15 / 18
15 目覚めたいのに
しおりを挟む
幽体離脱?というやつだろうか。
気がつけば僕は病室らしきところでいろんな管に繋がれた僕のことを上から見下ろしていた。
ピ、ピ、ピと電子音が僕の鼓動を告げる。ゆっくりゆっくりと落ちる点滴が時間の流れを可視化する。
ふわりふわりと漂ってするりと壁を抜けると思った通り病院の廊下に出た。どうやら体からあまり離れることは出来ないみたいで廊下の先にある自販機コーナーぐらいが精一杯。時折通り過ぎるナースやドクターの会話から僕が体の具合が治ったはずなのに2ヶ月も眠り続けている原因がわからないからみんな困っている、と知る。でもシオンがたびたび見舞いに来るから女性陣は喜んでいるらしい。
(困っていると言われても、僕のほうが困っているんだけんどなぁ)
何度体に戻ろうとしてもするりと通り抜けてしまうんだもの。
(ほーんと困っちゃうなぁ)
上から見下ろす目を閉じた僕は我ながら幼く見えた。
***
ある日いつものように眠り続ける自分の周りをふわふわと漂っていたらシオンがショーンと一緒にやってきた。ツンと尖った口元にショーンのご機嫌斜めの気配。
僕はショーンのそばに寄ってよしよしと撫でる。もちろんエア撫で撫でなわけだけど。抱っこして上げることも出来ないんだからせめてものお気持ち表明なわけだよ。シオンにはエアほっぺにチュー。
(おかえりなさい。なんちゃって……)
これで僕に実体があったら幸せ家族なのに……そんなことを思う僕のことを知らずショーンはぷりぷりと怒り出す。
「シオンは居なくて良いんだけど」
「俺だってケイに会いたい!」
「シオンはダメ!!」
「だからなんでそんなにいやがるんだ!俺はケイの……友達だって言ってるだろう」
「だめ!ママは僕のママだから!シオンはだめ!」
「お前ほんとその態度、ママが起きたらママに叱ってもらうからな」
「僕のママなの、シオンがママって呼ぶな!!」
だんだんと二人の声がヒートアップしていく、このままじゃ幼児と異能リーグのスターがケンカしてたって記事に書かれちゃうよ。
それに病院で大きな声を出したらダメだって。
ふわふわと漂いながら頑なにシオンを拒否するショーンを見つめる。しばらくするとシオンが諦めて廊下で待つと告げて病室を出ていった。
先生が話しかけて刺激を与えたら良いと言ったせいでショーンはここのところ絵本を持ってきては僕に読んでくれる毎日だ。4歳でひらがなはほとんど全部読めるという健気賢いショーンの姿はナースさんたちの心を打つらしく皆遠巻きに見守ってくれる。
よいしょとベッドの横の椅子に腰掛けてショーンがバックから取り出したのは、今日は「くろいうさぎとしろいうさぎ」だ。
ショーンのお気に入りで僕が何度も読んであげた本。読みすぎてショーンは全部そらで覚えているこれは読み聞かせというより暗唱だよねぇ。
かわいいうさぎの絵がお気に入りなのはもちろんのこと、仲良しのしろいうさぎとくろいうさぎが幸せな結婚式を上げてハッピーエンドに終わる最後にあわせてショーンも僕と手を繋いでダンスするのが寝る前のルーティーンになっていたこともある。
最後のページになった。
あ、ほらショーンが僕の手を繋いだよ。いつもしていたみたいに僕の手をゆらゆらする。重たい僕の手が小さい手から滑り落ちるのを一生懸命握りしめる。
「ママ、ママ、うさぎさんのダンスだよ。今日はおやすみなさいだよ」
そう言って僕がいつもしていたみたいにおでこにキスをおとす。
「ママのことは僕が守るからね」
寂しそうにつぶやくショーンを抱きしめたくても僕の手は素通りする。
(ごめんね)
どうすればいいのか。わからないよ。
僕にできるのはふわふわと漂うことだけ。
***
ふわふわ漂うことだけしか出来ない、そう思っていたのにどうやら転機が訪れたらしい。
シオンが病室に伴って来たのは異能学園で見たことのある同級生。
二人の会話をかいつまむと彼の異能を使って僕を起こしたいということらしい。
「上手く行ったら成功報酬。上手くいかなくても標準価格な」
「わかってる」
「じゃあはじめるか」
同級生くんがベッドの隣に腰掛けて僕の手を握る。上半身はベッドにより掛かるようにして目を閉じて動かなくなった。
ぐいっと腕を引かれる感覚の後、闇に包まれた。
気がつけば僕は病室らしきところでいろんな管に繋がれた僕のことを上から見下ろしていた。
ピ、ピ、ピと電子音が僕の鼓動を告げる。ゆっくりゆっくりと落ちる点滴が時間の流れを可視化する。
ふわりふわりと漂ってするりと壁を抜けると思った通り病院の廊下に出た。どうやら体からあまり離れることは出来ないみたいで廊下の先にある自販機コーナーぐらいが精一杯。時折通り過ぎるナースやドクターの会話から僕が体の具合が治ったはずなのに2ヶ月も眠り続けている原因がわからないからみんな困っている、と知る。でもシオンがたびたび見舞いに来るから女性陣は喜んでいるらしい。
(困っていると言われても、僕のほうが困っているんだけんどなぁ)
何度体に戻ろうとしてもするりと通り抜けてしまうんだもの。
(ほーんと困っちゃうなぁ)
上から見下ろす目を閉じた僕は我ながら幼く見えた。
***
ある日いつものように眠り続ける自分の周りをふわふわと漂っていたらシオンがショーンと一緒にやってきた。ツンと尖った口元にショーンのご機嫌斜めの気配。
僕はショーンのそばに寄ってよしよしと撫でる。もちろんエア撫で撫でなわけだけど。抱っこして上げることも出来ないんだからせめてものお気持ち表明なわけだよ。シオンにはエアほっぺにチュー。
(おかえりなさい。なんちゃって……)
これで僕に実体があったら幸せ家族なのに……そんなことを思う僕のことを知らずショーンはぷりぷりと怒り出す。
「シオンは居なくて良いんだけど」
「俺だってケイに会いたい!」
「シオンはダメ!!」
「だからなんでそんなにいやがるんだ!俺はケイの……友達だって言ってるだろう」
「だめ!ママは僕のママだから!シオンはだめ!」
「お前ほんとその態度、ママが起きたらママに叱ってもらうからな」
「僕のママなの、シオンがママって呼ぶな!!」
だんだんと二人の声がヒートアップしていく、このままじゃ幼児と異能リーグのスターがケンカしてたって記事に書かれちゃうよ。
それに病院で大きな声を出したらダメだって。
ふわふわと漂いながら頑なにシオンを拒否するショーンを見つめる。しばらくするとシオンが諦めて廊下で待つと告げて病室を出ていった。
先生が話しかけて刺激を与えたら良いと言ったせいでショーンはここのところ絵本を持ってきては僕に読んでくれる毎日だ。4歳でひらがなはほとんど全部読めるという健気賢いショーンの姿はナースさんたちの心を打つらしく皆遠巻きに見守ってくれる。
よいしょとベッドの横の椅子に腰掛けてショーンがバックから取り出したのは、今日は「くろいうさぎとしろいうさぎ」だ。
ショーンのお気に入りで僕が何度も読んであげた本。読みすぎてショーンは全部そらで覚えているこれは読み聞かせというより暗唱だよねぇ。
かわいいうさぎの絵がお気に入りなのはもちろんのこと、仲良しのしろいうさぎとくろいうさぎが幸せな結婚式を上げてハッピーエンドに終わる最後にあわせてショーンも僕と手を繋いでダンスするのが寝る前のルーティーンになっていたこともある。
最後のページになった。
あ、ほらショーンが僕の手を繋いだよ。いつもしていたみたいに僕の手をゆらゆらする。重たい僕の手が小さい手から滑り落ちるのを一生懸命握りしめる。
「ママ、ママ、うさぎさんのダンスだよ。今日はおやすみなさいだよ」
そう言って僕がいつもしていたみたいにおでこにキスをおとす。
「ママのことは僕が守るからね」
寂しそうにつぶやくショーンを抱きしめたくても僕の手は素通りする。
(ごめんね)
どうすればいいのか。わからないよ。
僕にできるのはふわふわと漂うことだけ。
***
ふわふわ漂うことだけしか出来ない、そう思っていたのにどうやら転機が訪れたらしい。
シオンが病室に伴って来たのは異能学園で見たことのある同級生。
二人の会話をかいつまむと彼の異能を使って僕を起こしたいということらしい。
「上手く行ったら成功報酬。上手くいかなくても標準価格な」
「わかってる」
「じゃあはじめるか」
同級生くんがベッドの隣に腰掛けて僕の手を握る。上半身はベッドにより掛かるようにして目を閉じて動かなくなった。
ぐいっと腕を引かれる感覚の後、闇に包まれた。
6
あなたにおすすめの小説
お客様と商品
あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
琥珀の檻
万里
BL
砂漠の王国の離宮「琥珀の間」で、王・ジャファルは、異母弟であるアザルを強引に抱き、自らの所有物であることを誇示していた。踊り子の息子として蔑まれ、日陰の存在として生きてきたアザルにとって、兄は憎悪と恐怖の対象でしかなかった。 しかし、その密事を見つめる影があった。ジャファルの息子であり、次期王位継承者のサリムである。サリムは叔父であるアザルに対し、憧憬を超えた歪な独占欲を抱いていた。 父から子へ。親子二人の狂おしい執着の視線に晒されたアザルは、砂漠の夜よりも深い愛憎の檻に囚われていく。
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。抱かれたら身代わりがばれてしまうので初夜は断固拒否します!
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
隣国の国王キリアン(アルファ)に嫁がされたオメガの王子リュカ。
しかし実は、結婚から逃げ出した双子の弟セラの身代わりなのです…
本当の花嫁じゃないとばれたら大変!
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだんキリアンに惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
姫を拐ったはずが勇者を拐ってしまった魔王
ミクリ21
BL
姫が拐われた!
……と思って慌てた皆は、姫が無事なのをみて安心する。
しかし、魔王は確かに誰かを拐っていった。
誰が拐われたのかを調べる皆。
一方魔王は?
「姫じゃなくて勇者なんだが」
「え?」
姫を拐ったはずが、勇者を拐ったのだった!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる