29 / 63
29 中庭で待つ男
しおりを挟む
次の日の朝、眠い目をこすって中庭に出たリリーを待っていたのはレオではなかった。
いつもはレオがいるはずの茂みの側のベンチには満面の笑みを浮かべた元婚約者のアルフォンスがいた。ひらひらと手を振りながらこちらをみている男に、リリーには爽やかなはずの朝の空気が一挙に淀んだように感じられた。
「おはよう。リリーひさしぶりだね」
驚きで固まったあと距離を取ろうとしたリリーは、アルフォンスに腕をすばやくつかまれ問答無用でベンチに座らせられた。
表面上はにこやかに微笑んでいるアルフォンスだが、その笑顔はそこが知れない。今までのてひどい裏切りに昨日の暴力でダメ押しをされたリリーの心が恐怖できゅっと縮んだ。
「なんで、ここに?」
愛しい恋人にするように腰に手を回されリリーの動きは封じられた。
「それは俺のセリフだよ。どうして王宮なんかに隠れているのか教えてほしいな。リリーに会いたくてさがしたよ」
『まったく手間のかかる』
リリーに向けられた瞳の奥が冷たい光を宿していることにリリーは気づいた。
身体が恐怖にがんじがらめにされそうでリリーは息を止めた。
「それはお手間をおかけしました。でも私は話すことなどないので。今から人と会う予定ですの。邪魔をしないでください」
顔を見ないようにして一息に言い放つ。精一杯の力でぎゅうぎゅうとアルフォンスの体を押し返すが彼は微動だにしない。
その代わり楽しそうにクククと喉を鳴らした。
「へぇ。毎朝男と会っているというのは本当なんだな」
『リアのことを非難していたくせに自分も同じ穴の狢じゃないか。しかもあんな小僧』
「な!!」
呆れて口が塞がらないとはこのことだ。リリーは自分のことは棚に上げてリリーを非難するアルフォンスを凝視した。
「あの小僧ならやめておけよ。あんなのより俺のほうがよっぽど頼りになる」
『昨日の今日でリリーに会いに来るような根性はないだろう』
「どういう状況での頼りですの?自分より弱い相手を叩きのめすのにあなたの助けを借りれというの?」
「俺がそんな卑怯者だというのか?」
「違うとおっしゃるの?行方不明になったあと後ろ指をさされているときには助けてくれなかったのに?」
何度か出席した茶会で向けられた視線を一人で受けなくてはならなかったことを思い出しリリーの頭に血が上る。茶会につくと早々にリリーを一人にし自分は男友達とその取り巻きの令嬢たちと談笑していた。
リリーは一人で好奇の目にさらされていたのに。
リリーの胃の腑に冷たい何かが落ちていく。
「傷ついた婚約者を思いやるのではなく自分が行きたいから夜会に参加しろと何度も誘って下さったわよね。私がどんな目で見られるかわかっていたのに。自分が、行きたいから!!傷物婚約者でも見捨てない優しい男を演じたかったのでしょう?心の中では私のことを信じてなかったくせに」
ぎゅっと握りしめたドレスの布につめがくいこんでいることにもリリーは気づかなかった。
悔しさが彼女の血をたぎらせていた。
「挙句の果てにはリアと一緒になって私を追い出そうとしておいて。今度はまた婚約だなんて!!ばかにするのもいい加減にして!!あなたと結婚なんて絶対しない!!」
強い口調で言い切ったリリーがアルフォンスの腕を振りほどこうと身じろぐ。
振り回したリリーの手がアルフォンスフォンスの頬にあたりよろめいた彼が地面に尻餅をついた。
「だまって聞いていれば生意気な女だな!!お前は大人しく俺と結婚すればいいんだよ!!」
怒りの形相のアルフォンスがリリーに手を伸ばした。
いつもはレオがいるはずの茂みの側のベンチには満面の笑みを浮かべた元婚約者のアルフォンスがいた。ひらひらと手を振りながらこちらをみている男に、リリーには爽やかなはずの朝の空気が一挙に淀んだように感じられた。
「おはよう。リリーひさしぶりだね」
驚きで固まったあと距離を取ろうとしたリリーは、アルフォンスに腕をすばやくつかまれ問答無用でベンチに座らせられた。
表面上はにこやかに微笑んでいるアルフォンスだが、その笑顔はそこが知れない。今までのてひどい裏切りに昨日の暴力でダメ押しをされたリリーの心が恐怖できゅっと縮んだ。
「なんで、ここに?」
愛しい恋人にするように腰に手を回されリリーの動きは封じられた。
「それは俺のセリフだよ。どうして王宮なんかに隠れているのか教えてほしいな。リリーに会いたくてさがしたよ」
『まったく手間のかかる』
リリーに向けられた瞳の奥が冷たい光を宿していることにリリーは気づいた。
身体が恐怖にがんじがらめにされそうでリリーは息を止めた。
「それはお手間をおかけしました。でも私は話すことなどないので。今から人と会う予定ですの。邪魔をしないでください」
顔を見ないようにして一息に言い放つ。精一杯の力でぎゅうぎゅうとアルフォンスの体を押し返すが彼は微動だにしない。
その代わり楽しそうにクククと喉を鳴らした。
「へぇ。毎朝男と会っているというのは本当なんだな」
『リアのことを非難していたくせに自分も同じ穴の狢じゃないか。しかもあんな小僧』
「な!!」
呆れて口が塞がらないとはこのことだ。リリーは自分のことは棚に上げてリリーを非難するアルフォンスを凝視した。
「あの小僧ならやめておけよ。あんなのより俺のほうがよっぽど頼りになる」
『昨日の今日でリリーに会いに来るような根性はないだろう』
「どういう状況での頼りですの?自分より弱い相手を叩きのめすのにあなたの助けを借りれというの?」
「俺がそんな卑怯者だというのか?」
