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聖魔祭編
ねむいけど先生とちょっとだけ本気で闘います。
しおりを挟む「お前のためだ、すぐに終わらせてやる」
そうルクルド先生が宣言すると、先生の魔力が何十倍と膨れ上がる。
(凄いな。まさかここまでとはちょっと想定外だぜ)
さすがの悠太も素直に感心していた。こうしている間にもどんどん先生の魔力は大きくなっていく。しかし悠太は一つわからないことがあった。
(先生は魔導か剣導どっちなんだ?魔術を使うにも詠唱はしていないし、先生でも無詠唱はできないと思う。できていたらすでに攻撃していると思うし、武器という武器も持っていない。いや、まさか──)
「【かの苦なる時龍よ 苦をもたらし
苦を司る龍よ 苦の力を呼び覚ませ 顕現せよ《 苦龍の断絶剣》】!!!!!」
すると先生の手のひらに大剣が出現する。中に龍の証とされる紋章が刻み込まれた大剣が。その大剣から凄まじいオーラを放っている。見ただけでわかる、これはやばいと。
「その剣、【聖剣】でしょ?それを持っているということはやっぱり【五皇聖魔】の一人だったんですね」
「フッ!」
ルクルド先生は不敵に微笑む。それは肯定とみなしていいだろう。
五皇聖魔達は特別な武器【固有武器】を持っている。種類も形も能力も様々な最強の証である物を所持している。っていうかまさか五皇聖魔のうちの一人と模擬戦をすることになるとは運悪すぎる。
五皇聖魔とは、この世界で最強の五人の覚醒者達のことだ。そのうちの二人は魔導。残りのの二人は剣導。そして最後の一人は、そう誰もが知る世界最強の男『闘神』だ。
そして、この世界は最強の五人がいるから成り立っていると言っても過言ではないほど力を持っている、それほど巨大な力を。
「なんで教師なんかしているんですか?」
「別にいいだろう。政治とか災害級の魔物を討伐とか飽きたんだよ」
(やはり五皇聖魔で間違い無いようだ。っていってもどうやって戦えばいい。本来の状態であれば倒すことなんて容易い。だが、今の俺はなまくら剣のみだ。仕方がない、これは見せたくなかったが使わなければ先生は倒せない!)
「それじゃあいくぞ!!!」
その合図とともに一瞬で間合いを詰めてくる。瞬きすらも許されないほどの走行。ここまでの速さは五皇聖魔クラスにしか出せないだろう。
「くっ!」
「おらおら!!さっきまでの威勢はどうしたー!!」
物凄い速度で先生は剣を振るう。俺はなんとかなまくら剣で先生の剣をいなしながらバックステップで攻撃をかわし、一度距離を取る。
「ふぅ~、きつすぎだろ。こんなことになるなら手なんかあげなかったらよかったぜ」
「おいおい冗談だろお前?同調もしてねぇのになんて身体能力をしてやがる、ほんと末恐ろしいガキだな」
そんな余裕を見せながら先生は喋るが、悠太は少し焦っていた。
(くっ、迷っている場合じゃない!なまくら剣もヒビが入ってきているし、このまま避け続けるのは余裕だが攻撃手段がなければ危うい。なんでどいつもこいつも俺を早く寝させてくれないのよ、ほんとに!)
「おっと、休憩はもう終わりか?じゃあ次はそっちからこいよ」
「いいんですか?じゃあお言葉に甘えてっ!!」
俺は両手でなまくら剣を持ち、全神経を集中させ、自分が今できる最大の剣術を使う。その名もーーー
「【比翼】」
「ぐはっ!!!」
すると、先生の胸から血が物凄い勢いで弾け、先生は喀血する。
「なっ、なにが...起きた...?」
ルクルドは今なにが起きたのか訳がわからないというばかりの顔をしている。それもそのはずだ、悠太が何かを呟いた瞬間自身の胸に打撃を食らったのだから。
「これは第五剣術の比翼ですよ」
「第五...剣術だと!?」
先生は地面に倒れ、胸の傷口を押さえながらも今起きた現象、そしてその正体に驚愕する。
通常第五剣術を使うには、必ず『同調』をしなくてはならない。第五剣術などの使い手など世界に数えるほどしかいないが、同調をせずに使うなど前代未聞なのだ。
そもそも同調をしなければ第一剣術すらも使えないのだが、悠太は使えてしまう。おそらく同調もせずに使う人物など世界に誰1人いないだろう。
悠太は第五剣術を使うために、適度な量の魔力を剣に流し込んでいた。普通なら剣と同調することで簡単に剣に魔力を流せれるが、自力で無理やりやろうとするとどんな剣でもすぐに壊れてしまう。普通は『同調』をすることにより剣と一心同体になることで、初めて自身の魔力と剣が相容れるのだ。しかし悠太は剣が壊れるか壊れないかの境目をうまく理解し、調節をしながら魔力を流すことによって剣術を放ったのだ。まさしく神業である。
「くっ、だがなぁお前が俺にダメージを与えたのが運の尽きだ!【苦倍】!!!」
「ん?」
すると先生は何事もなかったように悠々と立ち、ニヤニヤと笑みを浮かべている。しかも先ほどより魔力が増大しているようにみえる。
「お前は確かに強い、そこは認めよう。だけど第五剣術なんて代物を使ったんだ、もう魔力は残っていないだろう?」
「・・・・・」
悠太は押し黙る。ルクルドはそれを肯定と見たのか、悠々と喋り続ける。
「お前に教えてやろう、【苦倍】というのはこの剣苦龍の断絶剣の【固有能力】でな、受けたダメージが大きければ大きいほど俺の魔力が上がる能力なんだよ。だからな霧谷、お前が第五剣術なんてもの使った時点でこの勝負は俺の勝ちなんだよ」
ルクルドは勝利を確信した。自身は今膨大な魔力を持っている、に対して悠太は魔力切れ、ルクルドも最強の覚醒者と言われた1人なのだ。第五剣術の域は到達している。ここで第五剣術を発動すれば必ず勝てる、そう確信したのだ。
しかし、ルクルドはここで致命的なミスを犯す。ルクルドは忘れている、『同調』もせずに第五剣術を使う人物がどれほど化け物じみた存在なのかを。
「さっ、これで決めさせてもらうぞ。【魔速】!!!」
先生が使った第五剣術【魔速】とはいわゆる擬似瞬間移動だ。脚部に膨大な魔力を付与し、一瞬にして切り裂く。ある意味抜刀術とも呼ばれるものだか、俺は...
「【破肯】」
───カキィィィィィン
「なっ、なに!?」
「ふっ。」
俺は今、目の前にいる先生の剣を...
───破壊した。
「なん.....だと?」
「残念でしたね先生。魔速を使ったところで俺には視えるんで無駄ですよ。あと先生の聖剣を破壊した技、破肯っていうんですけどあれ第六剣術なんで」
「第六剣術だと!?その域の技を使えるのは...まさか!?そなたは──」
「はいストップです。」
悠太は何かを最後まで言おうとした先生をすぐに気絶させる。正直この先は聞きたくない、俺はな。
「ふぅ~、これでやっとねれ──」
「僕がいるよ悠太?」
すると目の前に見覚えのある少女が、こちらに向かっていた。
「って美桜かよ、お前今までどこにいたんだ?」
「隠れていたんだよ。悠太の闘いもずっと見てたけどさすが悠太だね。先生との決着もついたみたいだし、僕と勝負してくれるよね?」
「はぁ~、勘弁してくれ.....」
悠太の睡眠はまだ先になりそうだ。
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