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第二十八話【塗り替えられた過去。】
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井上 美咲 普通の家庭に生まれて普通に育って、ファッションセンスを同性の友達に良く褒められていたから服飾デザイナーの道へ進んだ。友達はセンスが良くても悪くても私を褒めた。それが女子だからだ。自分のセンスが絶望的に悪いなんて微塵も感じた事がなかった。服飾デザイナーの勉強としてアパレル業界に入ってから地獄だった。自分の服のセンスの無さに絶望して1度は辞めようとした。酷いイジメにあって、引きこもりになって夢中で【甘い甘い薔薇の君】という乙女ゲームをしていた。乙女ゲームで癒されて、とにかくこの環境から抜け出さないといけないという気になって、まずは引っ越しして環境を変えて、それからもう一度ファッションの勉強をし直して大成功を収めた。
これから海外進出という時に……あれ?何で死んだんだっけ。
井上 美咲 普通の家庭に生まれて、隣の家に住む 龍怒 グラム っていう名前の同い年のハーフの男の子といつも一緒だった。グラムは金髪だけど、お日様の日が当たると薄っすらとピンク色に見える髪の毛で私はそれが大好きだった。
小さな頃から「ミサキ、大きくなったら結婚しよう。」それがグラムの口癖だった。私はそれに対して「はいはい。」と適当にあしらっていたけれど、内心グラムと結婚するのが当たり前だと思っていた。
ファッションセンスを同性の友達に良く褒められていたから服飾デザイナーの道へ進もうとしたらグラムと喧嘩になった。
「ミサキは俺と結婚してお嫁さんになれば良い。花嫁修業だけしてればいい。」
「どうしてグラムはいつも私を束縛するの?やっとできた友達に褒めてもらえた事なの。私はそれを大事にしたいの!」
グラムとは小中高全て一緒で、常に隣にいるから友達が一切できなかった。だけど高校生になって、修学旅行へ行った時、奇跡的に同性の友達ができて、その友達から「ミサキって何気にファッションセンス良いよね。」と褒められて嬉しかった。それをどうしても大切にしたいと思ってしまっていた。
私は一方的にグラムを避けるようになった。
引越しもして、物理的に距離を置いて必死で服飾デザイナーの勉強をした。
自分のセンスが絶望的に悪いなんて微塵も感じた事がなかった。服飾デザイナーの勉強の延長戦としてアパレル業界に入ってから地獄だった。自分の服のセンスの無さに絶望して1度は辞めようとした。酷いイジメにあって、引きこもりになって夢中で【甘い甘い薔薇の君】という乙女ゲームをしていた。攻略キャラのジグルドを攻略していると、ふと逃げるように避け続けているグラムの事を思い出した。
いつも優しかったグラムがどうしてあんなに怒ったのだろうか。そもそもグラムは私の彼氏だったのかな?私は振った事になるのかな?あれだけ色々してもらって、ただ夢を反対されただけで避け続けて…私って最低だ。虐められても仕方がない人間だ。
涙が止まらなかった。ジグルドの声を聞くたびに優しいグラムを思い出した。
ふと実家に帰る事を決意した。
実家に帰って寛いでいるとインターホンが鳴って母に「出ておいで」と言われて出てみれば少し大人びたグラムがいた。急いで帰ってきたのか肩で息をしていて、腕で汗を拭っていた。
「グラム…。」
「ごめん!!」
グラムにギュッと抱きしめられて涙が零れた。沢山沢山涙がでてしまった。ボロボロ止まらない涙。
ごめんは私の方なのに、どうしてグラムが謝るの?どうして震えているの?どうして今も…。
「ごめん…なさい…ごめんなさいっ。」
精一杯謝った。私を抱きしめるグラムはもう離したくないといわんばかりに思えたからだ。
どうしてこんないも優しい彼を避け続けたのだろうか。あの時ちゃんと話し合えば良かった。
長い付き合いなのに、小さな頃から一緒だったのに。一緒にいる事が当たり前過ぎたんだ。
悲しい時も辛い時も嬉しい時も苦しい時もイライラしてる時もずっと一緒だった。二人でいれば全てが幸せだったのに。どうして…。
「ミサキ、泣くな。俺が悪かったんだ。」
「ううん。グラムは悪くないよ。」
「反省してたはずなのにな。また同じ事を繰り返した。」
「同じ事?」
「いや、こっちの話。ミサキ。俺、ミサキの彼氏になってもいいかな?」
「…旦那でいいわよ。」
グラムばバッと私の体を離したかと思えば腰を持って抱き上げられてクルっと一回転した。
「夢みたいだ。」
「降ろしてよ。恥ずかしい。」
「はははっ。」
グラムとの結婚はとてもスムーズだった。とんとん拍子とでも言うのだろうか。
とても素敵な婚約指輪に、とても素敵な結婚指輪を貰って、とても素敵な教会で最高の挙式を上げた。
まさに、幸せの絶頂。二人で海外へ新婚旅行の為飛行機に乗った。
グラムはギュっと私の手を握った。だけど、凄い手汗を感じた。
「グラム、体調悪いの?」
「ううん。ただ、どうしてミサキを二度もこんな目に合わせないといけないのかと思ったんじゃ。」
いつもと口調の違うグラムに眉をひそめる。
「グラム?」
「ダメじゃ。やっぱり降りよう。旅行は国内にしよう。」
「え?もう浮いちゃってるよ?」
「…っ!!」
「予定より少し早いね。グラム、もしかして高い所が恐いの?」
「違う。そうじゃない。ただ…ミサキを愛しすぎているだけじゃ。」
そう言ったグラムは泣いていた。
とてつもなく眩い光が見えた時、グラムにギュッと抱きしめられて全てが終わった。
痛みや熱さはなかった。ただ…自分がそこで死んだという事を知った。
「なんて事してくれてるのよ。」
私の大事な人になるってそういう事だったの?いつからジグルドはグラムだったの?
確かなのは、今まで曖昧だった自分が 井上 美咲になっているという事。
でも、体はギャラクレア・ギルクライムのものだ。
それから…。
会わないと、今すぐ…彼に!!
「ジグルド!!」
彼は呼んでも現れなかった。
どうして?呼んだら直ぐに来てくれるんじゃなかったの?違うの?
「グラム…。」
ジグルドに貰った指輪が赤く光って目の前にジグルドが現れた。
「グラム…なの?」
「そうじゃ。」と優しく微笑むジグルド。
「どうして…。絶対に好きにならないって思ってた!!どうしてこんな事するの!!もう後戻りできないじゃない!!!」
「儂はもうグラムじゃ。あれはミサキにとっての過去であり儂にとっての未来じゃ。儂は次元を超えて地球に行きミサキと出会った。そして一緒に死んだ。スイートローズとの魔法契約もギャラクレア・ギルクライムとの魔法契約も全て消えたんじゃ。ミサキも今転生したばかりという事じゃ。」
「何…言ってるか分からないよ…。」
「分からんでよい。ただもう一度、ミサキを抱きしめられる、愛する事ができる…それだけじゃ。」
グラムが腕を広げた。
私はグラムの胸に飛び込んだ。
「絶対に許さないんだから…。」
「あぁ。一生をかけて償うつもりじゃ。」
大魔法使いジグルドは、その昔魔法の暴発で死んでしまったそうだ。
次の後継者のグラムが魔塔を継いでいた。
グラムはいつからジグルドでジグルドがいつからグラムになったのかサッパリ謎のままだけれど、私は心の底からグラムを愛している。
彼がどうして私に執着するのかも謎なままだ。
だけど、私の目に見えている事が全てだと思いたい。だって今、とても幸せなのだから。
私はグラムと一緒に王都でお店を開く事になった。魔法のドレスショップ。
様々な魔法がかけられた不思議なドレスを販売する店としてとても繁盛する事になるのはすこし先のお話。
こうして世界は【甘い甘い薔薇の君】の第二シーズンを迎える事になる。
これから海外進出という時に……あれ?何で死んだんだっけ。
井上 美咲 普通の家庭に生まれて、隣の家に住む 龍怒 グラム っていう名前の同い年のハーフの男の子といつも一緒だった。グラムは金髪だけど、お日様の日が当たると薄っすらとピンク色に見える髪の毛で私はそれが大好きだった。
小さな頃から「ミサキ、大きくなったら結婚しよう。」それがグラムの口癖だった。私はそれに対して「はいはい。」と適当にあしらっていたけれど、内心グラムと結婚するのが当たり前だと思っていた。
ファッションセンスを同性の友達に良く褒められていたから服飾デザイナーの道へ進もうとしたらグラムと喧嘩になった。
「ミサキは俺と結婚してお嫁さんになれば良い。花嫁修業だけしてればいい。」
「どうしてグラムはいつも私を束縛するの?やっとできた友達に褒めてもらえた事なの。私はそれを大事にしたいの!」
グラムとは小中高全て一緒で、常に隣にいるから友達が一切できなかった。だけど高校生になって、修学旅行へ行った時、奇跡的に同性の友達ができて、その友達から「ミサキって何気にファッションセンス良いよね。」と褒められて嬉しかった。それをどうしても大切にしたいと思ってしまっていた。
私は一方的にグラムを避けるようになった。
引越しもして、物理的に距離を置いて必死で服飾デザイナーの勉強をした。
自分のセンスが絶望的に悪いなんて微塵も感じた事がなかった。服飾デザイナーの勉強の延長戦としてアパレル業界に入ってから地獄だった。自分の服のセンスの無さに絶望して1度は辞めようとした。酷いイジメにあって、引きこもりになって夢中で【甘い甘い薔薇の君】という乙女ゲームをしていた。攻略キャラのジグルドを攻略していると、ふと逃げるように避け続けているグラムの事を思い出した。
いつも優しかったグラムがどうしてあんなに怒ったのだろうか。そもそもグラムは私の彼氏だったのかな?私は振った事になるのかな?あれだけ色々してもらって、ただ夢を反対されただけで避け続けて…私って最低だ。虐められても仕方がない人間だ。
涙が止まらなかった。ジグルドの声を聞くたびに優しいグラムを思い出した。
ふと実家に帰る事を決意した。
実家に帰って寛いでいるとインターホンが鳴って母に「出ておいで」と言われて出てみれば少し大人びたグラムがいた。急いで帰ってきたのか肩で息をしていて、腕で汗を拭っていた。
「グラム…。」
「ごめん!!」
グラムにギュッと抱きしめられて涙が零れた。沢山沢山涙がでてしまった。ボロボロ止まらない涙。
ごめんは私の方なのに、どうしてグラムが謝るの?どうして震えているの?どうして今も…。
「ごめん…なさい…ごめんなさいっ。」
精一杯謝った。私を抱きしめるグラムはもう離したくないといわんばかりに思えたからだ。
どうしてこんないも優しい彼を避け続けたのだろうか。あの時ちゃんと話し合えば良かった。
長い付き合いなのに、小さな頃から一緒だったのに。一緒にいる事が当たり前過ぎたんだ。
悲しい時も辛い時も嬉しい時も苦しい時もイライラしてる時もずっと一緒だった。二人でいれば全てが幸せだったのに。どうして…。
「ミサキ、泣くな。俺が悪かったんだ。」
「ううん。グラムは悪くないよ。」
「反省してたはずなのにな。また同じ事を繰り返した。」
「同じ事?」
「いや、こっちの話。ミサキ。俺、ミサキの彼氏になってもいいかな?」
「…旦那でいいわよ。」
グラムばバッと私の体を離したかと思えば腰を持って抱き上げられてクルっと一回転した。
「夢みたいだ。」
「降ろしてよ。恥ずかしい。」
「はははっ。」
グラムとの結婚はとてもスムーズだった。とんとん拍子とでも言うのだろうか。
とても素敵な婚約指輪に、とても素敵な結婚指輪を貰って、とても素敵な教会で最高の挙式を上げた。
まさに、幸せの絶頂。二人で海外へ新婚旅行の為飛行機に乗った。
グラムはギュっと私の手を握った。だけど、凄い手汗を感じた。
「グラム、体調悪いの?」
「ううん。ただ、どうしてミサキを二度もこんな目に合わせないといけないのかと思ったんじゃ。」
いつもと口調の違うグラムに眉をひそめる。
「グラム?」
「ダメじゃ。やっぱり降りよう。旅行は国内にしよう。」
「え?もう浮いちゃってるよ?」
「…っ!!」
「予定より少し早いね。グラム、もしかして高い所が恐いの?」
「違う。そうじゃない。ただ…ミサキを愛しすぎているだけじゃ。」
そう言ったグラムは泣いていた。
とてつもなく眩い光が見えた時、グラムにギュッと抱きしめられて全てが終わった。
痛みや熱さはなかった。ただ…自分がそこで死んだという事を知った。
「なんて事してくれてるのよ。」
私の大事な人になるってそういう事だったの?いつからジグルドはグラムだったの?
確かなのは、今まで曖昧だった自分が 井上 美咲になっているという事。
でも、体はギャラクレア・ギルクライムのものだ。
それから…。
会わないと、今すぐ…彼に!!
「ジグルド!!」
彼は呼んでも現れなかった。
どうして?呼んだら直ぐに来てくれるんじゃなかったの?違うの?
「グラム…。」
ジグルドに貰った指輪が赤く光って目の前にジグルドが現れた。
「グラム…なの?」
「そうじゃ。」と優しく微笑むジグルド。
「どうして…。絶対に好きにならないって思ってた!!どうしてこんな事するの!!もう後戻りできないじゃない!!!」
「儂はもうグラムじゃ。あれはミサキにとっての過去であり儂にとっての未来じゃ。儂は次元を超えて地球に行きミサキと出会った。そして一緒に死んだ。スイートローズとの魔法契約もギャラクレア・ギルクライムとの魔法契約も全て消えたんじゃ。ミサキも今転生したばかりという事じゃ。」
「何…言ってるか分からないよ…。」
「分からんでよい。ただもう一度、ミサキを抱きしめられる、愛する事ができる…それだけじゃ。」
グラムが腕を広げた。
私はグラムの胸に飛び込んだ。
「絶対に許さないんだから…。」
「あぁ。一生をかけて償うつもりじゃ。」
大魔法使いジグルドは、その昔魔法の暴発で死んでしまったそうだ。
次の後継者のグラムが魔塔を継いでいた。
グラムはいつからジグルドでジグルドがいつからグラムになったのかサッパリ謎のままだけれど、私は心の底からグラムを愛している。
彼がどうして私に執着するのかも謎なままだ。
だけど、私の目に見えている事が全てだと思いたい。だって今、とても幸せなのだから。
私はグラムと一緒に王都でお店を開く事になった。魔法のドレスショップ。
様々な魔法がかけられた不思議なドレスを販売する店としてとても繁盛する事になるのはすこし先のお話。
こうして世界は【甘い甘い薔薇の君】の第二シーズンを迎える事になる。
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