溺愛を作ることはできないけれど……~自称病弱な妹に婚約者を寝取られた伯爵令嬢は、イケメン幼馴染と浮気防止の魔道具を開発する仕事に生きる~

弓はあと

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浮気防止アラーム

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 * * * * *


 ――リストを浮気防止用魔道具の実験台にすればいい。
 そんなやり取りをリストのひいお爺様としたのが三日前。

 私は今、職探しを始めた日にリストと面談をしたギルドにいる。
 ひいお爺様からの情報で、リストが仕事でギルドを訪問する日時を聞いていたから。

 私は短い髪のウィッグと帽子を被り男性用の服を着て変装し、職業案内を眺めるフリをしながらリストの様子を観察中。

 リストは受付で、女性職員と話している。

 昨日第二工房を訪れたリストへ、私は初めて作った魔道具の懐中時計を渡した。
 懐中時計には、リストの髪の毛を一本まきつけた魔法石を内部にセットし、リストの感情に反応するよう準備済み。

 ただ……。
 箱に入れ綺麗に包み、購入したように偽造した懐中時計をリストへ渡した時は心が痛んだ。
 リストの顔を見る事ができなくて、懐中時計の入ったプレゼントの箱を机に置いて、「仕事を紹介してくれたお礼。懐中時計なの、よかったら使って」と言いながらスッとリストの方へ差し出すのが精一杯で。

 ちょうど懐中時計が欲しかったのか、「ありがとう、大切にする」と嬉しそうなリストの声が聞こえてようやく顔を上げる事ができた。
 でも顔を上げたら、優しく微笑むリストと目が合ってしまって。
 胸が、ズキズキ痛かった。

 実験台にした事、後で謝って許してくれるかしら。

 受付にいるリストを見つめながら、ついそんな事を心配してしまう。


 ん……?
 リストったら、たくさんの女性から話しかけられているわね。

 番号札を受け取ったリストは、壁に軽く寄りかかって立っていた。
 再び呼ばれるのを待っているみたいだけど。
 見た目がいいせいか、次から次へと女の人から話しかけられている。

 なぜか急に、胸がムカムカしてきた。

 朝、食事をせずにコーヒーだけ飲んだのが悪かったのかしら。
 それにしても……。
 なかなか鳴らないわ、アラームの音。
 リストに話しかけている女性たちのなかには、リストの身体へ触れてくる人もたくさんいるのに。

 懐中時計に仕込んだ魔法石の色味が、微妙に違ったのかな……。

 魔法石は簡単に削ったりくっつけたりする事ができる。
 溶かしたり、混ぜたりする事も可能。
 今回私が加工して作り出した非常に小さな魔法石の色は、ピンクに薄い紫のマーブル模様。

 浮気に繋がる感情の『異性への好意とちょっとした性的興奮』を表す魔法石の色。

 その感情を感知すると、アラームが鳴る仕組みになっていて。
 リストの感情だけに反応するように、魔法石にはリストの髪を巻きつけてある。

 ぁ、胸とお尻が出ていて腰が細い、ボンキュッボンでお色気たっぷりの女性が来たわ。
 あれだけ魅力的な女性なら、絶対に反応するはず。
 しかもリストに話しかけながら腕を絡ませ胸を押しつけている。
 これだと男性は堪らないでしょう。

 ……
 …………
 ……音、鳴らない……

 もしかしてリスト、私がプレゼントした懐中時計を今は持ってないのかしら。
 まだ箱から開けてもいない、とか?

 そう考えながら見ていたら、リストが動いた拍子に上着の内側に鎖が見えた。
 ボタンホールに付けられた鎖がベストのポケットの方へと伸びている。

 おそらく懐中時計の、鎖。

 私があげた物の? それとも、違う?

 ボンキュッボンな女性の腕をやんわりと自分の腕から外したリストが、二言三言発すると女性はすぐに去っていった。

 他の女性から話しかけられる前にリストへ声をかける。
 私と視線がぶつかった瞬間、リストの目が大きく見開いた。

「センティア!? どうしたんだその格好は?」
「ごめんねリスト、詳しくは後で。とりあえずベストのポケットにある懐中時計を見せて」
「ぇ、ぇ、センティア? ぉぃ、どこに手を入れ……っ」

 リストに身体を寄せ上着の中へ手を滑らせて、脇腹辺りにあるベストのポケットをまさぐる。

 ジリリリリリリリリ……

 ぇ、今!?

 アラーム音が鳴り響いている。
 ボンキュッボンなお姉さんはもういないのに。

 リストのポケットから取り出したそれは、間違いなく私が作った懐中時計だった。

 まさか誤作動するなんて……。
 残念、今回私が作った魔道具は失敗だったみたい。





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