転生したら親指王子?小さな僕を助けてくれたのは可愛いものが好きな強面騎士様だった。

音無野ウサギ

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5 違和感?

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毎日魔法使いのために掃除をしている僕なんだけど最近ちょくちょく不思議なことがあるんだよね。

屋敷の外に人影が見える?ような気がする?ってくらい薄っすらとした僕達以外の気配。
たまに何かを探す男の人の声が聞こえる事もあって。

気のせいなのかなぁと思ってフローに言ったら「気のせい!ここのほこり!!きれいにしろ!!掃除もまともにできないのか小僧!」ってぴりぴりとがった意地悪な姑ムーブされた。

ひどくない?僕ここにお嫁に来たわけじゃないんだけど。ま、白くて可愛いドレスはシンプルなウェディングドレスと言えなくもないしそれが似合っちゃう僕はお嫁さんになれちゃうくらいかわいい美少女風男子なわけだけどね。
「お夜食作るのやめちゃうよ、お義母かあさま」なんてね。

フローには「まずは何より魔法使いの寝室を綺麗にしろ」と言われるんだけど、魔法使いって本当にこのベッドで寝てるのかな?って思うことがよくあるんだよね。

なんか人が寝た後のシーツって全然人が寝てないときのまっさらのやつと違うのわかるよね。
えっと皺とかなんとなーく残り香?残り気配?とかいう感じの。一応毎日枕をぱんぱんとたたいてシーツをピッとさせてお布団ふわり、でベッドメイキングしてる(ここにも妹と見たメイドドラマのお蔭さまが)けど、最近どうにもちゃんと誰かに使われた感じがない、気がする。

布団がばふっとめくられてたりするけど、使ってますよという偽装工作された感があるんだよね。

あと奇妙に思ったのがフローがこの部屋を掃除をする僕を見張っている時に心ここにあらずって感じでぼうっとしていることが増えたってこと。

この部屋にいない誰かを見つめるようなそんな雰囲気をまとわせる黒猫。その緑の宝石みたいな目が寂しい、悲しいって言ってる気がして額をそっとなでるとゆっくりと目を閉じて開いて僕を見る。そして繰り出されるにゃんこパンチ。

「なれなれしいんだにゃ!!小僧のくせに!!」

ぐふぅ。物理!この使い魔言葉を喋る以外魔法を使ったりとか不思議なファンタジー要素がない。
常に物理!!

今日も一発僕に決めてフローは次の掃除場所へと僕をいざなう。ゆらりと揺れる二股のしっぽが昨日より元気がない気がするよ。

「ねぇフロー僕、魔法使い様に会いたいな」

「お忙しい方だからお前みたいな小僧に会う時間はないにゃ」

「ふーん」

「……」

ふいっと次の部屋へ消えたフローの後ろ姿はさみしげで。

……僕が言いたいのは『本当に君のご主人様は魔法使いはここに住んでいるのか』ってこと。前はたしかにあった魔法使いの生活の跡が最近は消えているように僕は感じる。

(大丈夫?君も捨てられちゃったのかな?)

するりと挟み込まれた思考。



立ち止まり僕は首を傾げる。違和感。

(今の考えはどこから?)

「ぼけっとすんな!!」

浮かんだ思考の違和感はフローからの物理で吹っ飛んだ。

だから痛いって!!

※※※

最近お屋敷の中がざわざわとしている。

家の周りに人の気配を感じることが毎日のようになってきたし、窓から誰かが覗いているような影を見たこともある。そのせいか天井からぶら下がっているコウモリさんとか急に飛び回ったりカエル達も窓ガラスに張り付いて居たりするようになった。

新人いじめなんだろうか、皆無言で僕をビビらせる。話しかけてもガン無視されるし。つらぁ。

そして絶賛フローの機嫌も悪い。
顔を見ただけでニャーニャー言いながら頭突きを食らわしてくる事が増えた。
ひどいやつあたりだ。理由も言わず突進、空中からジャンプだなんてまるで猫じゃないか!

あ、猫か、猫だな。

人間サイズのときはいいけど親指サイズのときは一度ならず宙を舞った。
幸い羽のように軽いのでなんとか怪我をせず済んでいるけどね。

触らぬ神に祟りなし。ご機嫌悪プンプン丸な黒猫にお手上げの僕はいつものようにお掃除してシンデレラのようにキッチンで寝るという日常なわけだ。

僕の日常は変わらないはず。

どんなに窓の外で人の気配がしてもこの家に誰も入っては来ないはず。

そう思って僕はいつものように床に寝転がる。きれいに掃除した床には灰なんてないからもう灰被りシンデレラにはならない。
なんだかすこしいつもより外がうるさい?とは思ったけど目を閉じる。

だって魔法使いの家って物語の中でも招かれざるものはたどり着けないように結界?目眩ましの魔法?とかかけられているっていうのが定番だもん。

何人たりとも侵入を許さないっていうのが最強魔法使いのお家にふさわしい。

僕はゆっくりと眠りに落ちていく……

……む?

はーい!侵入不可のお屋敷で眠りに落ちた僕に質問です。

あそこに見えるでっかいあれは……尻??

僕はまだ眠いまぶたをこじ開けて視界に現れた巨人の尻を凝視した。
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