25 / 45
覗こうとしたわけじゃないのよ
しおりを挟む僕は今、王太子殿下の執務室にいる。
一緒に部屋の中にいるのは、シュトルム殿下とネージュ様、そしてクラウド様とレイン様。
僕以外は凄いメンバーだ。
王太子殿下に妃殿下、宰相に騎士団長だもの。
ちなみにミチェーリ様はマリベルさんと一緒にご自身の部屋にいてここにはいない。
僕が王太子殿下の執務室にいる理由は、今日のフォッグ様の財布の件について報告しておいた方がいいとネージュ様がおっしゃって場を設けてくださったから。
そのため王太子殿下にも夕食後に時間を作っていただいて、今に至る。
おおまかな事はネージュ様が三人に説明してくれた。
「大変だったね、デュオン」
僕に声をかけてくださったシュトルム王太子殿下。
話し方はクラウド様とよく似ている。
けれど髪の色は金色で髪も短く、顔の雰囲気はどちらかといえばレイン様と近いかも。
身体の鍛え方はクラウド様とレイン様のちょうど間くらいか、少しクラウド様寄りくらい。
でも別にシュトルム殿下とクラウド様のお二人が鍛えていないというわけではない、レイン様が逞し過ぎるだけ。
「私が声をかけなかったら、今ごろシュトルムがルフトエア公爵と交渉しなければいけないところだったと思うわ」
ネージュ様が声をかけてくださらなかったら、フォッグ様は父親であるルフトエア公爵へ僕を罰するよう伝えていただろう。
「あの時はありがとうございました。でも僕を庇うために、ネージュ様に嘘をつかせるような事になってしまい、本当に申し訳ありません」
「……デュオン? 嘘って、何の事かしら」
「バラ園の掃除をしていた僕の姿を、最初から最後まで部屋からずっと見ていたとおっしゃってくださった事です。僕が掃除をする様子を眺めている必要なんてありませんから、優しい嘘をついてくださったのでしょう?」
パッとネージュ様が手のひらでご自分の両頬を押さえた。
顔が赤く、動揺したように視線が少し彷徨っている。
王太子妃として人前で過ごしている時には見せないであろう、意外なお姿。
「ぁ、それ、ね。あの……、私の方こそごめんなさい、本当にデュオンの事を自分の部屋から見ていたのよ」
「ぇっ、本当に見ていたのですか?」
なぜ僕の事を?
「ぇぇ……ミチェーリの部屋からふと外を見たらデュオンがバラ園の方へ向かって歩いていくのが見えて、もしかしたらと思ってミチェーリをマリベルに任せ慌てて自分の部屋へ移動したわ」
「もしかしたらと思って……ですか?」
ぁ、もしかして……
僕が何か悪事を働くかもしれないと疑っていたのだろうか、そうだとしたらショックだ。
「クラウド様がシュトルムの公務に付き添っていていない間に、レイン様は騎士団の訓練を抜け出してデュオンと会うのかしら……と思って」
「レイン様が僕と……ですか?」
どうしてそう思ったのだろう?
「ぁぁ、なるほど」
納得したといった感じで、シュトルム王太子殿下が声を上げた。
「ネージュはレイン兄様とデュオンが逢引するのを覗こうとしていたんだね」
「ち、違うわ、覗こうとしたわけじゃないのよ。ただ、毎晩部屋で行われている事が、昼間……しかも外で行われるのかしらって気になっただけで」
「外で始まったら、そのまま見ているつもりだったのではないの?」
「んー、まぁ、そうね……。実際に見られる機会なんて無いから、見ちゃうかもしれないわね……」
シュトルム殿下とネージュ様の会話が見えないでキョトンとしていると、シュトルム殿下がハハハと笑った。
「デュオン、ネージュはね、男同士の睦み事を扱った物語が大好きなんだ。だから私と結婚してすぐの頃は独身で双子の兄様たちが禁断の関係なのかと妄想して楽しんでいてね、でも実際はそうでは無いと知ってガッカリしていたんだよ」
「へ……、ネージュ様が……?」
「でもデュオンが同じ階に住んでくれたおかげで毎晩可愛らしい声が聞こえてくるから、ネージュはとても楽しそうなんだ。妻がご機嫌で私も嬉しいよ」
「ぇ、ぇ、まさか僕の声、聞こえて……!?」
なんて事だ、クラウド様とレイン様からの愛撫で我慢できずに出てしまうあのあられもない声が、お二人に聞かれていたなんてっっ
「ぁぁ、でも聞こえるのはネージュの部屋だけだから安心して。ミチェーリの部屋はデュオン達の部屋から一番遠いから、全く声は聞こえないよ」
小さな子どもに聞かれていなくてよかったと考えるべきか……
でも、恥ずかし過ぎるよ……
28
あなたにおすすめの小説
俺がこんなにモテるのはおかしいだろ!? 〜魔法と弟を愛でたいだけなのに、なぜそんなに執着してくるんだ!!!〜
小屋瀬
BL
「兄さんは僕に守られてればいい。ずっと、僕の側にいたらいい。」
魔法高等学校入学式。自覚ありのブラコン、レイ−クレシスは、今日入学してくる大好きな弟との再会に心を踊らせていた。“これからは毎日弟を愛でながら、大好きな魔法制作に明け暮れる日々を過ごせる”そう思っていたレイに待ち受けていたのは、波乱万丈な毎日で―――
義弟からの激しい束縛、王子からの謎の執着、親友からの重い愛⋯俺はただ、普通に過ごしたいだけなのにーーー!!!
弟勇者と保護した魔王に狙われているので家出します。
あじ/Jio
BL
父親に殴られた時、俺は前世を思い出した。
だが、前世を思い出したところで、俺が腹違いの弟を嫌うことに変わりはない。
よくある漫画や小説のように、断罪されるのを回避するために、弟と仲良くする気は毛頭なかった。
弟は600年の眠りから醒めた魔王を退治する英雄だ。
そして俺は、そんな弟に嫉妬して何かと邪魔をしようとするモブ悪役。
どうせ互いに相容れない存在だと、大嫌いな弟から離れて辺境の地で過ごしていた幼少期。
俺は眠りから醒めたばかりの魔王を見つけた。
そして時が過ぎた今、なぜか弟と魔王に執着されてケツ穴を狙われている。
◎1話完結型になります
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
助けたドS皇子がヤンデレになって俺を追いかけてきます!
夜刀神さつき
BL
医者である内藤 賢吾は、過労死した。しかし、死んだことに気がつかないまま異世界転生する。転生先で、急性虫垂炎のセドリック皇子を見つけた彼は、手術をしたくてたまらなくなる。「彼を解剖させてください」と告げ、周囲をドン引きさせる。その後、賢吾はセドリックを手術して助ける。命を助けられたセドリックは、賢吾に惹かれていく。賢吾は、セドリックの告白を断るが、セドリックは、諦めの悪いヤンデレ腹黒男だった。セドリックは、賢吾に助ける代わりに何でも言うことを聞くという約束をする。しかし、賢吾は約束を破り逃げ出し……。ほとんどコメディです。 ヤンデレ腹黒ドS皇子×頭のおかしい主人公
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました
ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載
人気俳優に拾われてペットにされた件
米山のら
BL
地味で平凡な社畜、オレ――三池豆太郎。
そんなオレを拾ったのは、超絶人気俳優・白瀬洸だった。
「ミケ」って呼ばれて、なぜか猫扱いされて、執着されて。
「ミケにはそろそろ“躾”が必要かな」――洸の優しい笑顔の裏には、底なしの狂気が潜んでいた。
これは、オレが洸の変態的な愛情と執着に、容赦なく絡め取られて、逃げ道を失っていく話。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる