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19p【妖刀】

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しばらく歩いていると妖刀売り場についた。
「いらっしゃいませ!江戸名物の刀ですよ!」とギルド【わびさび】所属の法被はっぴ姿の可愛い売り子さんが声をかけてきた。
「名物なんだってさ。刀。別に妖刀ばっかり売ってるわけじゃないみたいだね。」とシンが刀を物色する。

僕はタクトを握りしめてハクに問う。
「ハク、ほしい刀ある?1万円以内だったら買ってもいいよ?」と声をかければハクが出てきて、刀をじっとみつめる。するとハクはこれが良いと指をさした。
その刀は紫と黒の禍々しい色をした、いかにも妖刀っぽい刀で値段は500enだった。
本当にこれでいいのかと確認をとったらコクリと頷くハク。
「すみません、これをください。」と僕が指差したのは紫色の少し禍々しい刀だった。
「これ妖刀じゃないけどいいのかな?」と若い女店員さんに言われた。
(こんな禍々しい刀が妖刀じゃないだって!?おもちゃか何かか?)
不安になってもう一度ハクに確認をとると「それは妖刀だ。間違えない。」と言うので買うことにした。
「はい。大丈夫です。」
「記念品?」とシンさんに聞きかれて、「いえ、僕の武器、武器か防具を7つはめられるんでそこにはめようと思って。」と返した。
「へぇー…。さすが最高ランクの武器。僕もいくつか持ってるけどそんな武器もってないや。」
「500enになりーます!」
お金を払うと刀を渡されて、その瞬間刀が消えた。
「え?あれ?」
(詐欺か?)
「クスッ…ほんっと初心者だよね。インベントリ開いてみれば?」とシンに言われて開いてみればインベントリに収納されていた。
「あ、良かった。ここにあったのか。」
僕は早速ハクに装備させてみた。ハクも早速素振りをし始める。
「へぇ~おにーさん、初心者なんだ。」と店員さんに言われて、バトルを申し込まれた。
「わお、大胆。」とシンさんが驚いていた。
「え?おねー…さん?」カウントダウンがはじまってしまい、僕はとりあえず落ち着いてタクトを握りしめた。

「俺がいく。切れ味を試したい。」とハクが前にでた。ハクに装備させた妖刀は禍々しいオーラに包まれていて、紫の炎を纏いはじめた。
バトルが開始してハクが斬りつけにいった。魔力の消費も少ない。その上動きも早い。僕は集中してタクトの先端をハクにあわせて少量の魔力を注入する。
可愛い売り子さんはやはり妖刀使いで、ハクと似た妖刀と真っ赤な妖刀をもっていた。
(なるほど…二刀流ってやつか。)
相手は二刀流。赤い妖刀の一振りは火花を散らし、ぶわっと炎を纏っていた。
フウをだして、ハクに風を纏わせてスピードをつけてあげた。僕のところへ飛んできた攻撃はウォールが身をもって防いでくれた。
「あ。ごめん、ウォール。」と謝ると「そんな事はいい。集中を切らすな。」と言われて集中して魔力を注ぐことにした。
ハクは気を使って相手の攻撃に自身の攻撃をあてて相殺してくれていた。
ハナビを出せばすぐに勝負は終わると思う。でも、ここはハクに任せたいし、ハクが自分から言ったから、余計な事はしたくなかった。
「ハク。僕の魔力が3分の1になったら悪いけどハナビを使うね。」と言えば「十分」といってハクはうっすらと笑った。
ハクが凄いスピードで相手につめよって、背後をとってそこから斬りつけると相手の体力が3分の1になり、状態異常呪いになっていた。
「あついっ!!!消えない!!ナニコレ!!!呪い!?」と女店員さんはパニックみたいになっていた。
「とどめだ。」とハクは静かに相手を斬りつけてバトルを終わらせた。

「なに?さっき買った妖刀の効果?状態異常に呪いが入ってた。」とシンさんが冷静に行動履歴を見て分析をしていた。
「あ、はい多分。妖刀だったみたいですね。」
「うあーー!!やられたーー!!初心者なの?ほんとに?特に何かしてる感じじゃなかったし。魔法?幻覚?」売り子さんはまだパニックになっていた。

「さ、次行こうか。この調子であと5勝しないとね。」
「まっ!待ちなさいよ!!そこのAI!!勝負しなさいよ!!」と売り子さんはシンに向かってビシッと指差す。
「やめといたら?僕強いよ?それに、ちゃんと見なよ。君がさっき戦った相手のギルド。」とシンさんは相手を冷たく見下した。
売り子さんはスマホをポチポチと操作し「ミっ、ミルフィオレ!?しかも【ミスティック】大連合!?」と言って売り子さんは腰を抜かして後退った。
シンさんは売り子さんと同じ目線になるようにしゃがんで「スマホ覗かないとわからない情報だけどさ、賢い人はバトル申し込むまえに絶対見るよ?個人情報。ま、そこの初心者君は常に表示になってるみたいだけど。」と言った。

連合ってなんだろ?
「もーーーーなんなのよーーー!!もっとギルド分かりやすくしなさいよ運営ーーー!!!」と売り子さんはジタバタしだした。

妖刀売り場から少しだけ距離をとった瞬間に「ぐあっ!!!」と、いきなりシンさんが苦しみ膝をついた。
「え!?シンさん!?」僕は慌てて駆け寄った…。
「くっ。大丈夫。早くここを離れよう。」とシンさんはヨロヨロとしながら立ち上がって前へ進む。

しばらく歩いているとシンさんの調子は元に戻ったような感じがして、そこでシンさんは立ち止まった。
「……みっともないとこを見せたね。」
「どうしたんですか?朝の話聞いた後だったんで相当恐かったんですけど。」
「そうだね。でもこれは違う。AIに色んな設定があるのは知ってるよね?僕はその設定から逸脱した行為をしたから、おしおきされただけ。」
そういえばシンカさんが、設定に従わない場合激痛がはしるって。
「どんな設定か聞いてもいいですか?」
「ルナ以外の女性に好意を抱かない。さっきの子、ちょっとルナみたいだなって思っただけだったのにさ。」と、シンさんは少し拗ねた口調で話した。
このゲームは、どうやってそんな罰を下すことができるのか。
「顔に出やすいね。ルナも検証してたよ。女性の音声。それに伴う体温上昇とか、そういうので罰を下してるみたいだよ。」
「なるほど。大変ですね。」
「そんなことないよ。ルナさえいれば何もいらないから。」
激痛がして苦しかったはずなのに、なんでシンさんこんなにも嬉しそうな顔してるんだろ?
「シンさんってドM設定か何かついてるんですか?」
「君…ずいぶんと失礼だね?そんな設定ないから。」
「すみません。」
「あ、ちょっと寄り道でもする?適当な店にでも入ってさ。まだちょっと痛みも残ってるし。」
「あ。はい。」

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