「違うとおっしゃるの?行方不明になったあと後ろ指をさされているときには助けてくれなかったのに?」
何度か出席した茶会で向けられた視線を一人で受けなくてはならなかったことを思い出しリリーの頭に血が上る。茶会につくと早々にリリーを一人にし自分は男友達とその取り巻きの令嬢たちと談笑していた。
リリーは一人で好奇の目にさらされていたのに。
リリーの胃の腑に冷たい何かが落ちていく。
「傷ついた婚約者を思いやるのではなく自分が行きたいから夜会に参加しろと何度も誘って下さったわよね。私がどんな目で見られるかわかっていたのに。自分が、行きたいから!!傷物婚約者でも見捨てない優しい男を演じたかったのでしょう?心の中では私のことを信じてなかったくせに」
ぎゅっと握りしめたドレスの布につめがくいこんでいることにもリリーは気づかなかった。
悔しさが彼女の血をたぎらせていた。
「挙句の果てにはリアと一緒になって私を追い出そうとしておいて。今度はまた婚約だなんて!!ばかにするのもいい加減にして!!あなたと結婚なんて絶対しない!!」
強い口調で言い切ったリリーがアルフォンスの腕を振りほどこうと身じろぐ。
振り回したリリーの手がアルフォンスフォンスの頬にあたりよろめいた彼が地面に尻餅をついた。
「だまって聞いていれば生意気な女だな!!お前は大人しく俺と結婚すればいいんだよ!!」
怒りの形相のアルフォンスがリリーに手を伸ばした。
0
あなたにおすすめの小説
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
何も言わずメイドとして働いてこい!とポイされたら、成り上がり令嬢になりました
さち姫
恋愛
シャーリー・サヴォワは伯爵家の双子の妹として産まれた 。実の父と双子の姉、継母に毎日いじめられ、辛い日々を送っていた。特に綺麗で要領のいい双子の姉のいつも比べられ、卑屈になる日々だった。
そんな事ある日、父が、
何も言わず、メイドして働いてこい、
と会ったこともないのにウインザー子爵家に、ポイされる。
そこで、やっと人として愛される事を知る。
ウインザー子爵家で、父のお酒のおつまみとして作っていた料理が素朴ながらも大人気となり、前向きな自分を取り戻していく。
そこで知り合った、ふたりの男性に戸惑いながらも、楽しい三角関係が出来上がっていく。
やっと人間らしく過ごし始めたのに、邪魔をする家族。
その中で、ウインザー子爵の本当の姿を知る。
前に書いていたいた小説に加筆を加えました。ほぼ同じですのでご了承ください。
また、料理については個人的に普段作っているのをある程度載せていますので、深く突っ込むのはやめてくださいm(*_ _)m
毎日朝6時更新です(*^^*)あとは、
気分でアップします
婚約破棄された令嬢、気づけば王族総出で奪い合われています
ゆっこ
恋愛
「――よって、リリアーナ・セレスト嬢との婚約は破棄する!」
王城の大広間に王太子アレクシスの声が響いた瞬間、私は静かにスカートをつまみ上げて一礼した。
「かしこまりました、殿下。どうか末永くお幸せに」
本心ではない。けれど、こう言うしかなかった。
王太子は私を見下ろし、勝ち誇ったように笑った。
「お前のような地味で役に立たない女より、フローラの方が相応しい。彼女は聖女として覚醒したのだ!」
『二流』と言われて婚約破棄されたので、ざまぁしてやります!
志熊みゅう
恋愛
「どうして君は何をやらせても『二流』なんだ!」
皇太子レイモン殿下に、公衆の面前で婚約破棄された侯爵令嬢ソフィ。皇妃の命で地味な装いに徹し、妃教育にすべてを捧げた五年間は、あっさり否定された。それでも、ソフィはくじけない。婚約破棄をきっかけに、学生生活を楽しむと決めた彼女は、一気にイメチェン、大好きだったヴァイオリンを再開し、成績も急上昇!気づけばファンクラブまでできて、学生たちの注目の的に。
そして、音楽を通して親しくなった隣国の留学生・ジョルジュの正体は、なんと……?
『二流』と蔑まれた令嬢が、“恋”と“努力”で見返す爽快逆転ストーリー!
悪役令嬢の断罪――え、いま婚約破棄と?聞こえませんでしたわ!
ちゃっぴー
恋愛
公爵令嬢アクア・ラズライトは、卒業パーティーの最中に婚約者であるジュリアス殿下から「悪役令嬢」として断罪を突きつけられる。普通なら泣き崩れるか激昂する場面――しかし、超合理的で節約家なアクアは違った。
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
捨てられた者同士でくっ付いたら最高のパートナーになりました。捨てた奴らは今更よりを戻そうなんて言ってきますが絶対にごめんです。
亜綺羅もも
恋愛
アニエル・コールドマン様にはニコライド・ドルトムルという婚約者がいた。
だがある日のこと、ニコライドはレイチェル・ヴァーマイズという女性を連れて、アニエルに婚約破棄を言いわたす。
婚約破棄をされたアニエル。
だが婚約破棄をされたのはアニエルだけではなかった。
ニコライドが連れて来たレイチェルもまた、婚約破棄をしていたのだ。
その相手とはレオニードヴァイオルード。
好青年で素敵な男性だ。
婚約破棄された同士のアニエルとレオニードは仲を深めていき、そしてお互いが最高のパートナーだということに気づいていく。
一方、ニコライドとレイチェルはお互いに気が強く、衝突ばかりする毎日。
元の婚約者の方が自分たちに合っていると思い、よりを戻そうと考えるが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる