5 / 7
5 ごちそう(山田)はぺろりと食べられちゃったらしい
しおりを挟む
「ごめん!ほんとごめんなさい!山田くんがそんなごちそうだったなんて知らなくて!!」
学校で俺を見かけたとたんカワカミがジャンピング土下座を披露した。まわりにいる生徒たちがざわつく。3年の校舎へ向かう渡り廊下でカワカミが床に這いつくばっているということで、この奇妙な出し物を見ているのは3年だけでなく2年も、ちらほらと知った顔もある。俺に視線だけで変わり者のカワカミは何をしているのかと興味津々に尋ねてくる。生徒会でいちばんかわいいけど、っていわれてる書紀の藤川さんも。けど、がつくのは彼女がちょっと変わっているからで。
「食べられちゃった?山田くんあの男に食べられちゃった?ごめんね!ごめんなさい!!」
藤川さんの目が丸くなり、嬉しそうな笑顔にかわる。興味津々、ターゲット発見ってやつだ。
「ちょっ、おま、だまれ!!」
焦る俺はカワカミに駆け寄る。が、非情にも俺とカワカミの10歩の距離が無くなる前に爆弾は落とされた。
「やっぱり、痛かった?あいつ山田くんのことすっごく美味しそうだから誰にも渡したくないって!あぁ!ごめん、俺のせいだ!!山田くんの人生もうおしまいだぁ!!これから先あいつだけじゃなくいろんな奴がきっと山田くんのことを食べに来るんだ!!」
一瞬の静寂のあとざわめきがひろがっていく。
学校一の腐女子として名を馳せる藤川さんはもちろんのこと、今の発言で思春期の奴らが考えつくことは唯一つ。俺が誰かしらんが男に食われた、しかも今後もホモたちに掘られ続ける、一択だ。
人生の前にお前は俺の学生生活に残っていた、ひょっとしたら卒業式にはボタンを欲しがる後輩がくるかもしれないというかけらのような希望さえすりつぶした・・・・おしまいだ。俺の青春は非モテのまま終了だ。
俺はカワカミの後頭部を見つめながら灰になった
--------------------------------------------------------。
「どうしても無理なら10月中は出雲に行くといいと思う」
カワカミはそう言って出雲とかかれたガイドブックを差し出した。
窓際の俺の席からは今日も海と街と遊園地が見える。あぁ、もう帰りたいなぁ。そう思いつつも目の前に居るカワカミに目を向ける。燃え尽きて灰になった俺はクラスメイトたちから向けられる好奇の視線を無視するためにもカワカミを見つめた。視線で物理的ダメージを起こせるならこいつは滅多刺しになっているだろうが、残念ながら俺は超能力者でもないので、やつはひょうひょうと俺の前に立っている。
渡り廊下での『3年生の山田くんは俺のせいで男に食われた被害者だ』パフォーマンスをおえたカワカミは意外にも普通の調子で俺に対峙してきた。
テンションの違いが高低差激しすぎんだろ。あやまるときは全力で、大声で、が中学の部活で叩き込まれたモットーらしく迷惑極まりない。
「ここは今土地神様たちがいないから、いろんなのが入り込みやすくなってるんだよ」
「ってかお前が呼んだんじゃないの?」
「・・・・土地神様がいないと余計なものが入り込みやすくなるんだよ」
わざとらしく視線をそらしたカワカミに手を伸ばす。
「お前が呼んだんじゃないの?」
視線をそらすんじゃねぇと、ぎりぎりとカワカミの頬を片手でしめつける。
「ぼ、ぼぎゅのぜい゛・・・・」
「やっぱりか、何した!あぁ?」
「山田くんががらがわるい・・・こわいなぁ」
「おまえのせいだろう!」
ホモ疑惑も、俺が今吸血鬼の餌なのもどこからどう見てもお前のせいなんだが。
「ちょっとね、黄金率について調べてたんだよ。オカルト的に黄金率の身体を持つ人って昔から生贄に捧げられたりしてて。あ、黄金率っていうのは完全な左右対称のことでさ。普通は育つにつれて利き腕や噛み癖とか生活の細かい動作とかで左右の体のバランスが崩れていくんだけど。黄金率を体現しているつまり完全なる円そのエネルギーは循環するってことで、えーと、意味わかる?」
カワカミは急に饒舌に話し出す。興味対象については早口で前のめり、オタクの習性ってやつなんだろうな。
「よくわからんが話の流れから俺の身体が黄金律ってやつだっていいたいのか?」
「うん、そういうこと。山田くんって両利きでしょ、やっぱりどちらかに偏らなかったことが良かったんだろうねぇ」
「で、どうやって吸血鬼共を呼んだんだよ?」
「えー、普通に。コックリさんに吸血鬼のメルアド教えてもらって。そしたらメールでやりとり出来るようになってね」
「現代か!軽いな」
あの黒マントの美丈夫とコックリさんとメル友ってことなんだろうか?現代テクノロジーがオカルトの人外たちにまで使われているということに衝撃をうける。コウモリとか使い魔とかもっとあるだろうに、メアドもってんだ・・・・
ニコニコ笑顔になったカワカミは自慢げに続ける。
「ダメもとでね、メール以外にもちゃんと魔法陣とか色々したんだよ。吸血鬼もやっぱり食事には味覚触覚嗅覚視覚を使うわけだから、罠をかける上でおいしい餌は大事で・・・・」
「餌?」
こいついま餌っつったよな。
「黄金率の血は吸血鬼にとっての猫にまたたびって話があるんだけど、それを証明するにはやっぱり吸血鬼の意見が聞きたいだろ。餌である君の匂いを届けるのが一番苦労した・・・・いえ、あの、失言です。だから、耐えられないようなら10月中は出雲に行くといいよ、それだけ、それだけ言いたかったんだ」
俺の視線が更に鋭くなったのにやっと気づいたカワカミはそそくさと自分の席に戻っていった。
同時にチャイムがなる。
「ほーい。授業始めるぞー席につけー」
現国の教師が入ってきて授業が始まってしまった。10月中はってことは11月にはこの状況は変わるってことか・・・・?
なぜかズキリと痛んだ胸を無視して教科書を開いた。
学校で俺を見かけたとたんカワカミがジャンピング土下座を披露した。まわりにいる生徒たちがざわつく。3年の校舎へ向かう渡り廊下でカワカミが床に這いつくばっているということで、この奇妙な出し物を見ているのは3年だけでなく2年も、ちらほらと知った顔もある。俺に視線だけで変わり者のカワカミは何をしているのかと興味津々に尋ねてくる。生徒会でいちばんかわいいけど、っていわれてる書紀の藤川さんも。けど、がつくのは彼女がちょっと変わっているからで。
「食べられちゃった?山田くんあの男に食べられちゃった?ごめんね!ごめんなさい!!」
藤川さんの目が丸くなり、嬉しそうな笑顔にかわる。興味津々、ターゲット発見ってやつだ。
「ちょっ、おま、だまれ!!」
焦る俺はカワカミに駆け寄る。が、非情にも俺とカワカミの10歩の距離が無くなる前に爆弾は落とされた。
「やっぱり、痛かった?あいつ山田くんのことすっごく美味しそうだから誰にも渡したくないって!あぁ!ごめん、俺のせいだ!!山田くんの人生もうおしまいだぁ!!これから先あいつだけじゃなくいろんな奴がきっと山田くんのことを食べに来るんだ!!」
一瞬の静寂のあとざわめきがひろがっていく。
学校一の腐女子として名を馳せる藤川さんはもちろんのこと、今の発言で思春期の奴らが考えつくことは唯一つ。俺が誰かしらんが男に食われた、しかも今後もホモたちに掘られ続ける、一択だ。
人生の前にお前は俺の学生生活に残っていた、ひょっとしたら卒業式にはボタンを欲しがる後輩がくるかもしれないというかけらのような希望さえすりつぶした・・・・おしまいだ。俺の青春は非モテのまま終了だ。
俺はカワカミの後頭部を見つめながら灰になった
--------------------------------------------------------。
「どうしても無理なら10月中は出雲に行くといいと思う」
カワカミはそう言って出雲とかかれたガイドブックを差し出した。
窓際の俺の席からは今日も海と街と遊園地が見える。あぁ、もう帰りたいなぁ。そう思いつつも目の前に居るカワカミに目を向ける。燃え尽きて灰になった俺はクラスメイトたちから向けられる好奇の視線を無視するためにもカワカミを見つめた。視線で物理的ダメージを起こせるならこいつは滅多刺しになっているだろうが、残念ながら俺は超能力者でもないので、やつはひょうひょうと俺の前に立っている。
渡り廊下での『3年生の山田くんは俺のせいで男に食われた被害者だ』パフォーマンスをおえたカワカミは意外にも普通の調子で俺に対峙してきた。
テンションの違いが高低差激しすぎんだろ。あやまるときは全力で、大声で、が中学の部活で叩き込まれたモットーらしく迷惑極まりない。
「ここは今土地神様たちがいないから、いろんなのが入り込みやすくなってるんだよ」
「ってかお前が呼んだんじゃないの?」
「・・・・土地神様がいないと余計なものが入り込みやすくなるんだよ」
わざとらしく視線をそらしたカワカミに手を伸ばす。
「お前が呼んだんじゃないの?」
視線をそらすんじゃねぇと、ぎりぎりとカワカミの頬を片手でしめつける。
「ぼ、ぼぎゅのぜい゛・・・・」
「やっぱりか、何した!あぁ?」
「山田くんががらがわるい・・・こわいなぁ」
「おまえのせいだろう!」
ホモ疑惑も、俺が今吸血鬼の餌なのもどこからどう見てもお前のせいなんだが。
「ちょっとね、黄金率について調べてたんだよ。オカルト的に黄金率の身体を持つ人って昔から生贄に捧げられたりしてて。あ、黄金率っていうのは完全な左右対称のことでさ。普通は育つにつれて利き腕や噛み癖とか生活の細かい動作とかで左右の体のバランスが崩れていくんだけど。黄金率を体現しているつまり完全なる円そのエネルギーは循環するってことで、えーと、意味わかる?」
カワカミは急に饒舌に話し出す。興味対象については早口で前のめり、オタクの習性ってやつなんだろうな。
「よくわからんが話の流れから俺の身体が黄金律ってやつだっていいたいのか?」
「うん、そういうこと。山田くんって両利きでしょ、やっぱりどちらかに偏らなかったことが良かったんだろうねぇ」
「で、どうやって吸血鬼共を呼んだんだよ?」
「えー、普通に。コックリさんに吸血鬼のメルアド教えてもらって。そしたらメールでやりとり出来るようになってね」
「現代か!軽いな」
あの黒マントの美丈夫とコックリさんとメル友ってことなんだろうか?現代テクノロジーがオカルトの人外たちにまで使われているということに衝撃をうける。コウモリとか使い魔とかもっとあるだろうに、メアドもってんだ・・・・
ニコニコ笑顔になったカワカミは自慢げに続ける。
「ダメもとでね、メール以外にもちゃんと魔法陣とか色々したんだよ。吸血鬼もやっぱり食事には味覚触覚嗅覚視覚を使うわけだから、罠をかける上でおいしい餌は大事で・・・・」
「餌?」
こいついま餌っつったよな。
「黄金率の血は吸血鬼にとっての猫にまたたびって話があるんだけど、それを証明するにはやっぱり吸血鬼の意見が聞きたいだろ。餌である君の匂いを届けるのが一番苦労した・・・・いえ、あの、失言です。だから、耐えられないようなら10月中は出雲に行くといいよ、それだけ、それだけ言いたかったんだ」
俺の視線が更に鋭くなったのにやっと気づいたカワカミはそそくさと自分の席に戻っていった。
同時にチャイムがなる。
「ほーい。授業始めるぞー席につけー」
現国の教師が入ってきて授業が始まってしまった。10月中はってことは11月にはこの状況は変わるってことか・・・・?
