死に戻り能力家系の令嬢は愛し愛される為に死に戻ります。~公爵の止まらない溺愛と執着~

無月公主

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シーズン1

17.ユリのエスコートが最強の武器!

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―【王宮で開かれるパーティー当日】ー

豪華絢爛な会場は、貴族や王室のメンバー、そして招待客たちの華やかな笑顔で溢れていた。天井には無数のクリスタルが煌めくシャンデリアが吊るされ、壁には金箔の模様が施されている。絨毯は足元に柔らかな感触を与え、どこを見ても優雅さと格式の象徴が広がっている。

私は入り口で立ち止まり、改めてその光景を見渡した。その眩しさに圧倒されると同時に、胸の奥に嫌でも蘇る記憶があった。

――かつての王宮、そして最期の夜。

一度目の人生で王妃だった時、このような華やかなパーティーに何度も出席した。そこで交わされた笑顔や祝福の言葉の裏には、計り知れない陰謀が潜んでいた。そして、その陰謀の末に私は――。その瞬間の冷たい刃の感触が背中に蘇り、思わず息を飲んだ。

心拍が早まり、視界が一瞬だけぼやける。目の前の華やかな光景が、過去の王宮の光景と重なり合い、胸が締め付けられるような恐怖が襲う。

――違う、これは違う。私はもう戻らない。

そう自分に言い聞かせるものの、過去の記憶が離れない。あの時の冷たい視線、背後からの裏切り、そして――命を奪われる瞬間の絶望。あの感覚が、まるで身体に染み付いているかのように思えた。

そんな私の様子に気付いたのか、隣に立つユリが軽く私の肩に触れた。その手のひらから伝わる温かさが、不安を少しだけ和らげてくれる。

「メイ、大丈夫ですよ。俺がそばにいます。」

低く落ち着いた声に、私はハッと意識を現在に引き戻された。横を見ると、ユリが私を心配そうに見つめている。その瞳には、どんな敵からも私を守り抜くという決意が宿っていた。

「…ありがとうございます。」小さく息を吐きながらそう答えると、彼は穏やかな笑みを浮かべた。

ユリのその微笑みは、私が一人で戦わなくても良いのだと教えてくれる。今は違う。この人生では、私は一人ではない――そう強く思えるのは、彼がそばにいるからだった。

肩に乗った彼の手が一瞬だけ力強くなり、その温かさに支えられながら、私は一歩を踏み出した。これ以上、過去の記憶に縛られるわけにはいかない。私には新しい人生と、隣で支えてくれる人がいるのだから。

入り口では、主催者である王宮の係官が招待客一人一人に挨拶を行っていた。私たちの順番が来ると、係官が丁寧に頭を下げて挨拶する。

「レッドナイト公爵閣下と公爵夫人、ようこそお越しくださいました。」

ユリは一礼しながら堂々とした声で返答した。

「お招きいただき光栄です。」

そのやり取りを横で聞きながら、私もぎこちなく頭を下げる。しかし、ユリがさりげなく腰を支えてくれたおかげで、なんとかバランスを崩さずに済んだ。

ユリは私の腰にしっかりと腕を回し、支えるようにエスコートしながら、堂々と会場内に足を踏み入れた。彼の腕の中はいつもと変わらない温かさで包まれており、私の心の乱れを静かに押さえつけてくれるようだった。けれど、視界に広がる華やかな光景は、私をまた少し緊張させる。

――ここは、あの時と同じくらい豪奢で、同じくらい冷たい場所かもしれない。

ふと目に入る煌めくシャンデリア、金箔が施された壁、音もなく柔らかい感触を返す絨毯。その全てが、過去の記憶を掘り起こしてくる。だが、ユリの腕の中にいるという事実が、それを打ち消す力を与えてくれていた。

「メイ、大丈夫です。俺が一緒にいます。」

ユリの低い声が耳元で囁かれる。その声はいつものように落ち着いていて、それがどれほど心強いか言葉にすることはできない。

「ありがとう、ユリ。」

かすれそうな声でそう返すと、彼の手が私の背中にそっと触れ、安心させるようにわずかに動いた。その控えめな仕草が、不思議と私の心を穏やかにしてくれた。


会場に入るなり、注目の視線が私たちに向けられる。ユリが私の腰をがっちりとホールドし、まるで絶対に離さないと誓うようにエスコートしている姿は、ここでは異例の光景だったのかもしれない。彼は私をしっかりと支えながら、鋭い視線で会場中を見渡していた。その目つきはまるで剣のように鋭く、下手に近づこうとする者を拒絶する威圧感を放っている。今日の彼の表情は、普段以上に冷酷さが際立っていた。

これは私が事前にお願いしたことだった。王宮の場では、公爵としての威厳を保ち、周囲に隙を見せないようにしてほしいと頼んでいたのだ。私が彼の弱点になることは避けなければならない。そのため、彼にはあえていつもの優しい表情を封印してもらった。

しかし、そんな彼の表情を見ていると、申し訳ない気持ちが湧いてくる。

「不服だ。」ユリが低い声で呟く。

「我慢してください…。」私は小声で答えた。

彼の横顔を見ると、どこか拗ねたような表情が浮かんでいた。それでも彼は周囲の注目を一手に引き受け、堂々とした態度で私を守り続けてくれる。その姿に、胸がじんわりと温かくなるのを感じた。

