溺愛を作ることはできないけれど……~自称病弱な妹に婚約者を寝取られた伯爵令嬢は、イケメン幼馴染と浮気防止の魔道具を開発する仕事に生きる~

弓はあと

文字の大きさ
5 / 12

浮気防止アラーム

しおりを挟む


 * * * * *


 ――リストを浮気防止用魔道具の実験台にすればいい。
 そんなやり取りをリストのひいお爺様としたのが三日前。

 私は今、職探しを始めた日にリストと面談をしたギルドにいる。
 ひいお爺様からの情報で、リストが仕事でギルドを訪問する日時を聞いていたから。

 私は短い髪のウィッグと帽子を被り男性用の服を着て変装し、職業案内を眺めるフリをしながらリストの様子を観察中。

 リストは受付で、女性職員と話している。

 昨日第二工房を訪れたリストへ、私は初めて作った魔道具の懐中時計を渡した。
 懐中時計には、リストの髪の毛を一本まきつけた魔法石を内部にセットし、リストの感情に反応するよう準備済み。

 ただ……。
 箱に入れ綺麗に包み、購入したように偽造した懐中時計をリストへ渡した時は心が痛んだ。
 リストの顔を見る事ができなくて、懐中時計の入ったプレゼントの箱を机に置いて、「仕事を紹介してくれたお礼。懐中時計なの、よかったら使って」と言いながらスッとリストの方へ差し出すのが精一杯で。

 ちょうど懐中時計が欲しかったのか、「ありがとう、大切にする」と嬉しそうなリストの声が聞こえてようやく顔を上げる事ができた。
 でも顔を上げたら、優しく微笑むリストと目が合ってしまって。
 胸が、ズキズキ痛かった。

 実験台にした事、後で謝って許してくれるかしら。

 受付にいるリストを見つめながら、ついそんな事を心配してしまう。


 ん……?
 リストったら、たくさんの女性から話しかけられているわね。

 番号札を受け取ったリストは、壁に軽く寄りかかって立っていた。
 再び呼ばれるのを待っているみたいだけど。
 見た目がいいせいか、次から次へと女の人から話しかけられている。

 なぜか急に、胸がムカムカしてきた。

 朝、食事をせずにコーヒーだけ飲んだのが悪かったのかしら。
 それにしても……。
 なかなか鳴らないわ、アラームの音。
 リストに話しかけている女性たちのなかには、リストの身体へ触れてくる人もたくさんいるのに。

 懐中時計に仕込んだ魔法石の色味が、微妙に違ったのかな……。

 魔法石は簡単に削ったりくっつけたりする事ができる。
 溶かしたり、混ぜたりする事も可能。
 今回私が加工して作り出した非常に小さな魔法石の色は、ピンクに薄い紫のマーブル模様。

 浮気に繋がる感情の『異性への好意とちょっとした性的興奮』を表す魔法石の色。

 その感情を感知すると、アラームが鳴る仕組みになっていて。
 リストの感情だけに反応するように、魔法石にはリストの髪を巻きつけてある。

 ぁ、胸とお尻が出ていて腰が細い、ボンキュッボンでお色気たっぷりの女性が来たわ。
 あれだけ魅力的な女性なら、絶対に反応するはず。
 しかもリストに話しかけながら腕を絡ませ胸を押しつけている。
 これだと男性は堪らないでしょう。

 ……
 …………
 ……音、鳴らない……

 もしかしてリスト、私がプレゼントした懐中時計を今は持ってないのかしら。
 まだ箱から開けてもいない、とか?

 そう考えながら見ていたら、リストが動いた拍子に上着の内側に鎖が見えた。
 ボタンホールに付けられた鎖がベストのポケットの方へと伸びている。

 おそらく懐中時計の、鎖。

 私があげた物の? それとも、違う?

 ボンキュッボンな女性の腕をやんわりと自分の腕から外したリストが、二言三言発すると女性はすぐに去っていった。

 他の女性から話しかけられる前にリストへ声をかける。
 私と視線がぶつかった瞬間、リストの目が大きく見開いた。

「センティア!? どうしたんだその格好は?」
「ごめんねリスト、詳しくは後で。とりあえずベストのポケットにある懐中時計を見せて」
「ぇ、ぇ、センティア? ぉぃ、どこに手を入れ……っ」

 リストに身体を寄せ上着の中へ手を滑らせて、脇腹辺りにあるベストのポケットをまさぐる。

 ジリリリリリリリリ……

 ぇ、今!?

 アラーム音が鳴り響いている。
 ボンキュッボンなお姉さんはもういないのに。

 リストのポケットから取り出したそれは、間違いなく私が作った懐中時計だった。

 まさか誤作動するなんて……。
 残念、今回私が作った魔道具は失敗だったみたい。





しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

婚約破棄をされて魔導図書館の運営からも外されたのに今さら私が協力すると思っているんですか?絶対に協力なんてしませんよ!