なぜかズキリと痛んだ胸を無視して教科書を開いた。
10
あなたにおすすめの小説
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語
婚約破棄されてヤケになって戦に乱入したら、英雄にされた上に美人で可愛い嫁ができました。
零壱
BL
自己肯定感ゼロ×圧倒的王太子───美形スパダリ同士の成長と恋のファンタジーBL。
鎖国国家クルシュの第三王子アースィムは、結婚式目前にして長年の婚約を一方的に破棄される。
ヤケになり、賑やかな幼馴染み達を引き連れ無関係の戦場に乗り込んだ結果───何故か英雄に祭り上げられ、なぜか嫁(男)まで手に入れてしまう。
「自分なんかがこんなどちゃくそ美人(男)を……」と悩むアースィム(攻)と、
「この私に不満があるのか」と詰め寄る王太子セオドア(受)。
互いを想い合う二人が紡ぐ、恋と成長の物語。
他にも幼馴染み達の一抹の寂寥を切り取った短篇や、
両想いなのに攻めの鈍感さで拗れる二人の恋を含む全四篇。
フッと笑えて、ギュッと胸が詰まる。
丁寧に読みたい、大人のためのファンタジーBL。
他サイトでも公開しております。
偽物勇者は愛を乞う
きっせつ
BL
ある日。異世界から本物の勇者が召喚された。
六年間、左目を失いながらも勇者として戦い続けたニルは偽物の烙印を押され、勇者パーティから追い出されてしまう。
偽物勇者として逃げるように人里離れた森の奥の小屋で隠遁生活をし始めたニル。悲嘆に暮れる…事はなく、勇者の重圧から解放された彼は没落人生を楽しもうとして居た矢先、何故か勇者パーティとして今も戦っている筈の騎士が彼の前に現れて……。
異世界に勇者として召喚された俺、ラスボスの魔王に敗北したら城に囚われ執着と独占欲まみれの甘い生活が始まりました
水凪しおん
BL
ごく普通の日本人だった俺、ハルキは、事故であっけなく死んだ――と思ったら、剣と魔法の異世界で『勇者』として目覚めた。
世界の命運を背負い、魔王討伐へと向かった俺を待っていたのは、圧倒的な力を持つ美しき魔王ゼノン。
「見つけた、俺の運命」
敗北した俺に彼が告げたのは、死の宣告ではなく、甘い所有宣言だった。
冷徹なはずの魔王は、俺を城に囚え、身も心も蕩けるほどに溺愛し始める。
食事も、着替えも、眠る時でさえ彼の腕の中。
その執着と独占欲に戸惑いながらも、時折見せる彼の孤独な瞳に、俺の心は抗いがたく惹かれていく。
敵同士から始まる、歪で甘い主従関係。
世界を敵に回しても手に入れたい、唯一の愛の物語。
転生DKは、オーガさんのお気に入り~姉の婚約者に嫁ぐことになったんだが、こんなに溺愛されるとは聞いてない!~
トモモト ヨシユキ
BL
魔物の国との和議の証に結ばれた公爵家同士の婚約。だが、婚約することになった姉が拒んだため6男のシャル(俺)が代わりに婚約することになった。
突然、オーガ(鬼)の嫁になることがきまった俺は、ショックで前世を思い出す。
有名進学校に通うDKだった俺は、前世の知識と根性で自分の身を守るための剣と魔法の鍛練を始める。
約束の10年後。
俺は、人類最強の魔法剣士になっていた。
どこからでもかかってこいや!
と思っていたら、婚約者のオーガ公爵は、全くの塩対応で。
そんなある日、魔王国のバーティーで絡んできた魔物を俺は、こてんぱんにのしてやったんだが、それ以来、旦那様の様子が変?
急に花とか贈ってきたり、デートに誘われたり。
慣れない溺愛にこっちまで調子が狂うし!
このまま、俺は、絆されてしまうのか!?
カイタ、エブリスタにも掲載しています。
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
弟がガチ勢すぎて愛が重い~魔王の座をささげられたんだけど、どうしたらいい?~
マツヲ。
BL
久しぶりに会った弟は、現魔王の長兄への謀反を企てた張本人だった。
王家を恨む弟の気持ちを知る主人公は死を覚悟するものの、なぜかその弟は王の座を捧げてきて……。
というヤンデレ弟×良識派の兄の話が読みたくて書いたものです。
この先はきっと弟にめっちゃ執着されて、おいしく食われるにちがいない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる