最強覚醒者の禁忌聖魔 ~大切な何かを失った最凶は人生を怠惰に過ごす~

松川よづく

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プロローグ

闘神

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約五年前、衝撃の事実に世界中に激震が走った。素性の知れぬ十歳の少年が人類最強と言わしめた男を圧倒的《・・・》に勝利をもぎ取ったという。

その出来事は誰もが疑い、有り得ないとし、知人がその話を持ち出しても聞き耳すら立てない。
しかしそれは至極当然の態度といえる。
仮に兎が龍を殺したと聞けば誰が信じるのだろうか、十人中十人満場一致でありえないと、そう思うであろう。

しかし一部の人間だけはその出来事を目の当たりにし、歴史に残るであろうその場面に直面したことに感激していた。

「グッ!?」
「お前、本当に人類最強なのか?雑魚過ぎて話にならないな」

ドーム状の地面に柵で囲われたその場所で二人の男が対等していた。男同士といっても双方の体格差は雲泥の差だ。
一人は年齢に釣り合わない冷酷な表情をし、もう一人はその男に恐怖し震えている。その男とは賢者・サーベスとホロギヌス。

サーベストの体は傷だらけになっていた。どの傷も重傷で、死んでいないことが奇跡と思わせるほど身体が酷く血で覆われていた。

「少年、貴殿はその強大な力を手にした時一体何を失ったのだ?」
「あ?」

少年はなに言ってんだこいつ?のような眼差しをサーベストに向ける。

少年の瞳には死に対しての恐怖や罪悪感などは微塵も感じとれず、 本当に子供なのか?と疑うほどにその瞳には何も宿っていない。
無邪気で可愛いはずの子供がどのような経験をすればここまでの虚無に辿り着けるのか、サーベストは想像できなかった。
だからこそ知りたかった、どうしてその力を欲したのかを。

「何かを手に入れるためには何かを犠牲にしなければならない、それは絶対法則である。子供でありながらこの私を打ち負かすほどの人間離れしたその力、貴殿はもしや大切なものを失ったのではないか?」
「フッ、」

少年は嘲笑う。その笑みは決して微笑ましいものではない。

「お前には関係のない話だ。だが一つヒントを出すとするならば.....」
「出すならば.....」



「人間というものは二度死ぬ。一つは肉体が滅びた時。そしてもう一つは全てに忘れ去られた時だ」



「そ、それはどういう──」
「言っただろ、お前には関係のない話だと」

その瞬間サーベストの視界が赤く染め上がる。神経がプツンと切れたかのように意識が闇の底へと沈んでいく。

意識が途切れる最後、瞳にうつったのは少年の悲しそうな表情であった。

そして人類最強を破った少年の話は伝説と化し、その少年の化け物じみた力に人々は『闘神』と称した。







また・・俺は人を殺した。いや、もう手遅れか」

少年はピクリとも動かない男をジッと見据えている。だが決して情が湧いたわけではない、ただ見ているだけだ。

「殺しても殺してもこの地獄の時間が終焉を迎えることはなかった」

「結局俺はただの殺人鬼と化し、日々何かが失ってい感覚を覚えるばかりでなにも変わらない」

右手に視線を移す。
幼いこの手で人を殺した。だがその事実をもってしてもなにも思わない。
自分には人の心が欠如しているのだろう。右手を見るたびそう思い知らされる。

「いつから俺は狂ったんだろう」

その呟きは木霊し、すぐに溶け消えた。
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