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駿side(駿42才)
しおりを挟む小学校の卒業式、卒業生代表として壇上にあがる娘の姿を保護者席から見つめる。
この場所で愛理に一目惚れしてから、もう24年も経つのか……。
昨日会った時に、愛理の父親から言われた言葉を思い出す。
――卒業式に参加すると、君も親の気持ちが分かるよ。
確かにその通りだった。
娘の卒業式という、人生の節目を迎えるのは何とも感慨深いものだ。
一礼して壇上から下りる娘に、皆から拍手が送られる。
続いて、この小学校のOBから卒業生へ、はなむけの言葉。
愛理の卒業式の時には、俺が壇上にあがった。
今回選ばれたのは、若手小説家として活躍している男子高校生のようだ。
著名な文学賞を最年少で受賞したとかでニュースに出ていたから顔は知っている。
彼は演説を始めてからずっと、一点をまっすぐ見つめていた。
緊張しているのだろうか。
社長としてスピーチをすることの多い自分としては、もう少し目線には気を配るべきだと気になってしまう。
まあ、まだ高校生なら仕方のない事かもしれないが。
ふと気になって、壇上の彼の視線を追ってみる。
視線の先には、自分の娘が座っていた。
気のせいかもしれない。
でも気になった。
隣に座る愛理に、小声で聞く。
「愛理のご両親も、この小学校の出身だよな」
「はい、そうです」
「愛理のお母さんも、卒業生代表だったりしたのか?」
「え、すごい。よく分かりましたね」
OB代表として挨拶をするのは、別に高校生とは限らない。
確か愛理の両親は、俺たちよりももう少し夫婦の年齢差があったはずだ。
若くして親の会社を継いだ愛理の父が、OB代表として愛理の母の卒業式の日に壇上へあがっていてもおかしくはない。
俺と、愛理の時のように。
――卒業式に参加すると、君も親の気持ちが分かるよ。
壇上でスピーチを続ける男子高生に目を向ける。
おそらく彼は童貞だろう。
なぜかそう思った。
俺の娘が、
この男子高生と――?
【完】
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【あとがき】
最後までお付き合いくださり感謝の気持ちでいっぱいです。
本当にありがとうございました。
こちらの他にもいくつか小説を投稿していますので、もしよかったら作者名「弓はあと」で検索してみてください。
最近だと、以下の短編を投稿しています。
お時間がありましたら閲覧していただけると嬉しいです。
(エタニティ作品)
『【R18】イケメン御曹司の暗証番号は地味メガネな私の誕生日と一緒~こんな偶然ってあるんですね、と思っていたらなんだか溺愛されてるような?~』
(ノーチェ作品)
『【R18】王太子に婚約破棄された公爵令嬢は純潔を奪われる~何も知らない純真な乙女は元婚約者の前で淫らに啼かされた~』
今後もどうぞよろしくお願いいたします♪
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