悪役令嬢は婚約破棄されて破滅フラグを回収したい~『お嬢様……そうはさせません』イケメンツンデレ執事はバッドエンドを許さない~

弓はあと

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 バリアの魔法をクリフにかける。
 正確に言うと、私をしっかりと横抱きにしたクリフへ。
 
「ぁ、できた……」

 クリフと一緒に、私の身体も無事バリアに包まれている。
 私を横抱きにしたまま、火の中を走っていくクリフ。

 激しい炎を抜けたところで魔法が切れた。
 あまり長くもたなかったのは、足を怪我して集中力が足りなかったせいかも。

 煙臭い。
 だけど――。
 ほんの微かに、新鮮な空気を感じる。

 外が、近い……?
 ぁ、でも――。

 視線を上げ、クリフの顔を見つめる。

「クリフ、城内でクルーフォス殿下とマッジョルド殿下を見なかった? まだ避難していないらしいの」

 チラ、と私の方へ視線を向けたクリフだったけれど、すぐに前を向いた。
 私を抱き上げる腕にグッと力を込めて走りながら、ひとりごとのようにクリフが呟く。

「第二王子のマッジョルドは、もうこの世にいません」
「……ぇ?」
「詳しくは後でお伝えします。第一王子は無事です」

 マッジョルド殿下が……ってどういう事?

 呆然として少しのあいだ呼吸をするのを忘れてしまった。

 でも、再び息を吸った瞬間。
 それまでと違って、呼吸が楽にできた事に気付く。

 夜空が、見える。
 バルコニーに出られたんだ。

「これは……?」

 呟いたクリフの視線の先へ目を向けると、空中にフヨフヨと浮かぶ鮮やかなピンク色の剣が。

 もしかしたら私を心配して、様子を見にきてくれたのかしら。

「……これね、魔力を増大できる聖剣らしいのよ」

 私のすぐそばでフヨフヨ浮かぶ聖剣の姿になんだかホッと癒される。
 アカリ様が少し離れているので魔力の増大はできないだろうから役には立たないけれど。

「聖剣……そうですか……。本当はここにいるのは俺ひとりでのはずだったけど、ヴェレがいて聖剣まであるなんてより民衆が喜ぶ物語になりそうです」
「物語?」
 
 バルコニーの中央で私を抱きしめたまま、クリフはゆっくりとしゃがみ込み麻袋をおろした。
 膝の上にのせた私の身体を片手で支えたまま、もう一方の手で麻袋の中から何かを取り出そうとしている。

 ――これ……第二王子のマッジョルド殿下が使っていた、冠?

 取り出した冠らしき物を、クリフは自分の頭へともっていく。

 ぁ……少し、違う。
 マッジョルド殿下の冠には、親指の爪くらいの大きさの宝石がふたつ、正面についていたけれど。
 いまクリフがかぶっている冠には、見たことがない大きさのブルーサファイアがひとつ、正面に輝いている。

 再び麻袋に手を入れたクリフが取り出したのは、今度こそマッジョルド殿下の冠だった。

「少しの間、これを持っていていただけますか?」
「ぇ、この冠を? これって、マッジョルド殿下の冠よね?」
「そうです」
「どうしてクリフがこれを……ひゃ!?」

 冠を受け取りお腹のあたりで両手で持つのと同時に、再び抱き上げられた。
 そのままバルコニーの端へ向かって歩いていく。
 首を少しだけ動かして下を見ると、バルコニーに面した噴水広場に人が集まっているのが見えた。

『……あの冠、それにあの瞳の色……クルーフォス殿下?』
『ぁぁ、きっとそうだ。俺は一度だけお会いした事がある』
『クルーフォス殿下だ、クルーフォス殿下!』

 小さかった声が少しずつ大きくなっていき、大歓声へと変化していく。

「我はメルヴェイユ王国第一王子クルーフォス。そしてこのお方は聖なる剣を持つ祝福の女神である!」

 クリフが発した威厳のあるよく通る声で、ざわついていた噴水広場がシン……と静まり返った。

 その堂々とした姿に、思わず唖然としてしまう。

「女神による祝福の口付けで力を与えられ、戦争を望む第二王子マッジョルドは我の手で葬った。女神の持つマッジョルドの冠が、その証拠だ。これ以外、戦いによる血は流さない。皆にこの国の平和を約束しよう!」

 クリフの宣言で再び湧き上がる大歓声。

 私を横抱きにしたクリフの顔を、口をポカンと開けたまま見つめる。

 クリフが――、


 クルーフォス殿下なの!?





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