1 / 18
1 異能で異能をあらう
しおりを挟む
快晴の三月の空の下、校舎の壁に張り付き僕は息を殺していた。僕の視線の先には砂ぼこりを上げながら殺気を隠さず戦いを繰り広げる同級生たち。
「やっぱり無理では…」
思わず呟いてしまい慌てて口を手で覆う。
「みーつけたぁ」
砂利を踏み近づいてくる人の気配に僕は固まった。
☆ユニークスキル 発動☆!!
★★★
今日は僕の通う日本国立異能学園、三十期生の卒業試験日。異能学園っていうのはユニークスキルを持つ子供が社会でやっていけるように教育育成を目的とした国の機関でだいたい中高校生くらいの年の能力者の学び舎になってる。世の中に異能者が現れだしてから合法賭博の異能バトルで人気者になる者が出る一方、スキルを持て余して一般社会に馴染めず暗い裏社会に流れ着く者が後をたたなくて治安が悪化したんだ。それを防ぐためにもこの学園は大事なんだけどひとくちで異能と言っても千差万別、簡単に人を殺せる異能から植物を上手に元気に育てる異能まで色々。とりあえず卒業資格として社会秩序を乱さない異能力のコントロールが出来ることが課されてはいる。後は個人別に与えられる卒業課題のクリア。
まあ学園卒業後悪いことしちゃう人も多いから僕ら異能者はありとあらゆる個人データが国のデータベースに登録されてしまうんだけどね。外を自由に歩くことも職業選択の自由も保障はされてるから人権はまあある?のかな?
あ、でも僕らの遺伝子を使ってスーパーベイビーをどうのこうの言ってたな。試験管ベイビーより母体から生まれた方が丈夫だからここでは学園内恋愛が推奨されてるし。
産まれた子供が施設に集められてるとか聞いたこともある。
むー。
普通の人ではない僕らやっぱり人権はないのかもね。
東京ドーム一つ分の敷地内で行われるスタンプ押し異能合戦は開始からすでに二時間近くが経過してる。ルールはいたってシンプル。参加者は皆特殊インクのスタンプを持ちそのスタンプを自分以外の参加者に押す。押されたら負け。体のどこであろうとスタンプがかすれば特殊溶液でないと絶対に落とせないためズルが出来ない。誰にもスタンプを押されずゴールの旗を試験終了時間に持っている人が勝者。子供のお遊びみたいな単純な試験。それが僕らユニークスキル(異能)保持者が行うと血で血を洗うバトルになるんだから笑えない。もちろん一応禁止事項はあるよ。
『殺すな』
うん。シンプル。
でもね、勝者に与えられるのが「学園長がかなえられる物ならどんな願いでも叶えられる権利」なーんて皆必死になるに決まってる。
今の日本の異能力者界のトップであるといわれる学園長が叶えられないものって、逆になに?
だから戦闘系能力者も非戦闘系能力者も全力をつくす。
もちろん僕も。
異能バトルで不利、負け確、どうやって勝つの?地味すぎる、何て言われる地味スキル『かくれんぼ』異能者であるこの僕も。
だってこれが君の視界に入る最後のチャンスだと思うから。
★★★
残り時間も十分をきり試験も最終段階だ。敷地内に散らばっていた生徒約三百人も残りわずか。僕は校舎の壁に隠れるようにしながら最終ゴールである運動場の中央を見る。最終的にそこに立てられたポールの先端でたなびく旗を手にしたら勝者。だから皆運動場に集まるわけだけど今ポール近くで相手を捕まえようと異能バトルを繰り広げているのは戦闘系異能を持った同級生達だ。僕はその内の一人から視線がそらせない。紅蓮の炎のような深いオレンジの髪の彼は仕掛けられたソニックアタックをバックステップでかわし余裕の笑みさえ浮かべて反撃に出た。耳の下辺りで切り揃えられたウェーブのついた髪がすばやい動きに乱れたのは一瞬。鋭い突きで相手を地面に沈めた彼は息を乱した様子もなくポケットからスタンプを取り出した。ペタン。スタンプを押された相手が悔しげに地面を叩く。
