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影(???視点)

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※今話の続き(R18シーン)はありません♪ 寝室を覗きたかったけど警護の騎士さんに止められちゃいまして……、見たかった方、ごめんなさい☆彡





 * * * * * * *



 母が亡くなると当時の宰相、スデーションタの母方の祖父が父に後妻を迎えるよう勧めてきた。

 王家とシブツリトー侯爵家のつながりを強固なものにするため三番目の王子を誕生させシブツリトー侯爵家へ婿入りさせるべきです、と強く進言して。

 当時ノナーニュービ嬢の実父が治めていたシブツリトー侯爵領は裕福な地で、優秀でもあったシブツリトー侯爵がこの国へ与える影響力は大きかった。

 男児がいればシブツリトー侯爵家は何の心配もなく安泰だっただろう。
 だが、シブツリトー侯爵家には娘のノナーニュービ嬢しか子がいなかったうえに、夫人を亡くしたばかりの侯爵は生涯再婚しないと宣言しているという。

 女性が家を継ぐことのできないこの国では、男児がいない高位貴族は婿をとるか養子をとるか、もしくは領地を献上して王室預かりとするかの道を選ぶ。

 侯爵は、女性だからという理由で家を継ぐことのできないノナーニュービ嬢が将来しっかりとした婿を迎え、夫婦でシブツリトー侯爵領を守っていくことを望んでいたと聞く。

 シブツリトー侯爵は、第三王子が生まれたらノナーニュービ嬢と結婚させるという話を呑んだ。
 おそらく侯爵は、王家とのつながりを得たいと考えていたのではなく純粋に娘の幸せを願っていたのではないだろうか。

 すると第三王子の祖父という立場を掴むべく、当時の宰相は自分の娘、マーマナホアを父の後妻へと送り込んできた。
 王家のためと言っておきながら、結局は自分の地位を確固たるものにするため。

 そこまではまだよかった。
 宰相も、自分の娘が欲を出して息子を王にしたがるなんて思わなかったのかもしれないが。
 マーマナホアは、第三王子である自分の息子スデーションタを次の王の座につけたいと望んでしまった。

 愚かなことに、私やすぐ下の弟に毒を盛ろうと計画するなんて。

 だがまだはっきりと追及できる段階ではなかったので、証拠を掴むため泳がせながら身辺を調べ始めた。
 その結果、図らずもマーマナホアの父親が私の母を毒殺したという証拠を見つけてしまう。

 第三王子の祖父という立場を掴むため、邪魔だった母を殺した男。
 もう少し早く知れれば、自分の手で罰してやれたのに。
 私の母を毒殺したマーマナホアの父親は、少し前に病で倒れすでに亡くなっていた。

 代わりにマーマナホアとスデーションタを滅することで復讐を遂げようかとも思ったけれど。
 スデーションタの婚約者であるノナーニュービ嬢は努力家なうえに、私の妻とも親しくしているまっすぐで優しい心を持つ女性。
 婚約者のスデーションタが亡くなったら、きっと悲しい思いをさせてしまうだろう。

 だからこのまま見守ることにした。
 亡きシブツリトー侯爵の望み通り、ノナーニュービ嬢が夫婦で侯爵領を守り幸せに生きていけるのならと思って。
 自分の醜い復讐心など、放っておけばよいと。

 それなのに、少し調べてみるとノナーニュービ嬢がずいぶん不幸な状況に置かれていることが分かった。
 一緒に暮らしている叔父家族からも婚約者のスデーションタからも大切にされていない。
 しかもちょっと手を回してスデーションタにネムセーニ嬢を近付けたら、彼はコロッと目移りした。

 シブツリトー侯爵領は、前当主の治めていた頃の裕福な姿は見る影もなく、貧しく荒れていくし。

 それでも、最後のチャンスをやろうと思った。
 彼らはノナーニュービ嬢が新たな相手と結婚するまでの仮初めの存在だという事を、ひとりでも自覚していれば貴族籍のままでいさせてやろうと。

 つくづく甘いものだな、私も。
 それとも、意地が悪いのだろうか。
 チャンスを与えてもこの思いが裏切られることは、容易に想像できていたのだから。





 そろそろ、か。

 今夜も時間通りに彼は執務室へやって来た。

「スデーションタ殿下に、侯爵位剥奪の処分が下されました」
「そうか」

 つい先日までラカスデギサ商会の商人を演じていた影から報告を受ける。
 彼は王太子である自分のために、影となって働く存在。

 スデーションタは、なぜすぐに信じてしまったのか。
 いくら身内から紹介されたといっても、自分で調べればこんな商会は無いとすぐに分かるはずなのに。

 影は彼だけではない。
 ネムセーニ嬢が着ていた、胸に特殊な細工を施すドレスを彼女に勧めた商人も、私の影だ。
 そちらは影と言っても実際に商人として、日頃から市井に潜んでいる影。

「このままにしておけば、特に直接手を下さずとも路頭に迷い命尽きるものと思われます」
「そうだね……だが、そうしてしまうと噂を耳にしたノナーニュービ嬢が自分自身を責めてしまうかもしれない。それに可愛い弟の事でもあるしね」

 現王妃への態度のせいか私の事を冷酷だと言う者もいるようだけど、そんな事は無い。むしろ自分では甘すぎる方だと思う。

 少しお馬鹿で手のかかる下の弟なんて、平民となっても放っておけなくてついつい手を差し伸べてしまうくらいだ。

「せめて働き口は紹介してあげようか。スデーションタとネムセーニ嬢の好みを考えて、続けられそうな所がいいかな」

 ふたりとの会話を振り返り、思いついた就労先を手配するよう影に告げた。





 一仕事終え、スマテレナの待つ寝室へ行き扉の前にいた警護の騎士ふたりに声をかける。

「ご苦労様、ケトメーヤ、ゼーコゾノ。夜番は時間が長くて大変だと思うがよろしく頼む」

 ビシッと姿勢を正して敬礼するふたりに微笑を返す。
 寝室に入り、扉を閉める。夫婦だけで夜の時間を過ごせるように。

 天蓋から垂れるレースのカーテンをサラリと手でよけ、私を待つスマテレナに触れるためギシリとベッドを揺らした。

 今夜が初めての夜番となるゼーコゾノ、彼は童貞だと影からの報告を受けている。
 おそらく今夜は、彼にとって忍耐力が試される夜になるだろう。

 この部屋から聞こえてくる音に加えてスマテレナの声で妄想を滾らせずにはいられないはずだ。
 股間を膨らませたままいつまで立っている事ができるだろうか。
 交代の時間までズボンを濡らさずに済めばいいが。

 明日の朝、彼の顔を見るのが楽しみだ。





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