会場内を歩き回るうちに、ユリの冷酷な雰囲気に圧倒されて近寄りがたいのか、私たちに声をかける人は少なかった。それでも、何人かの貴族が恐る恐る近づいてきて挨拶を交わす。ユリは冷静に対応しつつも、決して笑顔を見せることはない。

王宮のホールの奥に設けられた玉座の間。その中心には高くそびえる王の玉座が置かれ、まばゆいばかりの金と宝石で装飾されていた。厳粛な雰囲気が漂う中、玉座に座る王の姿は一段と威厳に満ちており、左右には美しい王妃と、宮廷の高位貴族たちが控えていた。

「次、レッドナイト公爵家当主、ユリドレ公爵閣下とメイシール公爵夫人。」

宰相の声が響くと、会場内に緊張が走った。ユリは私を片腕に抱えたまま一歩を踏み出す。彼の動きはまるで迷いがなく、真っ直ぐに玉座へと向かっていた。その堂々とした背中に、私は少しでも緊張を和らげるような安心感を覚えた。

会場の注目が一斉に私たちに向けられる。豪奢な装飾と華麗な衣装に包まれた人々の視線は、どれも好奇心と期待に満ちていた。それに応えるように、私は背筋を伸ばし、できる限り落ち着いた表情を保とうとした。

「大丈夫です、メイ。」

耳元でユリが低く囁く。その声は落ち着いていて、どんな困難にも動じない彼の自信が伝わってきた。

私たちは玉座の間の中央まで進むと立ち止まった。ユリは私の腰にしっかりと手を添えたまま一礼し、私も彼に支えられながら深々と頭を下げた。王の目が私たちに向けられると、その穏やかな表情が視界に入る。だが、その瞳には鋭い観察力が宿っており、私たちを見定めているように感じられた。

「陛下、このたびは貴重な機会を賜り、心より感謝申し上げます。」

ユリドレが静かに口を開いた。その声は低く、堂々としており、一つひとつの言葉に正確な抑揚がつけられていた。しかし、その表情はどこか不愛想で、形式に則った礼儀正しさを保ちながらも、ユリドレ独特の冷淡さと自信に満ちた雰囲気が漂っている。

「私はレッドナイト公爵、ユリドレ・レッドナイトでございます。このたび、拝謁の場を賜り、また私の妻であるメイシール・レッドナイト公爵夫人を陛下にご紹介できることを、大変光栄に存じます。」

ユリドレはそう言いながら、私の腰をしっかりと支えた手にわずかに力を込め、ちらりと私に目を向けた。その瞳には、私に対する深い愛情と誇りが込められており、彼の硬い外見からは想像もできないほどの優しさが垣間見える。その視線が一瞬、私の緊張を和らげた。

「彼女は私の生涯の伴侶であり、心から敬愛する者です。我々二人で、貴族社会における責務を全うし、陛下とこの国に忠誠を尽くして参ります。最後に、この場をお借りして、陛下と王妃殿下、そして皆々様に心より感謝を申し上げます。」

一礼をしながら述べられたその言葉には、ユリドレらしい毅然とした態度が滲み出ていた。場の空気が少しざわめき、王の視線がユリドレから私へと移る。その瞬間、玉座に腰掛ける王は穏やかな微笑みを浮かべ、玉座から身を乗り出すように私たちを見つめた。

「レッドナイト公爵、それに公爵夫人。久しぶりだな、ユリドレ。こうして再び君と顔を合わせることができ、大変嬉しく思う。今回は、公爵夫人と共にこのような場に参られたこと、心から喜ばしく思っている。」

王の落ち着いた声が場内に響く。玉座に座る彼の視線は柔らかく、どこか懐かしさを感じさせるものだった。

「公爵夫人、初めてお会いしますが、これからは公爵と共にこの国を支えてくださることを心より期待しております。どうぞよろしくお願いいたします。」

私はユリドレに支えられながら深々と頭を下げ、最上級の礼を尽くした。その瞬間、彼の腕の確かな支えが、私の緊張を和らげてくれるようだった。

「レッドナイト公爵夫妻、君たちの結婚を心より祝福する。そして、公爵家の繁栄と、君たちが共に歩む幸せな未来を、王妃共々願っているぞ。」

王の微笑みは変わらず温かで、玉座の横に座る王妃も静かに頷いていた。その姿に場の空気が一層引き締まり、周囲の貴族たちも深く頭を垂れている。

ユリドレはゆっくりと一礼し、王との目をしっかりと合わせた。その表情には、普段見せる冷淡な態度に少しの敬意が加わり、柔らかな威厳が漂っている。

「陛下、王妃殿下、寛大なお言葉を賜り、大変光栄に存じます。これからも、私たちは全身全霊をもって公爵家の責務を果たし、陛下の信頼に応えて参る所存です。」

ユリは深く一礼し、私も彼の腕に支えられながら再び頭を下げた。緊張感の中に、どこか誇らしい気持ちが胸の内に広がっていく。この瞬間、ユリが私の腰をしっかりと支え、そばにいてくれることが、どれほどの安心感を与えてくれているのかを改めて実感した。彼の温もりを背に感じながら、私たちは王の前から静かに後ずさるようにしてその場を離れようとした…その時。
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