運動場の端にたてられたテントで見学してる来賓席から残念そうな声が上がった。負けた彼の関係者なのだろう。それとも賭けでもしていたのか。
運動場にたっているのは彼を含めてあと三人。睨みあうのは今回の卒業生のうちユニークスキル戦闘系上位者の氷結のトオルと爆炎のナギと僕の最愛の残影のシオン。
「やっぱり…好きだなぁ」
二つ名を与えられた優秀な彼と違ってスキルだけでなく容姿も地味な僕。戦闘系スキルだけじゃなく外見も人目をひくシオン。学園内で女生徒にきゃあきゃあ騒がれていた王子様然とした気品のある目鼻立ち。なのに異能を使うときの野性味溢れる戦いかたのギャップにやられる人が後をたたず彼の私生活を守る親衛隊が秘密裏に作られていたんだよね。
僕らが昔大の仲良しだったなんて知ってる人はいない。シオンが僕のことを覚えているかも怪しい。シオンはユニークスキルの発動も早くて異能学園に入園したのも早いエリートで、反して僕はスキルがあるかないか見極めがつかなくて三年前にやっと学園に招かれた落ちこぼれ異能者で卒業課題のクリアもやっとこなした落ちこぼれで生きてる世界が違う。だから学園内でも僕が遠くから一方的に見つめてただけで彼と話はおろか目があうことすらなかった。このまま学園を卒業したらきっと僕らが会うことなんてないんだろう。
でもね、この世界には普通の人とユニークスキル(異能)を持っている人がいるなんて知らない頃に僕は君に恋をしたんだ。
だからね。優勝して君に僕を見てもらいたい。君の横に胸を張って立ちたい。最後になるかもしれないけど君が僕を強くしてくれたって伝えたい。そしたらきっとこの先の人生頑張れるから。君が輝き続けてくれることで僕の人生が照らされるから。
僕はゆっくりと運動場に向かって一歩を踏み出した。僕のスキルを活かすには彼らが戦ってくれている方が良い。
運動場の端まできた。僕は息を止めスキルを発動する。
三人はまだ僕に気づいていない。運動場の中央に立てられたポールを囲んで三角形に位置する三人から僕の姿は丸見えだ。
でも彼らは僕に気づかない。スキルを発動した僕を誰も視覚で捕らえることは出来ない。周りに動くものがある限り彼らの意識は僕からそらされるようになっている。それが僕のスキル。ブレンドイン、カメレオン、かくれんぼ、周囲に溶け込み気配を消す地味で異能バトルの花形には成れないスキル。
僕の足元で微かに砂ぼこりが舞う。注意深く見れば砂ぼこりが僕の靴の形を避けて舞ったことが分かったかもしれない。
「燃え尽きろ!」
瞬時にナギの右手が青い炎につつまれ、トオルとシオンに向かって二つの焔を放った。トオルが氷の塊をぶつけ焔を叩き消した。更に追い討ちをかけ焔の玉を飛ばすナギ。トオルも立て続けに氷の塊で応戦する。焔と氷がぶつかり合い作られた熱い蒸気の壁が僕の方に流れてきて全身を包まれる。蒸し焼きにされるような熱さに思わず顔をしかめた。蒸気の向こう側からはナギとトオルのバトルが続いていることが音でわかった。
息は出来ない、この空気を吸ってしまえば内側から火傷して肺を焼いてしまう。不燃性長袖長ズボンを選んだ今朝の自分に感謝する。大丈夫、熱いのは今だけ。スキルはまだ発動中。息をするな。気配を殺せ。
シオンはどうした?蒸気の向こうにいるはずの彼の方を探る。その瞬間全身を赤い衝撃が襲った。
爆炎だと気づいたのは地面に叩きつけられた後。
喉からかはっと息がもれ続いて逃げかけていた息をひゅっと飲み込んだ。
息をしたことでスキルが解除された。
つまり僕の姿は三人から見えてしまっている。
グラウンドの土を踏みしめて誰かが近付いてくる。
(ヤバいヤバいヤバい。スキル!発動!)
スキルを発動しようとする僕を誰かが踏みつけた。
「みいつけたぁ」
あぁ!
「やっぱり無理では…」
思わず呟いてしまい慌てて口を手で覆う。
「みーつけたぁ」
砂利を踏み近づいてくる人の気配に僕は固まった。
☆ユニークスキル 発動☆!!
