向向いてるやつ!」
画面を突きつけられ、俺は思わず吹き出した。
「……誰だよこれ。完全に半目じゃねーか」
「そうそう! でもわたしも口開いてるし、ふたりで変顔コンビだね」
周りの子たちも「なになにー?」と覗き込んできて、笑い声が広がった。
胸の奥がほんのり温かい。
大人だった頃、写真にこんなふうに笑ったことなんて一度もなかった。
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「そういえばさ」
ひとしきり笑ったあと、さやが箸を止めてこちらを見つめてきた。
「ひなって、なにか好きなものある?」
不意打ちに、手が止まる。
好きなもの。
前世なら酒とか音楽とか、口にしていたかもしれない。
でも小学生の女の子がそんなことを言えるはずもなく、言葉が喉で詰まった。
「……まだ、探してるとこ」
正直な答えに、さやはきょとんとした後、にっと笑った。
「じゃあさ、見つけたら一番に教えてよ。わたしも一緒に探すから」
何気ない言葉なのに、不思議と胸が揺れる。
子どもらしい軽さなのに、まっすぐであたたかい。
俺にはもう失ったと思っていたものだった。
⸻
放課後。
「寄り道しよ」とさやに腕を引っ張られ、駄菓子屋に入る。
棚にはチョコ、スナック、ラムネがぎっしり並び、奥にはガチャガチャの機械が光っていた。
「ひなはどれにする?」
「え、別に……」と口を濁した瞬間、さやは勝手に二つのチョコを手に取った。
「じゃ、半分こね!」
帰り道、包装紙をむきながら笑うさやを見て、俺もつられて口元が緩んだ。
こんな小さな時間が、どうしてこんなに心を満たすんだろう。
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気づけば、さやと過ごす時間を「面倒」とは思わなくなっていた。
むしろ、もう少し一緒にいたい――そう思う自分に驚く。
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