カミサマは新しいチートの楽しみ方をミツケマシタ

肉球は正義

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ヤット タビニデル

ミッション1-3 誰にする?

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瞼を閉じるだけのつもりが、そのまま眠ってしまったらしい。
どうせなら気絶して、ここでハッ!と目を覚ますという展開がよかったのである。
いや、意識は一時的に手放しましたよ?眠ってたから。でもさー。

「ん、目が覚めたようだな」
なにゆえ王子は私の眠っていたベットの脇に椅子を寄せているのです?
え、見てたの?見張ってたならまだしも。あー、ん?手に本を持っているから、単に時間を潰していただけ?
だとして他の人がいないじゃないか、この部屋。

「えーと、あの、眠ってしまって、どれくらい経ちました?」
半日、とか言われたら泣くぞ。兄が心配してるよ!そして私も起きて兄じゃない男がいる光景がこわいよ!
「1時間、ほどかな?」
よかった。1時間なら眠りましたごめんなさい。で済ませていい!いいはずだ!
「ああ。君の眠っている最中、手当をさせてもらったのだが、痛みはないだろうか?」
「ありません。それより、飛び出してしまって申し訳ありませんでした。あと、手当。有難うございます」
体を起こして、ベットの上で正座して、誠意をこめて頭を下げる。
「そんな、今回は私たちの方にも不手際があった。警備の増員が足りていれば君は怪我をしなかったはずだ」
だから謝らないでくれ。と、王子は椅子から離れて、そりゃもう自然な仕草といか手付きで私の肩と頬に手を添えて、ゆっくり上を向かせた。

わー、王子は金髪青眼だー。ごちです。でも私、執事さんのお顔の方が好m…よし落ち着こう。

「あ、あの、大丈夫そうなので、帰ります!だから…」
こっちを見たまま手を離さずにいるのをですね、やめてくれませんかっ。
「……ああ、すまない。私から女性に見惚れるなんて、あまりないことだから余韻に浸ってしまったようだ」

…。
………。

あ、カミサマが神体になると加護の影響で『好かれやすくなる』って言ってた気がする。
しかもカミサマは煩悩を司ってるから、恋愛感情を刺激するのは得意とか、何とか。

「兄が心配していると思うので、失礼します。本当に有難う御座いました」
イケメンに見つめられて甘いセリフを貰って、浮き足立たないわけじゃないけど、何せ色々初めてだ。
このまま単独行動するより、兄と合流しよう。というか合流したい。
「なら、屋敷の前まで送るよ」
その言葉と同時に、甲冑に身を包んだおじさまが扉を開けて、のしっと部屋へ入ってきた。

「それには及びませんぞ、王子。その女子の兄とやら、今しがた門前より証はないが兄ゆえ妹に会わせろと、衛兵より言付かりましてございます」

武士か何かか、あんたは。
おなご、とか。その時代がかった口調、フィクションでしか聞かない…。

「絶対に兄です」
「…では道案内しよう」
さっさと歩き始めるおじさま騎士について部屋を出る。だが、王子のいる部屋の扉が閉まった途端、おじさま騎士は低くて脅すように言った。
「王子はお優しい。人当たりも良く臣下にも礼儀正しく接してくださるが…」

あ、ライトノベルの予感。

「思い上がるなよ小娘。本来であれば、ここにお前は入ることすら、王子に触れて言葉を交わしてよいような身分ではないのだからな!」
やっぱりねー!声でかいよーおじさま騎士!
あと、見てんじゃないぞ!!


◆  ◆  ◆


「っ妹!」
「おにいちゃーんっ!!」
屋敷から騎士のおっさんに連れられて出てきた妹。俺の声を聞くや、笑顔で手を振りながら走ってくる。

っなにあの妹!かわいいじゃん!何?俺をナルシストにしたいわけ?別の扉を開けちゃおうってことなの?…でもいい!かわいい!

門番が品のいい飾り付けを施された鉄の門を開けてくれる。同時に妹は特に走ってきた時の勢いを殺さずに、俺に飛びついて来た。

かわいい。かわいいよ、パラレルワールドの自分んんっ!

「ごめんね、おにいちゃん!なんか、あの、緊張で眠っちゃって…!」
ぎゅうっと寂しさを伝えてくる、俺を抱きしめる妹の両腕。

応えねばなるまい!男なら!
俺は妹を抱きしめ返した。妹の力よりかは加減して。
「そっか。俺こそ、ごめんな?すぐに戻ってくると思ったからさ」
ちょっと気配消して、窺ってたんだよね。屋敷の中。
お陰で、王子と執事の顔が確認できたから。うん。好みの顔は執事だったよ。俺。
「…宿に、帰ろ?」
妹が上目遣いかつ俺の服の端を引っぱって首を傾げている。かわいい。

てか、何回俺にかわいいって思わせる気だ妹よ。自分だから安全と思っているのか?残念だな、かわいい瞬間は誰しもがかわいいんだぞ?
「ああ。帰ろう!」
俺は満面の笑みで返して、離れてしまった妹の身体を引き寄せて手を繋ぐ。
「そんじゃ、ご迷惑お掛けしました!俺たち少しこの街に滞在するので、他の場面でお会いした時は充分に気を付けますんで!」

仏頂面で睨んでるの?ってくらい俺たちのやりとりを無言で見ていたおっさん騎士に空いてる手を振って、俺は妹と歩き出した。
おっさん騎士から返事はなかったけど、代わりに門番2人が一礼してくれた。
それから、後ろでガチャンと門を閉めた音がして。俺たちは屋敷のある丘の上から、徐々に街へ降りて行く。

街に近付くと、お祭りのような賑やかな明かりが見える。王子の到着1日目ってことで、明日までちょっとしたお祭りをするらしい。
お出迎えする側って大変なのな。

「兄よー」
「お、やっと口調が戻ったか?屋敷の中はどうだった?変なことされなかったか?」
妹は俺と繋いでいる手をぶんぶんと振りながら、屋敷であったことを話してくれた。
最後におっさん騎士の話だけは、ラノベ的でおっさん騎士の声が怖かった。と、ただの感想文みたいなのが返ってきた。

「もしかして、それで飛びついてきたのか?」
「ビビってたのもあるけど。あのおじさま騎士。私が玉の輿狙いでこれからも何かする気なのかって、しつこくてさ」
あれ、それじゃ去り際の俺の挨拶って…。
「つい、私ブラコンだからおにいちゃんよりステキな人じゃなきゃときめかないって、言っちゃったんだよねー」

別の意味でグッジョブおっさん騎士ぃ!これは男として!兄として!空いてる手でガッツポーズ取らねばなるまい!いや、取るだろう!普通!自然に!!

「っ?」
ガッツポーズを取ったのがいけなかったのか、それとも街中に来たからなのか、妹が足を止めて、繋いでいる手で俺を軽く引っぱった。
「ターゲット、どうする?それから今後の接触の仕方」

あー、そうねー。おっさん騎士、警戒してるんだもんな?

宿に向けて歩き出しながら、俺は空いてる手で顎を撫でる。

「俺の好みは執事。顔が」
「私も好きだよ、執事さん。顔と声が」

俺と妹はチラッとお互いの顔を見て、ニッと笑った。

「ひとまず、決まりね?」
「どっちに寄ってくるか、はたまたターゲットじゃないのからアプローチがなければ専念で♪」

ターゲット、銀髪執事!


◆  ◆  ◆


「しっかし、ついに始まるのかー。始めちゃうのかー」

宿に帰る前に寄った食堂で、シチューの付け合わせで出されたパンをかじりながら兄が呟く。
「だねえ。なんか、どうなるか分からなすぎて不安」
それな。と兄は頷いてパンをもう一口。
「おっさん騎士の行動が読めないからな。でも、女の子と王子の恋よりかは、最後はおっさん騎士が穏やかだといいな」
「幼馴染もね」

ん?

「そういえば、まだ情報屋に、会ってないよね?」
ふと思い出して、私は魔法の本を鞄から取り出して開く。
この世界の物語を2回くらい読み直して見たが、情報屋の存在は出てこない。
だけどカミサマのターゲットの中に情報屋はいるはずだ。

「隠しキャラなんだろ?ラノベ的な感じで」
ウラ仕切ってるらしいし。と付け足して、兄はパンを食べ終えた。

これは、ちょっと探してみた方がいいだろうか?姿くらい、見てみたい、し?
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