★★★
今日は僕の通う日本国立異能学園、三十期生の卒業試験日。異能学園っていうのはユニークスキルを持つ子供が社会でやっていけるように教育育成を目的とした国の機関でだいたい中高校生くらいの年の能力者の学び舎になってる。世の中に異能者が現れだしてから合法賭博の異能バトルで人気者になる者が出る一方、スキルを持て余して一般社会に馴染めず暗い裏社会に流れ着く者が後をたたなくて治安が悪化したんだ。それを防ぐためにもこの学園は大事なんだけどひとくちで異能と言っても千差万別、簡単に人を殺せる異能から植物を上手に元気に育てる異能まで色々。とりあえず卒業資格として社会秩序を乱さない異能力のコントロールが出来ることが課されてはいる。後は個人別に与えられる卒業課題のクリア。
まあ学園卒業後悪いことしちゃう人も多いから僕ら異能者はありとあらゆる個人データが国のデータベースに登録されてしまうんだけどね。外を自由に歩くことも職業選択の自由も保障はされてるから人権はまあある?のかな?
あ、でも僕らの遺伝子を使ってスーパーベイビーをどうのこうの言ってたな。試験管ベイビーより母体から生まれた方が丈夫だからここでは学園内恋愛が推奨されてるし。
産まれた子供が施設に集められてるとか聞いたこともある。
むー。
普通の人ではない僕らやっぱり人権はないのかもね。
東京ドーム一つ分の敷地内で行われるスタンプ押し異能合戦は開始からすでに二時間近くが経過してる。ルールはいたってシンプル。参加者は皆特殊インクのスタンプを持ちそのスタンプを自分以外の参加者に押す。押されたら負け。体のどこであろうとスタンプがかすれば特殊溶液でないと絶対に落とせないためズルが出来ない。誰にもスタンプを押されずゴールの旗を試験終了時間に持っている人が勝者。子供のお遊びみたいな単純な試験。それが僕らユニークスキル(異能)保持者が行うと血で血を洗うバトルになるんだから笑えない。もちろん一応禁止事項はあるよ。
『殺すな』
うん。シンプル。
でもね、勝者に与えられるのが「学園長がかなえられる物ならどんな願いでも叶えられる権利」なーんて皆必死になるに決まってる。
今の日本の異能力者界のトップであるといわれる学園長が叶えられないものって、逆になに?
だから戦闘系能力者も非戦闘系能力者も全力をつくす。
もちろん僕も。
異能バトルで不利、負け確、どうやって勝つの?地味すぎる、何て言われる地味スキル『かくれんぼ』異能者であるこの僕も。
だってこれが君の視界に入る最後のチャンスだと思うから。
★★★
残り時間も十分をきり試験も最終段階だ。敷地内に散らばっていた生徒約三百人も残りわずか。僕は校舎の壁に隠れるようにしながら最終ゴールである運動場の中央を見る。最終的にそこに立てられたポールの先端でたなびく旗を手にしたら勝者。だから皆運動場に集まるわけだけど今ポール近くで相手を捕まえようと異能バトルを繰り広げているのは戦闘系異能を持った同級生達だ。僕はその内の一人から視線がそらせない。紅蓮の炎のような深いオレンジの髪の彼は仕掛けられたソニックアタックをバックステップでかわし余裕の笑みさえ浮かべて反撃に出た。耳の下辺りで切り揃えられたウェーブのついた髪がすばやい動きに乱れたのは一瞬。鋭い突きで相手を地面に沈めた彼は息を乱した様子もなくポケットからスタンプを取り出した。ペタン。スタンプを押された相手が悔しげに地面を叩く。
運動場の端にたてられたテントで見学してる来賓席から残念そうな声が上がった。負けた彼の関係者なのだろう。それとも賭けでもしていたのか。
運動場にたっているのは彼を含めてあと三人。睨みあうのは今回の卒業生のうちユニークスキル戦闘系上位者の氷結のトオルと爆炎のナギと僕の最愛の残影のシオン。
「やっぱり…好きだなぁ」
二つ名を与えられた優秀な彼と違ってスキルだけでなく容姿も地味な僕。戦闘系スキルだけじゃなく外見も人目をひくシオン。学園内で女生徒にきゃあきゃあ騒がれていた王子様然とした気品のある目鼻立ち。なのに異能を使うときの野性味溢れる戦いかたのギャップにやられる人が後をたたず彼の私生活を守る親衛隊が秘密裏に作られていたんだよね。
僕らが昔大の仲良しだったなんて知ってる人はいない。シオンが僕のことを覚えているかも怪しい。シオンはユニークスキルの発動も早くて異能学園に入園したのも早いエリートで、反して僕はスキルがあるかないか見極めがつかなくて三年前にやっと学園に招かれた落ちこぼれ異能者で卒業課題のクリアもやっとこなした落ちこぼれで生きてる世界が違う。だから学園内でも僕が遠くから一方的に見つめてただけで彼と話はおろか目があうことすらなかった。このまま学園を卒業したらきっと僕らが会うことなんてないんだろう。
でもね、この世界には普通の人とユニークスキル(異能)を持っている人がいるなんて知らない頃に僕は君に恋をしたんだ。
だからね。優勝して君に僕を見てもらいたい。君の横に胸を張って立ちたい。最後になるかもしれないけど君が僕を強くしてくれたって伝えたい。そしたらきっとこの先の人生頑張れるから。君が輝き続けてくれることで僕の人生が照らされるから。
僕はゆっくりと運動場に向かって一歩を踏み出した。僕のスキルを活かすには彼らが戦ってくれている方が良い。
運動場の端まできた。僕は息を止めスキルを発動する。
三人はまだ僕に気づいていない。運動場の中央に立てられたポールを囲んで三角形に位置する三人から僕の姿は丸見えだ。
でも彼らは僕に気づかない。スキルを発動した僕を誰も視覚で捕らえることは出来ない。周りに動くものがある限り彼らの意識は僕からそらされるようになっている。それが僕のスキル。ブレンドイン、カメレオン、かくれんぼ、周囲に溶け込み気配を消す地味で異能バトルの花形には成れないスキル。
僕の足元で微かに砂ぼこりが舞う。注意深く見れば砂ぼこりが僕の靴の形を避けて舞ったことが分かったかもしれない。
「燃え尽きろ!」
瞬時にナギの右手が青い炎につつまれ、トオルとシオンに向かって二つの焔を放った。トオルが氷の塊をぶつけ焔を叩き消した。更に追い討ちをかけ焔の玉を飛ばすナギ。トオルも立て続けに氷の塊で応戦する。焔と氷がぶつかり合い作られた熱い蒸気の壁が僕の方に流れてきて全身を包まれる。蒸し焼きにされるような熱さに思わず顔をしかめた。蒸気の向こう側からはナギとトオルのバトルが続いていることが音でわかった。
息は出来ない、この空気を吸ってしまえば内側から火傷して肺を焼いてしまう。不燃性長袖長ズボンを選んだ今朝の自分に感謝する。大丈夫、熱いのは今だけ。スキルはまだ発動中。息をするな。気配を殺せ。
シオンはどうした?蒸気の向こうにいるはずの彼の方を探る。その瞬間全身を赤い衝撃が襲った。
爆炎だと気づいたのは地面に叩きつけられた後。
喉からかはっと息がもれ続いて逃げかけていた息をひゅっと飲み込んだ。
息をしたことでスキルが解除された。
つまり僕の姿は三人から見えてしまっている。
グラウンドの土を踏みしめて誰かが近付いてくる。
(ヤバいヤバいヤバい。スキル!発動!)
スキルを発動しようとする僕を誰かが踏みつけた。
「みいつけたぁ」
あぁ!
11
あなたにおすすめの小説
お客様と商品
あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
琥珀の檻
万里
BL
砂漠の王国の離宮「琥珀の間」で、王・ジャファルは、異母弟であるアザルを強引に抱き、自らの所有物であることを誇示していた。踊り子の息子として蔑まれ、日陰の存在として生きてきたアザルにとって、兄は憎悪と恐怖の対象でしかなかった。 しかし、その密事を見つめる影があった。ジャファルの息子であり、次期王位継承者のサリムである。サリムは叔父であるアザルに対し、憧憬を超えた歪な独占欲を抱いていた。 父から子へ。親子二人の狂おしい執着の視線に晒されたアザルは、砂漠の夜よりも深い愛憎の檻に囚われていく。
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。抱かれたら身代わりがばれてしまうので初夜は断固拒否します!
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
隣国の国王キリアン(アルファ)に嫁がされたオメガの王子リュカ。
しかし実は、結婚から逃げ出した双子の弟セラの身代わりなのです…
本当の花嫁じゃないとばれたら大変!
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだんキリアンに惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
姫を拐ったはずが勇者を拐ってしまった魔王
ミクリ21
BL
姫が拐われた!
……と思って慌てた皆は、姫が無事なのをみて安心する。
しかし、魔王は確かに誰かを拐っていった。
誰が拐われたのかを調べる皆。
一方魔王は?
「姫じゃなくて勇者なんだが」
「え?」
姫を拐ったはずが、勇者を拐ったのだった!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる