転生勇者を観察していたら、不可解だらけの日常が始まった件

Y-z

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第15話 排除の力

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 森の奥へと進むにつれ、空気は濃く淀んでいった。
 葉のざわめきも止み、生徒たちの息づかいだけがやけに大きく響く。

 次の瞬間、黒い影が木々の間から飛び出した。
 魔王の配下だろうか、獣じみた魔物が数体、唸り声をあげて牙を剥く。
 勇者パーティーが前に出て剣を構え、クラス全体に緊張が走った。



 私も実習用の剣を構える。
 だが――すぐに異常に気づいた。

 魔物の視線が、すべて私に注がれている。
 蓮でも、王女でも、魔術師でもない。
 勇者を差し置いて、私ばかりを狙っていた。

 突進してきた魔物の爪を受け止めた瞬間、腕に衝撃が走る。
 続けざまに、別の魔物が横合いから牙を剥く。
 ――偶然ではない。狙いが不自然に偏りすぎている。



「ルカ!? おかしいよ、なんでルカだけ!」
 カレンが叫び、ユウリが鋭く吐き捨てた。
「……これは意図的だ。舞台が、お前を狙わせている」

 胸の奥が冷え、足が鉛のように重くなる。
 呼吸が浅くなり、体が鈍る。
 まるで“ここで死ぬ役”が私に割り当てられているかのようだった。



「……そういうこと」
 私は剣を握り直し、低く呟いた。
「私は死なない。そんな役割、受け入れない」

 言葉を放った瞬間、絡みついていた圧力がわずかに揺らいだ。
 それでも完全には消えず、なお私の周囲にまとわりつく。



「ルカッ!」
 蓮が駆け寄り、魔物を弾き飛ばした。
 「どうして……君ばかり狙われるんだ!」
 困惑に満ちた声。彼自身も理解できていない。



 戦いは続いていた。
 だが私の中には、確かな感覚が残っていた。

『舞台は従わぬ者を排除しようとしている。
その方法は“死”の割り当て。
だが私は、それを拒絶した』

 不可解は、まだ序章にすぎない。
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