しまうま弁当
恋愛
ユーゲルス公爵家の跡取りベルタスとの婚約していたメルティだったが、婚約者のベルタスから突然の婚約破棄を突き付けられたのだった。しかもベルタスと一緒に現れた同級生のミーシャに正妻の座に加えて魔導司書の座まで奪われてしまう。罵声を浴びせられ罪まで擦り付けられたメルティは婚約破棄を受け入れ公爵家を去る事にしたのでした。メルティがいなくなって大喜びしていたベルタスとミーシャであったが魔導図書館の設立をしなければならなくなり、それに伴いどんどん歯車が狂っていく。ベルタスとミーシャはメルティがいなくなったツケをドンドン支払わなければならなくなるのでした。

妹に婚約者を奪われたので、田舎暮らしを始めます

tartan321
恋愛
最後の結末は?????? 本編は完結いたしました。お読み頂きましてありがとうございます。一度完結といたします。これからは、後日談を書いていきます。

(完結)私は一切悪くないけど、婚約破棄を受け入れます。もうあなたとは一緒に歩んでいけないと分かりましたから。

しまうま弁当
恋愛
ルーテシアは婚約者のゼスタから突然婚約破棄を突きつけられたのでした。 さらにオーランド男爵家令嬢のリアナが現れてゼスタと婚約するとルーテシアに宣言するのでした。 しかもゼスタはルーテシアが困っている人達を助けたからという理由で婚約破棄したとルーテシアに言い放ちました。 あまりにふざけた理由で婚約破棄されたルーテシアはゼスタの考えにはついていけないと考えて、そのまま婚約破棄を受け入れたのでした。 そしてルーテシアは実家の伯爵家に戻るために水上バスの停留所へと向かうのでした。 ルーテシアは幼馴染のロベルトとそこで再会するのでした。

【完結】新婚生活初日から、旦那の幼馴染も同居するってどういうことですか?

よどら文鳥
恋愛
 デザイナーのシェリル=アルブライデと、婚約相手のガルカ=デーギスの結婚式が無事に終わった。  予め購入していた新居に向かうと、そこにはガルカの幼馴染レムが待っていた。 「シェリル、レムと仲良くしてやってくれ。今日からこの家に一緒に住むんだから」 「え!? どういうことです!? 使用人としてレムさんを雇うということですか?」  シェリルは何も事情を聞かされていなかった。 「いや、特にそう堅苦しく縛らなくても良いだろう。自主的な行動ができるし俺の幼馴染だし」  どちらにしても、新居に使用人を雇う予定でいた。シェリルは旦那の知り合いなら仕方ないかと諦めるしかなかった。 「……わかりました。よろしくお願いしますね、レムさん」 「はーい」  同居生活が始まって割とすぐに、ガルカとレムの関係はただの幼馴染というわけではないことに気がつく。  シェリルは離婚も視野に入れたいが、できない理由があった。  だが、周りの協力があって状況が大きく変わっていくのだった。

(完結)卒業記念パーティーで婚約破棄を宣言され地下牢に放り込まれそうになりましたが、王子様に助けてもらいました

しまうま弁当
恋愛
貴族学院の卒業式を終えて卒業記念パーティーに出席していたミリアは婚約者のヒューベルから婚約破棄を突き付けられるのでした。そこに新しい婚約者のアウラまで現れてミリアは大ショックを受けるのでした。さらにヒューベルとアウラはそれだけでは飽き足らずにミリアを地下牢に放り込もうとするのでした。

なんでも押し付けてくる妹について

里見知美
恋愛
「ねえ、お姉さま。このリボン欲しい?」 私の一つ下の妹シェリルは、ことある毎に「欲しい?」と言っては、自分がいらなくなったものを押し付けてくる。 しかもお願いっていうんなら譲ってあげる、と上から目線で。 私よりもなんでも先に手に入れておかないと気が済まないのか、私が新品を手に入れるのが気に食わないのか。手に入れてしまえば興味がなくなり、すぐさま私に下げ渡してくるのである。まあ、私は嫡女で、無駄に出費の多い妹に家を食い潰されるわけにはいきませんから、再利用させていただきますが。 でも、見た目の良い妹は、婚約者まで私から掠め取っていった。 こればっかりは、許す気にはなりません。 覚悟しなさいな、姉の渾身の一撃を。 全6話完結済み。

婚約破棄をしてくれてありがとうございます~あなたといると破滅しかないので助かりました (完結)

しまうま弁当
恋愛
ブリテルス公爵家に嫁いできた伯爵令嬢のローラはアルーバ別邸で幸せなひと時を過ごしていました。すると婚約者であるベルグが突然婚約破棄を伝えてきたのだった。彼はローラの知人であるイザベラを私の代わりに婚約者にするとローラに言い渡すのだった。ですがローラは彼にこう言って公爵家を去るのでした。「婚約破棄をしてくれてありがとうございます。あなたといると破滅しかないので助かりました。」と。実はローラは婚約破棄されてむしろ安心していたのだった。それはローラがベルグがすでに取り返しのつかない事をしている事をすでに知っていたからだった。

【完結】我儘で何でも欲しがる元病弱な妹の末路。私は王太子殿下と幸せに過ごしていますのでどうぞご勝手に。

白井ライス
恋愛
シャーリー・レインズ子爵令嬢には、1つ下の妹ラウラが居た。 ブラウンの髪と目をしている地味なシャーリーに比べてラウラは金髪に青い目という美しい見た目をしていた。 ラウラは幼少期身体が弱く両親はいつもラウラを優先していた。 それは大人になった今でも変わらなかった。 そのせいかラウラはとんでもなく我儘な女に成長してしまう。 そして、ラウラはとうとうシャーリーの婚約者ジェイク・カールソン子爵令息にまで手を出してしまう。 彼の子を宿してーー

処理中です...