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平凡以下の僕の身体
しおりを挟む薄く開いた僕の唇へ、レイン様の舌が挿し込まれる。
舌同士がヌルリと絡まり、僕の肩がビクッと揺れた。
「んっ……ンンッ……」
口を塞がれているせいで、鼻から抜けるような声が漏れる。
最初は僕の舌を貪るように舌を激しく絡ませていたけれど、少しすると口内を余す所なく労わるように舌で撫でていく動きに変わったレイン様のキス。
僕の前歯の裏側を舐めるレイン様の舌の動きがなんとも淫猥で、激しくて優しくて……淫らで、翻弄されてしまう。
「ふッ、んんッ……ム……んン……んゥ……」
なぜかお腹のあたりがジュクジュク疼いた。
身体がびくびく震えて、骨が無くなってしまったかのように腰に力が入らない。
逞しいレイン様の腕で抱きしめられていなかったら、座っている事すらできずにマットの上で寝そべってしまった事だろう。
レイン様からのキスで、くちゅ、くちゅ、と甘く脳へ響いてくる音の他に、ふふ、と小さく笑うクラウド様の声が微かに耳へ届いた。
「レイン、いつまでデュオンとキスをしているのかな? もう私は洗い終わってしまったよ」
ちぅ、と下唇を優しく吸われた直後、唇の感触が遠ざかっていく。
あ……離れちゃった。
唇と唇が触れていた分だけ、寂しさが湧いてくる。
「髪が濡れていないし、デュオンはまだ洗ってなさそうだね」
そう言われて、クラウド様の方を見上げた。
いつもはキッチリとひとつに束ねられているクラウド様の長い銀髪は解かれ、洗った直後なのだろう、まだ濡れている。
ただでさえ美しい彫刻のような裸身は上気してうっすらと赤く、なんとも言えない色気を醸し出していた。
「デュオ、俺が身体を洗ってやる」
僕のすぐ後ろからレイン様の声が聞こえてきたと思ったら、クラウド様は目を閉じてゆっくりと首を横に振った。
「ダメだよ、レイン。今キスをしていたのだから、デュオンの身体を洗うのは私」
「く……、それじゃ俺はデュオの髪を洗う」
そう言ってレイン様は椅子を持ってくると、僕のうしろに置いて座った。
「さ、デュオンの身体を洗おうね」
柔らかいマットの上でペタンと座っている僕のすぐ目の前で、クラウド様が跪く。
僕の背後で椅子に座るレイン様、僕の前に跪くクラウド様、ふたりに挟まれた途端、なぜか心臓の鼓動がドクッドクッと妙に大きくなった。
「洗うからタオルをどけて、デュオン?」
「タオルを……?」
僕の身体には今、レイン様がかけてくれた大きなタオルがかかっている。
そのタオルを、ぎゅッと手に力を込めて握った。
自分の身体を二人の視界から少しでも隠すように。
今まで何度もベッドで二人に裸を見られた事はあるけれど。
どうして平気で見せる事ができていたんだろう。
逞しい身体のレイン様と美しい身体のクラウド様に比べて、平凡な身体の僕。
ううん、痩せ気味で貧相だから、平凡よりも遥かに下だ。
ふたりの素晴らしい身体を見てしまった後では、平凡以下の自分の身体を見せるなんて恥ずかしくてできない。
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